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【事業承継シリーズ 第3回】親族内・役員従業員・M&Aを比較|3つの承継方法の選び方

10月28日
読了時間: 11分

更新日:6 日前

「後継者には息子を考えている」「社内の専務に任せたい」「後継者候補がいないのでM&Aを検討したい」。事業承継といっても、誰に会社を引き継ぐかによって準備の方法は大きく変わります。


中小企業庁は事業承継を、親族内承継、従業員承継、M&A(社外への引継ぎ)に分類しています。どれか一つが常に優れているわけではありません。


この記事では、3つの承継方法を比べ、「誰が継ぐか」だけでなく、「どう資金を用意し、どのように事業を続けるか」を考えるポイントを解説します。



▍ この記事の要点|1分でわかる事業承継の3つの方法


事業承継シリーズ第3回のsummary図解:親族内・役員従業員・M&Aを比較|3つの承継方法の選び方

  • 親族内承継: 家族の意思・株式・相続・先代の引退後の資金を確認します。

  • 役員・従業員承継: 経営能力に加え、株式取得資金と銀行保証が重要です。

  • 第三者承継(M&A): 後継者不在でも選択肢ですが、買い手・契約・税引後手取を確認します。


▍ 目次


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1. 結論|承継方法は後継者の意思と会社の状況で決める


事業承継には大きく3つの方法があります。経営者の子どもや親族が継ぐ親族内承継、役員・従業員が継ぐ社内承継、社外の会社や個人が継ぐM&Aです。


親族内承継は長い準備期間を確保できる場合がありますが、本人の意思や家族の財産配分の問題があります。社内承継は会社の事業内容を理解した人が継げる反面、株式を買い取るための資金が問題となることがあります。


M&Aは社外から承継先を探せますが、相手先が必ず見つかるわけではなく、手数料、契約条件、従業員や取引先への影響も重要です。


「息子がいるから親族内承継」と先に決めてしまわず、後継者の意思と会社の将来性を確認しましょう。





2. 3つの方法を比較する


事業承継シリーズ第3回のdiagram図解:親族内・役員従業員・M&Aを比較|3つの承継方法の選び方

比較項目

親族内承継

役員・従業員承継

第三者承継(M&A)

承継先

子ども・親族

役員・従業員

社外の企業・個人等

主な長所

育成期間を確保しやすい場合

事業・社員を理解した人が候補

社内外から選択肢を広げられる

主な課題

相続・家族の財産配分

株式取得資金・保証

価格・相手先・契約・手数料

資金面

贈与税・相続税・売買代金等

購入資金・返済余力

税引後手取・費用・残る負担

相談先

税理士・弁護士等

金融機関・税理士等

M&A専門家・弁護士・税理士等


会社の株式を引き継ぐ方法も選択肢ごとに異なります。親族内なら贈与・相続・売買、役員・従業員なら株式の買取りなど、M&Aなら株式譲渡・事業譲渡などを検討します。


税金・資金・経営権の問題は同時に考えなければならず、どれか一つの観点で最適と決めることはできません。





3. 親族内承継|家族へ会社を引き継ぐ


親族内承継では、経営者の子どもやその他の親族が後継者となることを想定します。幼い頃から会社の事業を知っている場合や、社内で段階的に経験を積める場合など、準備期間を確保できることがあります。


ただし、親族であることと経営者に適していることは別です。本人に意思があるか、経営する能力や経験を身につけられるか、先代が実際に権限を渡せるかが重要です。


また、会社の株式を後継者へ集中させる場合には、後継者以外の相続人への財産配分も考える必要があります。自社株式の評価額が高い会社では、贈与税・相続税・取得資金などが大きな負担となり得ます。


さらに、社長個人名義の土地・建物を会社が使用している場合には、不動産の所有と利用を整理します。親族内承継では税金や家族関係の問題が多くなるため、早期の準備が有効です。





4. 役員・従業員承継|社内の人材が引き継ぐ


役員・従業員承継は、社内で働いてきた役員や従業員に会社を引き継ぐ方法です。事業の運営、従業員、主要取引先などを理解している人材を候補にできる場合があります。


一方、後継者に十分な自己資金がなければ、株式の購入資金が課題となります。資金調達を金融機関に相談する場合、返済原資をどのように確保するかが重要です。


会社の現預金を使えばよいと安易に決めるのではなく、資金の受取人・支払人・借入人が誰なのかを整理する必要があります。法人と個人の取引や会社法・税務上の取扱いも確認しましょう。


また、役員から代表に昇格すると、会社の意思決定だけでなく、借入金や経営者保証の問題に直面する可能性があります。先代の保証をどう扱うかは金融機関の判断に左右されます。





5. 第三者承継(M&A)|会社や事業を社外へ引き継ぐ


後継者候補がいない場合、M&Aによって社外へ会社・事業を引き継ぐことも考えられます。従業員の雇用や取引先との関係を守りながら事業を継続できる可能性があります。


ただし、会社の価値は決算書の純資産だけで決まるものではありません。収益力、将来性、取引先との関係、借入金、簿外債務の可能性、従業員の状況等によって取引条件が変わります。


中小企業のM&Aでは、株式譲渡と事業譲渡が使われることがあります。売り手、買い手、移転する資産・負債、税金、従業員や契約の扱いが異なります。


仲介会社やFAを利用する際は、手数料、最低報酬、利益相反、専任条項、買い手の信用力なども確認しましょう。「会社を売る」ことだけを目的とせず、何を守りたいかを考えることが重要です。





6. 具体例|社長の息子・専務・M&Aのどれを選ぶ?


架空のサービス業I社では、社長は65歳、長男は別会社に勤務しています。社内には営業に強い専務がおり、将来の経営を担う意欲があります。一方、同業他社から買収の打診もあります。


親族内承継を選ぶなら、長男に経営意思があるか、入社後どのように育成するかを確認します。社長が希望していても、長男にその意思がなければ実行は難しいでしょう。


専務へ承継する場合は、本人の経営意思、株式取得資金、既存の銀行借入・保証への対応が問題です。専務が会社に詳しいことは利点ですが、資金を確保できるとは限りません。


M&Aを選ぶ場合は、買い手が提示する価格だけでなく、従業員の雇用や社長の個人保証、手数料や税負担を含む実際の手取額を確認します。


この例では、3つの選択肢を並べて比較したうえで、会社をどう続けたいか、経営者の引退後に何を守りたいかを決めることが重要です。





7. 承継方法を決める5つのSTEP


事業承継シリーズ第3回のtimeline図解:親族内・役員従業員・M&Aを比較|3つの承継方法の選び方



STEP 01 │ 経営者の希望と後継者候補を整理


いつ引退したいか、誰に継いでほしいか、本人に意思があるかを確認します。希望と決定事項を区別します。




STEP 02 │ 会社の事業・財務・資産を把握


業績、資金繰り、株主構成、借入金・保証、不動産、主要取引先の状況を整理します。




STEP 03 │ 親族内・社内・M&Aの選択肢を比較


税金、取得資金、経営能力、事業継続性、雇用・取引先との関係を比較し、複数案を残して検討します。




STEP 04 │ 必要な相談先へ早めに確認


税理士・公認会計士・金融機関・弁護士・M&A支援機関等と、問題に応じて相談します。




STEP 05 │ 承継計画と実行スケジュールを作る


経営権、株式・事業用資産、資金、保証・契約を時間軸に整理し、実行前の再確認と承継後の管理まで計画します。





8. 専門家・金融機関へ相談するタイミング


税理士には自社株評価、贈与・相続・売買の税務、M&A時の税務や税引後手取を相談できます。公認会計士等には、会社の財務分析や企業価値・将来資金の見通しを相談できます。


借入金・保証・株式取得資金の問題があれば、取引金融機関への早期相談が有効です。法的な権利関係や契約・遺留分の問題は弁護士等と検討し、M&Aを実行する場合には必要に応じて仲介・FAなどの専門家と連携します。


承継先を決める前に相談することで、後から判明する税金・資金・家族関係の問題を減らしやすくなります。相談先の役割については、シリーズ第2回で詳しく解説しています。


個人事業の承継は、会社株式の移転とは手続が異なります。個人事業を引き継ぐ方は、第4回でその固有の問題も確認してください。


◇ よくある質問|承継先をまだ決められない場合


Q.子どもが会社に入っていません。それでも親族内承継を検討できますか?


検討することはできます。ただし、親族であるという理由だけで後継者に決めるのではなく、本人の意思、入社や育成に必要な期間、経営者としての適性などを確認する必要があります。社内に適任者がいる場合や第三者承継の可能性がある場合も、並行して比較してよいでしょう。


Q.役員・従業員が社長になるなら、株式を買い取らなくてもよいですか?


代表取締役への就任と株式所有は別なので、必ずしも同日に取得する必要はありません。ただし、先代の株式を誰が保有し続けるのか、将来の議決権をどうするか、後継者に経営判断の権限があるかを整理する必要があります。先代が高齢の場合は、相続時に株式が分散するリスクも考えます。


Q.M&Aで売る場合、会社名や雇用は守れますか?


買い手候補や取引方法、契約条件によって異なります。雇用維持や商号の扱い、先代経営者の協力期間などは、交渉の早い段階で希望を明確にすることが大切です。「希望条件を伝えた」だけで確約されたことにはならず、最終契約の内容まで確認します。


Q.3つの方法を並行検討すると、後継者候補の気持ちを損ないませんか?


コミュニケーションには配慮が必要です。しかし、本人の意思が確認できていない段階で親族内承継だけに絞ることは、かえって先送りにつながる場合があります。まず「会社を続けたい」「従業員の雇用を守りたい」などの目的を共有し、選択肢を検討する理由を丁寧に説明しましょう。


◇ 判断のために先に整理しておきたい資料


会社の直近の決算書・税務申告書、株主名簿、銀行借入残高表、主要な事業用資産・契約の一覧を準備します。資料の有無に関係なく、後継者候補それぞれの意思と、先代の希望する引退時期を書き出すことも有効です。財務内容が良くても、後継者に意思がなければ計画は実行できません。反対に、後継者の意欲が高くても、会社の借入負担が大きければ資金計画の再検討が必要になります。選択肢を比較するための共通の前提をまず揃えましょう。


◇ 承継の方式が決まる前に避けたい思い込み


「家族がいるから、当然その子が継ぐ」という前提は、本人の生活や希望を軽視することにつながります。会社を続けたいという先代の気持ちと、家族が経営を担いたいかどうかは別の問題です。最初の面談では、希望を聞き取る段階と、経営者としての実行可能性を検討する段階を分ける方がよいでしょう。


また、役員・従業員が優秀だからといって、株式取得資金や個人保証まで引き受けられるとは限りません。経営を任せられることと、資金を負担できることは分けて考えます。候補者の能力だけでなく、どの条件であれば承継できるかを把握すると、現実的な計画になります。


M&Aについても、買い手が見つかればすべて解決するわけではありません。税引後の手取り、雇用、契約、担保・保証、引継ぎ協力の期間を確認します。会社をどのように残すかという目的が先にあり、その実現方法として3つのルートを比較する姿勢が大切です。





9. まとめ|承継先だけでなく、承継後の事業を考える


親族内・役員従業員・M&Aは、それぞれ適する状況が異なります。後継者の意思、会社の財務、資金負担、家族・従業員、金融機関との関係を総合的に比較しましょう。


☐ 後継者候補の意思を確認した


☐ 株主構成・会社の財務・借入保証を把握した


☐ 3つの承継方法を比較した


☐ 税金だけでなく資金・雇用・会社の継続を考えた


☐ 必要な専門家・金融機関への相談時期を整理した





▍ アポロ税理士法人の考え方


アポロでは、「親族だから」「税金が少ないから」と結論を先に決めるのではなく、経営・所有・財務・保証の現状と将来を整理して承継方法を考えることを重視します。税務・会計はアポロ税理士法人が担い、財務・不動産の支援はファルコン株式会社等との連携を検討します。



監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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※本文は2026年10月時点の一般的な情報です。個別の承継手続は専門家へご確認ください。



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