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【事業承継シリーズ 第8回】事業承継税制は使うべき?特例措置の期限と注意点

10月28日
読了時間: 12分

更新日:6 日前

「事業承継税制を使えば、贈与税や相続税がゼロになると聞いた」「期限が近いと聞くが、何から始めればよいのか」。非上場会社の経営者にとって、法人版事業承継税制は関心の高い制度の一つです。


ただし、制度の名前だけで判断すると、必要な手続や将来の負担を見落とすことがあります。事業承継税制は、一定の要件のもと納税を猶予し、所定の事由で免除され得る制度であり、無条件に税金が消える仕組みではありません。


この記事では、法人版事業承継税制の特例措置を中心に、どのような会社が検討するか、期限、メリット、注意点、利用する前に確認したいことを解説します。



▍ この記事の要点|1分でわかる事業承継税制


事業承継シリーズ第8回のsummary図解:事業承継税制は使うべき?特例措置の期限と注意点

  • 納税猶予と免除を区別する。 適用時に税額が直ちに消えるわけではなく、継続要件や届出等が必要です。

  • 特例承継計画の提出期限を確認。 2026年10月時点の公表情報では、2027年9月30日まで。特例措置の対象となる贈与・相続等の期限とは別です。

  • 使わない場合とも比較する。 税務上の効果だけでなく、家族・株式取得・資金繰り・将来の経営計画まで考えます。


▍ 目次


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1. 結論|事業承継税制を使うかは税額だけで決めない


ⓘ 事業承継税制は2026年改正後の期限で確認

法人版の特例承継計画は2027年9月30日まで、特例対象の贈与・相続等は2027年12月31日までです。2025年度には後継者の役員就任期間要件も見直されているため、古い『贈与の3年前から役員』という説明を一律の要件として使わず、承継時点の要件・継続届出を確認しましょう。

国税庁:法人版事業承継税制



法人版事業承継税制は、一定の条件を満たす中小企業の非上場株式を後継者が贈与・相続等で取得する際、贈与税・相続税の納税猶予を受けられる制度です。


特例措置では、一般措置と比べて納税猶予の対象株式や割合等が拡充されています。ただし、すべての会社・株式・後継者が利用できるわけではありません。


また、制度の適用を受けた後も、都道府県への報告や税務署への継続届出などが求められることがあります。要件に反した場合には、猶予税額の納付が必要となることがあり、利子税等の取扱いも問題となり得ます。


制度の利用は、事業承継を円滑にする手段の一つです。会社の支配権の移転、後継者の意思、家族への財産配分などの課題がすべて解決するわけではありません。





2. 法人版事業承継税制とは?一般措置と特例措置


法人版事業承継税制には一般措置と特例措置があります。特例措置は一定の期間内に承継を実行することなどを前提とした制度で、適用条件や手続が異なります。


比較項目

特例措置

一般措置

事前の特例承継計画

必要

特例承継計画は不要

対象株式

所定の要件下で全株式が対象となり得る

原則総株式数の最大3分の2まで

相続税の猶予割合

所定の要件下で100%

所定の要件下で80%

適用期間

定められた期限あり

特例措置のような期限はない

継続管理

所定の手続が必要

所定の手続が必要


適用要件は、会社の業種・規模、経営者や後継者の要件、株主構成、認定手続など多岐にわたります。表の数字だけで利用可能と判断しないようにしましょう。


「納税猶予額が大きいから特例措置が有利」と即断しないことも重要です。制度適用後の継続的な管理や将来の選択肢への影響を検討する必要があります。





3. 2026年時点で押さえたい特例措置の期限


事業承継シリーズ第8回のdiagram図解:事業承継税制は使うべき?特例措置の期限と注意点

2026年10月時点の中小企業庁・国税庁の公表資料では、法人版事業承継税制の特例措置に必要な特例承継計画は、2027年9月30日までに提出する必要があります。


特例措置の対象となる贈与・相続等については、2027年12月31日までという別の期限があります。計画を提出する期限と実際の承継の期限は同じではありません。


また、都道府県による認定の申請時期、贈与税・相続税の申告期限、申告に必要な担保等の取扱い、適用後の継続届出も別途管理する必要があります。


手続

2026年10月時点の確認事項

特例承継計画の提出

2027年9月30日まで(公式情報で確認)

特例措置の対象となる承継

2027年12月31日までの贈与・相続等

認定申請・税務申告

事由・ケースごとに異なる期限がある

継続届出等

適用後も所定の時期に提出が必要


制度改正で期限が変わる可能性があるため、実際の申請時には最新の中小企業庁、都道府県、国税庁の情報を必ず確認してください。期限があるからと急いで株式を移転するのではなく、まず適用可能性と事業承継の方向性を確認することが大切です。





4. 税金が猶予されても、事業承継の問題は残る


事業承継税制の適用を受ければ、税負担が大きく変わる場合があります。しかし、会社の借入金が消えるわけではなく、先代の個人保証も自動的に解除されません。


また、後継者以外に子どもがいる場合は、他の相続人への財産配分や遺留分の検討が必要です。会社株式を後継者へ集中させた場合、ほかの家族へ何を残すかという問題は制度利用の有無にかかわらず残ります。


さらに、会社を引き継ぐ後継者が経営を継続できるか、事業に収益力があるかという根本の問題もあります。将来の事業計画が不明確なまま、税制の適用だけを優先することは適切ではありません。


個人事業には別の個人版事業承継税制があります。法人版の特例措置を個人事業や不動産貸付業にそのまま当てはめないように注意しましょう。





5. 制度利用で見落としやすい継続手続とリスク


特例措置の適用を受けた後は、事業を継続しているか、経営者・後継者の状況、必要な報告や届出などを確認する必要があります。


一般的に、申告後一定期間は都道府県への報告と税務署への届出を毎年行い、その後も所定の期間ごとに継続届出が必要となります。具体的な提出先・期間・様式は適用した制度と状況によって確認します。


後継者が株式を手放す、会社が解散するなど一定の事由が生じる場合には、猶予税額の納付が必要になる可能性があります。ただし、やむを得ない事由等に応じた特例や手続が設けられている場合もあるため、個別の判断が必要です。


事業承継後も別のM&Aや経営再編を検討する可能性があるなら、将来の選択肢にどのような影響が生じるかを確認することが重要です。


「今の税金」と「将来、制度を維持するための手続とリスク」をセットで比較してください。





6. 具体例|自社株評価1億円の会社で検討するとき


架空の建設関連会社E社では、先代が全株式を保有し、長男が後継者候補です。自社株式の概算評価は1億円、会社には銀行借入があり、先代が保証人になっています。先代には長女もいます。


このケースで特例措置の適用を検討する場合、まず後継者や会社が制度要件を満たすか確認します。自社株の評価は目的に応じて適切に行う必要がありますし、手続・期限の管理も欠かせません。


税金の猶予額を試算する一方、長女への財産配分、保証の解除、長男の経営能力、会社の返済計画も検討します。


仮に制度を使わない場合には、贈与、相続、売買などの比較が必要になります。贈与税・相続税・譲渡税務と資金負担は異なるため、猶予税額だけでなく家族と資金の問題を含む複数案を提示します。


この例では、1億円は仮定の概算評価額であり、実際の税額や適用可否は判断していません。個別の株主・会社・資産の状況によって結論は変わります。





7. 税制を使うか検討する5つのSTEP


事業承継シリーズ第8回のtimeline図解:事業承継税制は使うべき?特例措置の期限と注意点



STEP 01 │ 承継の希望と後継者の意思を確認


誰に・いつ経営と株式を引き継ぐかを整理します。制度利用を前提にしてから後継者を決めるのではなく、事業の継続性と本人の意思を先に確認します。




STEP 02 │ 会社・株主・自社株評価を確認


会社の規模・業種、株主構成、後継者・先代の要件、株式評価、事業に使う資産等を整理します。適用要件は個別に照合します。




STEP 03 │ 特例措置・一般措置・通常課税を比較


納税猶予額だけでなく、通常の相続・贈与・売買の税負担、資金調達、将来の制約や管理負担を比較します。




STEP 04 │ 計画・認定・税務申告の期限を一覧化


特例承継計画、都道府県の認定、贈与・相続、税務申告と担保、継続手続の期限を確認します。担当者が変わっても管理できる一覧を用意します。




STEP 05 │ 適用後の継続管理まで体制を作る


継続届出等を管理する責任者を明確にし、後継者交代・組織再編・株式移転などの重要な意思決定前に制度への影響を確認します。





8. 税理士や専門家にいつ相談する?


税理士には、自社株式の評価、制度の適用要件、贈与税・相続税の納税猶予、認定・申告手続や継続管理について相談します。事業承継計画や後継者の経営体制については、必要に応じて経営・財務の専門家と連携します。


事業承継税制の特例承継計画には、認定経営革新等支援機関の関与が必要とされています。必要な所見や申請手続は、適用する会社・後継者の状況に応じて確認しましょう。


早い段階で税理士に相談する意義は、制度を使うよう勧めてもらうことだけではありません。制度を使わない場合の選択肢と比較できること、そして期限や将来リスクを把握できることにあります。


法的な承継契約や遺留分の問題がある場合は弁護士等、保証や融資の問題では金融機関との協議も必要です。


◇ よくある質問|事業承継税制を使う前に


Q.特例承継計画を提出すれば、納税猶予が確定しますか?


いいえ。計画の提出だけで納税猶予が確定するわけではありません。実際の贈与・相続等と制度上の認定、税務申告、所定の担保の提供など、必要な要件・手続を確認する必要があります。計画の提出期限と税務申告の期限は別々に管理しましょう。


Q.一度適用すれば、毎年の手続は不要ですか?


不要ではありません。制度の区分や適用後の経過年数等に応じて、都道府県への報告や税務署への継続届出などが必要です。担当者が変わった場合に期限を引き継げないと重大な問題につながる可能性があるため、会社の期限管理表に組み込むことが大切です。


Q.特例措置の期限が近いなら、先に株を贈与した方がよいですか?


期限の把握は重要ですが、後継者の意思や会社の財務状況、家族への配分を確認しないまま贈与を進めることは避けるべきです。制度が使えない会社や、適用後の制約が望ましくない会社もあります。通常課税・売買・相続などの選択肢と比較して判断します。


Q.不動産を多く所有する会社は必ず使えますか?


会社の事業実態・資産構成・認定要件などによって判断が変わります。資産保有型会社等に関する要件が問題になる場合もあるため、会社の決算だけでなく、事業の内容や従業員、特定資産の割合等を確認する必要があります。「非上場会社だから対象」とは限りません。


◇ 制度を選んだ後の管理表に記載する事項


事業承継税制を適用する場合は、会社と後継者の担当者、所轄税務署・都道府県、計画提出日、認定申請・税務申告・継続届出の期限、提出済資料、変更時の確認事項を一覧化します。毎回同じ人が担当するとは限りません。将来の会社再編や株式の譲渡、経営者の交代等を行う前に、その判断が納税猶予に与える影響を確認できる運用が重要です。制度の利点だけを評価せず、管理可能性まで考えましょう。


◇ 制度利用の「損得」を考える際の視点


事業承継税制を利用した場合の納税猶予額だけを見て、最も有利な方法だと判断するのは適切ではありません。相続・贈与の通常の制度を使った場合の税額、先代の生活資金、株式取得に必要な資金、後継者の事業計画などを一つの表で比較することが重要です。


将来、株式を第三者に売却する可能性や、会社の経営状況が大きく変化する可能性もあります。納税猶予を受けた後で事業を再編・売却する際、税務上の制約や新たな確認が必要になる場合があります。


加えて、事業承継税制を適用しなくても、相続税・贈与税の税負担が必ず高額になるとは限りません。株価の評価、他の相続財産、後継者の取得方法、利用できる制度によって変わります。「猶予額が大きいか」ではなく、「会社と家族にとって継続できる選択か」を基準に考えます。





9. まとめ|制度を使う前に事業承継の全体像を確認しよう


法人版事業承継税制は一定の要件のもとで有力な選択肢ですが、無条件に税金が消える仕組みではありません。計画提出期限、適用期限、継続手続などを含めて慎重に検討します。


☐ 特例承継計画と実際の承継の期限を区別した


☐ 会社・先代・後継者の適用要件を確認した


☐ 通常課税や他の承継方法とも比較した


☐ 家族への財産配分と借入保証の問題を整理した


☐ 適用後の継続届出の担当者を決めた





▍ アポロ税理士法人の考え方


事業承継税制は重要ですが、税制の利用そのものが承継の目的ではありません。アポロ税理士法人では、税制の要件と税負担を整理したうえで、会社の経営・財務、後継者の意思、家族の相続等を含めて判断することを重視しています。財務・不動産に関する支援はファルコン株式会社等と連携する場合があります。



監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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▍ 主な根拠・参考情報



※制度・期限は2026年10月時点の公表情報に基づきます。公開時と申請時には必ず最新情報をご確認ください。



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