自宅と賃貸物件は両方使える?小規模宅地等の特例の併用計算をわかりやすく解説

相続財産に自宅とアパートなどの賃貸物件が含まれている場合、
「小規模宅地等の特例は、両方の土地に使えるのだろうか」
「自宅は330㎡、賃貸物件は200㎡までだから、合計530㎡まで減額できるのだろうか」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、自宅と賃貸物件がそれぞれの適用要件を満たしていれば、両方の土地に小規模宅地等の特例を使える場合があります。
ただし、単純に、
自宅330㎡+賃貸物件200㎡=合計530㎡
まで適用できるわけではありません。
賃貸物件の土地である「貸付事業用宅地等」を含めて特例を使う場合には、自宅と賃貸物件の面積を一定の計算式によって調整します。
また、自宅と賃貸物件の両方について限度面積を超える場合には、どちらを優先するかによって、相続税の負担が変わる可能性があります。
この記事では、自宅と賃貸物件がある場合の小規模宅地等の特例について、具体例を使って解説します。
なお、この記事では、主に「自宅の土地」と「アパートなどの賃貸物件の土地」が別々に存在するケースを想定しています。
一つの建物の一部を自宅、一部を賃貸に使っている「賃貸併用住宅」については、土地の利用区分を分ける必要があるため、別の記事で解説します。
この記事でわかること
・自宅と賃貸物件の両方に特例を使えるのか
・なぜ330㎡と200㎡をそのまま合計できないのか
・自宅と賃貸物件を併用する場合の計算方法
・どちらの土地を優先して適用すべきか
・併用計算をする前に確認すべき注意点
1.自宅と賃貸物件に使える小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方などが自宅、事業または不動産賃貸などに使っていた土地について、一定の要件を満たす場合に、相続税を計算する際の評価額を減額できる制度です。
自宅の土地と賃貸物件の土地では、限度面積と減額割合が異なります。
1-1.自宅の土地は330㎡まで80%減額
亡くなった方などが住んでいた自宅の土地は、一定の要件を満たすと「特定居住用宅地等」に該当します。
特定居住用宅地等に該当する場合は、330㎡まで土地の相続税評価額を80%減額できます。
例えば、特例の対象となる自宅の土地の評価額が1億円で、その土地全体が330㎡以内である場合、相続税を計算する際の評価額を2,000万円まで減額できる可能性があります。
ただし、自宅であれば必ず特例を利用できるわけではありません。
誰が自宅の土地を相続するかによって、要件が異なります。
主な取得者としては、次のような方が考えられます。
・亡くなった方の配偶者
・亡くなった方と同居していた親族
・一定の要件を満たす別居親族
配偶者が取得する場合は、取得者についての居住継続要件や保有継続要件はありません。
一方、同居していた親族が取得する場合は、原則として、相続税の申告期限までその建物に住み続け、土地を保有することなどが必要です。
自宅の土地については、誰が相続するかを決める前に、特例の適用要件を確認することが重要です。自宅に対応する特定居住用宅地等の限度面積は330㎡、減額割合は80%とされています。
1-2.賃貸物件の土地は200㎡まで50%減額
亡くなった方などがアパート、賃貸マンション、貸家、月極駐車場などの貸付事業に使っていた土地は、一定の要件を満たすと「貸付事業用宅地等」に該当します。
貸付事業用宅地等に該当する場合は、200㎡まで土地の相続税評価額を50%減額できます。
例えば、特例の対象となるアパートの土地の評価額が1億円で、その土地全体が200㎡以内である場合、相続税を計算する際の評価額を5,000万円まで減額できる可能性があります。
ただし、アパートや駐車場があれば、必ず特例を利用できるわけではありません。
一般的には、土地を取得した親族が、亡くなった方の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、その申告期限まで貸付事業を続ける必要があります。
また、原則として、相続税の申告期限まで土地を保有する必要があります。
適切な賃料を受け取らず、家族などに無償で貸している場合は、通常、貸付事業用宅地等には該当しません。
貸付事業用宅地等の限度面積は200㎡、減額割合は50%です。相当の対価を受け取らない使用貸借は、原則として対象になりません。
なお、駐車場については、アスファルト舗装などの構築物の敷地として利用されているかも確認が必要です。構築物のない青空駐車場は、貸付事業を行っていても特例の対象にならない場合があります。
1-3.最初にそれぞれの適用要件を確認する
自宅と賃貸物件の併用計算を行う前に、まず、それぞれの土地が特例の対象になるかを確認します。
確認する順番は、次のとおりです。
1.自宅の土地が特定居住用宅地等に該当するか
2.賃貸物件の土地が貸付事業用宅地等に該当するか
3.両方が対象になる場合に、適用できる面積を計算する
自宅と賃貸物件の面積を計算式に当てはめただけで、特例を利用できるわけではありません。
それぞれの土地について、取得者、土地の利用状況、相続後の保有・利用状況などの要件を満たしていることが前提です。
2.自宅330㎡と賃貸物件200㎡をそのまま合計できない
2-1.よくある誤解
小規模宅地等の特例について、よくあるのが次の誤解です。
「自宅は330㎡まで、賃貸物件は200㎡まで対象になるので、合計530㎡まで特例を使える」
自宅だけに特例を使う場合は、330㎡まで80%減額できます。
賃貸物件だけに特例を使う場合は、200㎡まで50%減額できます。
しかし、自宅と賃貸物件の両方に特例を使う場合は、330㎡と200㎡を単純に合計することはできません。
貸付事業用宅地等を含めて特例を適用する場合には、自宅と賃貸物件の面積を一定の算式によって調整し、合計が限度内に収まるかを判定します。

2-2.なぜ面積を調整するのか
自宅と賃貸物件では、特例を適用できる限度面積がそれぞれ異なるため、そのまま面積を合計することはできません。
そこで、それぞれの限度面積に対する使用割合に換算し、合計が100%以内となるよう調整します。
これは実際の土地面積を200㎡以下に制限するものではなく、異なる限度面積を同じ基準で比較するための計算です。
自宅の土地
・限度面積:330㎡
・減額割合:80%
賃貸物件の土地
・限度面積:200㎡
・減額割合:50%

自宅には330㎡の枠があり、賃貸物件には200㎡の枠があります。
基準となる面積が異なるため、両方に特例を使う場合は、自宅の面積を200㎡基準に換算してから、賃貸物件の面積と合計します。
難しそうに見えますが、考え方としては、200㎡の一つの枠を自宅と賃貸物件で分け合うイメージです。
3.自宅と賃貸物件を併用する場合の計算式
3-1.基本となる計算式
自宅と賃貸物件だけに小規模宅地等の特例を適用する場合、限度面積の計算式は次のようになります。
自宅の適用面積×200÷330+賃貸物件の適用面積≦200㎡
この計算結果が200㎡以下であれば、選択した自宅と賃貸物件の面積について、それぞれ特例を適用できます。
200㎡を超える場合は、両方の土地の全体には適用できません。
その場合は、自宅または賃貸物件の適用面積を減らして、計算結果を200㎡以内に収めます。
3-2.「200÷330」の意味
自宅の限度面積は330㎡ですが、賃貸物件の限度面積は200㎡です。
そこで、自宅の面積を200㎡基準に換算するために「200÷330」を掛けます。
例えば、自宅の適用面積が165㎡の場合は、次のように計算します。
165㎡×200÷330=100㎡
自宅165㎡は、併用計算上、200㎡の枠のうち100㎡を使用したことになります。
残りの枠は、次のとおりです。
200㎡-100㎡=100㎡
したがって、自宅165㎡に特例を使う場合は、賃貸物件について最大100㎡まで特例を使える計算になります。

3-3.自宅の適用面積と賃貸物件の残り枠の早見表
自宅に適用する面積が増えるほど、賃貸物件に使える残りの枠は少なくなります。
次の図は、自宅の面積を200㎡基準に換算した場合の関係を示したものです。

4.ケーススタディでわかる併用計算
4-1.自宅と賃貸物件の両方を全て適用できるケース
まず、自宅と賃貸物件の両方について、土地全体に特例を適用できるケースを見てみましょう。
前提条件
・自宅の土地:132㎡
・賃貸物件の土地:120㎡
併用計算の式は、次のとおりです。
自宅の適用面積×200÷330+賃貸物件の適用面積≦200㎡
数字を当てはめます。
132㎡×200÷330+120㎡
=80㎡+120㎡
=200㎡
計算結果が200㎡以内に収まるため、このケースでは、次の土地全体に特例を適用できます。
・自宅の土地132㎡:80%減額
・賃貸物件の土地120㎡:50%減額
自宅と賃貸物件の実際の面積を合計すると252㎡ですが、自宅132㎡は200㎡基準に換算すると80㎡となります。
そのため、賃貸物件120㎡と合わせても、併用計算上の限度である200㎡以内に収まります。
4-2.どちらかの適用面積を減らす必要があるケース
次に、自宅と賃貸物件の両方について、土地全体には特例を適用できないケースを見てみましょう。
前提条件
・自宅の土地:200㎡
・賃貸物件の土地:100㎡
両方の土地全体に適用しようとすると、次の計算になります。
200㎡×200÷330+100㎡
=約121.21㎡+100㎡
=約221.21㎡
計算結果が200㎡を超えるため、自宅200㎡と賃貸物件100㎡の両方について、土地全体に特例を適用することはできません。
この場合は、どちらかの土地の適用面積を減らし、換算後の合計を200㎡以内に収めます。
①自宅200㎡を優先する場合
自宅200㎡を200㎡基準に換算すると、次のようになります。
200㎡×200÷330=約121.21㎡
賃貸物件に使える残りの枠は、次のとおりです。
200㎡-約121.21㎡=約78.78㎡
したがって、自宅200㎡を全て選択する場合に適用できる面積は、次のとおりです。
・自宅:200㎡
・賃貸物件:約78.78㎡
自宅については土地全体に80%の減額を適用できますが、賃貸物件については、100㎡のうち約78.78㎡までが50%減額の対象となります。
②賃貸物件100㎡を優先する場合
賃貸物件100㎡を全て選択すると、200㎡の限度枠のうち100㎡を使用します。
自宅に使える換算後の残り枠も100㎡です。
これを自宅の実際の面積に戻すと、次のようになります。
100㎡×330÷200=165㎡
したがって、賃貸物件100㎡を全て選択する場合に適用できる面積は、次のとおりです。
・自宅:165㎡
・賃貸物件:100㎡
この場合、自宅200㎡のうち165㎡までが80%減額の対象となり、賃貸物件100㎡は全て50%減額の対象となります。
2つの選択肢の比較
適用方法 | 自宅の適用面積 | 賃貸物件の適用面積 |
自宅を優先 | 200㎡ | 78.78㎡ |
賃貸物件を優先 | 165㎡ | 100㎡ |
どちらの方法が有利になるかは、適用面積だけでは判断できません。
それぞれの土地の1㎡当たりの相続税評価額と、減額割合を使って、実際に減額できる評価額を比較する必要があります。
4-3.土地の評価額によって有利な選択が変わるケース
小規模宅地等の特例では、自宅の減額割合は80%、賃貸物件の減額割合は50%です。
そのため、
「減額割合が80%の自宅を優先した方が、必ず有利なのではないか」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、土地の1㎡当たりの相続税評価額が異なる場合は、賃貸物件を優先した方が有利になることもあります。
先ほどのケースに、土地の評価額を加えて比較してみましょう。
前提条件
土地 | 面積 | 1㎡当たりの評価額 | 減額割合 |
自宅 | 200㎡ | 30万円 | 80% |
賃貸物件 | 100㎡ | 100万円 | 50% |
1㎡に特例を適用した場合の減額額は、次のとおりです。
【自宅】
30万円×80%=24万円
【賃貸物件】
100万円×50%=50万円
1㎡当たりで見ると、賃貸物件の方が減額できる評価額は大きくなります。
ただし、自宅と賃貸物件では、200㎡の限度枠を使用する割合が異なるため、実際には適用パターンごとに計算します。
A案:自宅を優先する場合
適用面積は次のとおりです。
・自宅:200㎡
・賃貸物件:約78.78㎡
自宅の減額額は、次のとおりです。
200㎡×30万円×80%
=4,800万円
賃貸物件の減額額は、次のとおりです。
約78.78㎡×100万円×50%
=約3,939万円
減額額の合計は、次のとおりです。
4,800万円+約3,939万円
=約8,739万円
B案:賃貸物件を優先する場合
適用面積は次のとおりです。
・自宅:165㎡
・賃貸物件:100㎡
自宅の減額額は、次のとおりです。
165㎡×30万円×80%
=3,960万円
賃貸物件の減額額は、次のとおりです。
100㎡×100万円×50%
=5,000万円
減額額の合計は、次のとおりです。
3,960万円+5,000万円
=8,960万円
比較結果
適用方法 | 自宅の減額額 | 賃貸物件の減額額 | 減額額の合計 |
自宅を優先 | 4,800万円 | 3,939万円 | 8,739万円 |
賃貸物件を優先 | 3,960万円 | 5,000万円 | 8,960万円 |
このケースでは、賃貸物件を優先した方が、土地の評価額を約221万円多く減額できます。
自宅の方が減額割合は高いものの、賃貸物件の1㎡当たりの評価額が高いため、賃貸物件を優先した方が有利になりました。
5.自宅と賃貸物件のどちらを優先すべきか
5-1.面積が広い方を優先すればよいとは限らない
小規模宅地等の特例をどの土地に使うかを考える際、単純に面積が広い土地を優先すればよいとは限りません。
確認すべきなのは、特例を適用することによって、土地の評価額をいくら減額できるかです。
減額できる金額は、基本的に次のように考えます。
対象となる土地の評価額×減額割合
自宅の土地は80%減額ですが、賃貸物件の土地は50%減額です。
そのため、一見すると、自宅を優先した方が有利に見えます。
しかし、賃貸物件の土地の1㎡当たりの評価額が自宅よりも高い場合には、賃貸物件を優先した方が減額できる金額が大きくなることもあります。
5-2.1㎡当たりの評価額を確認する
例えば、次の2つの土地があるとします。
自宅の土地
・1㎡当たりの相続税評価額:30万円
・減額割合:80%
賃貸物件の土地
・1㎡当たりの相続税評価額:80万円
・減額割合:50%
この場合、1㎡に特例を適用したときの単純な減額額は、次のとおりです。
【自宅】
30万円×80%=24万円
【賃貸物件】
80万円×50%=40万円
この例では、1㎡当たりの減額額は賃貸物件の方が大きくなります。
ただし、自宅と賃貸物件では限度面積の消費割合が異なるため、これだけで最終判断はできません。
実際には、複数の適用パターンについて、評価額の減額合計と相続税額を比較する必要があります。
5-3.複数の適用パターンを比較する
限度面積を超える場合は、少なくとも次のパターンを比較します。
A案
・自宅を優先する
・残った枠を賃貸物件に使う
B案
・賃貸物件を優先する
・残った枠を自宅に使う
C案
・自宅と賃貸物件の一部ずつに使う
それぞれの案について、次の内容を計算します。
・自宅に適用する面積
・賃貸物件に適用する面積
・自宅の評価額の減額額
・賃貸物件の評価額の減額額
・特例適用後の相続税額
特例による土地評価額の減額が最も大きい案と、最終的な相続税額が最も少ない案が、必ず一致するとは限りません。
誰が土地を取得するかや、配偶者の税額軽減など、ほかの相続税制度も含めて検討する必要があるためです。
6.併用計算をする前に確認したい注意点
6-1.両方の土地が個別の要件を満たしているか
併用計算は、特例の対象となる土地の中から、どの土地に何㎡適用するかを決めるための計算です。
自宅と賃貸物件が、それぞれ個別の適用要件を満たしていることが前提となります。
適用要件を満たしていない土地を、限度面積の計算に含めることはできません。
6-2.誰が土地を相続するか
自宅の土地は、誰が相続するかによって適用要件が異なります。
例えば、配偶者が取得する場合と、同居していた子どもが取得する場合では、居住や保有に関する要件が異なります。
賃貸物件については、貸付事業を誰が引き継ぐか、相続税の申告期限まで事業を続けるか、土地を保有するかなどを確認します。
遺産分割を決めた後に特例を検討すると、より有利な分け方を選べなくなる可能性があります。
6-3.相続人ごとに別枠があるわけではない
例えば、自宅を配偶者が相続し、賃貸物件を子どもが相続する場合でも、配偶者と子どもがそれぞれ別に限度面積を利用できるわけではありません。
自宅と賃貸物件の限度面積は、その相続全体で調整します。
「相続人が違うから、自宅330㎡と賃貸物件200㎡の両方を満額使える」ということにはなりません。
6-4.相続開始前3年以内に新たに賃貸を始めていないか
相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使い始めた土地は、原則として貸付事業用宅地等の対象から除かれます。
例えば、相続直前にアパートを建築し、賃貸を始めたケースなどは注意が必要です。
ただし、亡くなった方などが相続開始の日まで3年を超えて一定の貸付事業を継続していた場合には、例外的に対象となることがあります。
6-5.賃貸併用住宅は利用部分を分ける
一つの建物について、一部を自宅、一部を賃貸物件として使っていることがあります。
このような賃貸併用住宅では、土地全体を一律に自宅用または賃貸用として扱うのではありません。
原則として、建物の自宅部分と賃貸部分に対応する土地の面積を分け、それぞれについて適用要件と限度面積を判定します。
建物の床面積や実際の利用状況などによって計算するため、別々の土地に自宅とアパートがあるケースよりも複雑になります。
6-6.申告期限前に売却・転居・廃業しないか
土地を取得する人によっては、相続税の申告期限まで土地を保有することが要件となります。
自宅については、申告期限まで居住を継続することが必要になる場合があります。
賃貸物件については、申告期限まで貸付事業を継続することが必要になる場合があります。
相続後すぐに土地を売却する、転居する、アパート経営をやめるといった予定がある場合は、行動を起こす前に適用要件を確認しましょう。
6-7.関係する取得者の同意が必要になる場合がある
特例の対象となり得る土地を複数の相続人が取得する場合、どの土地に特例を使うかについて、関係する取得者全員の同意が必要になる場合があります。
自宅を相続する人だけで、一方的に自宅への適用を決められるとは限りません。
また、原則として、相続税の申告期限までに対象となる土地の遺産分割が終わっていることが必要です。
7.実際に併用計算を行う手順
7-1.所有不動産を一覧にする
まず、亡くなった方が所有していた土地を一覧にします。
土地ごとに、次の情報を整理しましょう。
・所在地
・土地の面積
・相続税評価額
・1㎡当たりの評価額
・相続開始直前の利用状況
・建物や構築物の有無
・取得する予定の相続人
・相続後の利用予定
7-2.土地の利用区分を確認する
それぞれの土地が、次のどの区分に該当するかを確認します。
・自宅の土地
・賃貸物件の土地
・個人事業に使っていた土地
・同族会社に貸していた土地
・特例の対象にならない土地
今回の併用計算では、このうち自宅の土地と賃貸物件の土地を対象にします。
7-3.それぞれの適用要件を確認する
自宅については、次のような事項を確認します。
・誰が土地を相続するか
・亡くなった方と同居していたか
・相続後も自宅に住み続けるか
・申告期限まで土地を保有するか
賃貸物件については、次のような事項を確認します。
・適切な賃料を受け取っていたか
・いつから貸付事業に使っていたか
・誰が貸付事業を引き継ぐか
・申告期限まで貸付事業を継続するか
・申告期限まで土地を保有するか
7-4.対象となる面積と評価額を計算する
土地全体が特例の対象になるとは限りません。
一つの土地に自宅部分と賃貸部分がある場合や、土地の一部が空き地になっている場合などは、特例の対象となる部分を区分します。
共有で土地を取得する場合は、取得する持分も確認します。
7-5.限度面積の調整計算を行う
自宅と賃貸物件だけに適用する場合は、次の計算式を使用します。
自宅の適用面積×200÷330+賃貸物件の適用面積≦200㎡
計算結果が200㎡を超える場合は、どちらかの適用面積を減らします。
7-6.複数の適用パターンを比較する
自宅を優先する案、賃貸物件を優先する案、両方の一部ずつに適用する案を作成します。
それぞれの案について、土地評価額の減額額と相続税額を比較します。
7-7.遺産分割と相続税申告に反映する
適用パターンを比較したうえで、誰がどの土地を取得するかを決めます。
その内容を遺産分割協議書と相続税申告書に反映します。
小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税申告書に特例を適用する旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなど、一定の書類を添付する必要があります。
特例を適用した結果、相続税がゼロになる場合でも、特例を利用するためには原則として相続税申告が必要です。
8.よくある質問
8-1.自宅330㎡とアパート200㎡の両方を満額使えますか?
原則として、両方をそのまま満額使うことはできません。
貸付事業用宅地等を含めて特例を使う場合は、次の計算式によって限度面積を調整します。
自宅の適用面積×200÷330+賃貸物件の適用面積≦200㎡
自宅330㎡をすべて選択すると、換算後の面積は200㎡となるため、賃貸物件に使える枠は残りません。
8-2.自宅とアパートの一部ずつに適用できますか?
それぞれの土地が特例の適用要件を満たしていれば、限度面積の範囲内で、自宅とアパートの一部ずつを選択できます。
ただし、端数処理によって限度面積を超えないように注意が必要です。
実際の申告では、計算上の合計が200㎡を超えないように適用面積を設定します。
8-3.自宅を配偶者、アパートを子どもが相続しても併用できますか?
自宅とアパートがそれぞれの適用要件を満たしていれば、併用できる可能性があります。
ただし、配偶者と子どもが、それぞれ別々に限度面積を利用できるわけではありません。
自宅とアパートの面積を合算し、相続全体として限度面積の調整計算を行います。
8-4.自宅は80%減額なので、必ず自宅を優先すべきですか?
必ずしも自宅を優先するとは限りません。
自宅の減額割合は80%、賃貸物件は50%ですが、土地の1㎡当たりの相続税評価額が異なります。
賃貸物件の評価額が自宅よりも大幅に高い場合は、賃貸物件を優先した方が、評価額の減額合計が大きくなることがあります。
複数の適用パターンを作り、実際の相続税額まで比較することが重要です。
8-5.賃貸物件が複数ある場合はどうなりますか?
賃貸物件が複数ある場合でも、貸付事業用宅地等の限度面積が物件ごとに200㎡ずつ与えられるわけではありません。
複数の賃貸物件のうち、特例を適用する部分の面積を合計して判定します。
それぞれの土地の評価額が異なる場合は、どの物件から優先して適用するかによって、減額できる金額が変わる可能性があります。
8-6.相続後すぐにアパートを売却しても適用できますか?
一般的には、貸付事業用宅地等を取得した親族が、相続税の申告期限まで貸付事業を継続し、土地を保有することが必要です。
申告期限前にアパートや土地を売却すると、特例を利用できなくなる可能性があります。
売却を予定している場合は、売買契約を締結する前に適用要件を確認しましょう。
9.まとめ
自宅と賃貸物件がそれぞれ小規模宅地等の特例の適用要件を満たしていれば、両方の土地に特例を使える場合があります。
ただし、次の内容を総合的に比較する必要があります。
・それぞれの土地の相続税評価額
・1㎡当たりの評価額
・特例を適用できる面積
・自宅の80%、賃貸物件の50%という減額割合
・誰が土地を相続するか
・配偶者の税額軽減など、ほかの相続税制度
・相続後の土地の利用予定
特に、自宅と複数の賃貸物件を所有している場合は、特例を適用する土地の選び方によって、相続税額が大きく変わることがあります。
遺産分割を決めた後や、土地を売却した後では、より有利な選択ができなくなる可能性もあります。
遺産分割協議書に署名する前に、複数の適用パターンを比較することが重要です。

監修者
志田 宏樹
公認会計士・税理士・宅地建物取引士
監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。
専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継



