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遺産分割が申告期限に間に合わない場合、小規模宅地等の特例は使える?必要な手続きをわかりやすく解説

9月8日
読了時間: 13分

更新日:4 日前

不動産計画を話し合う人々

相続税の申告期限が近づいているものの、相続人同士の話し合いがまとまらず、遺産分割が終わっていないというケースは珍しくありません。

特に、自宅や賃貸物件などの不動産がある相続では、

「誰が自宅を相続するのか決まらない」

「不動産の評価や分け方について意見がまとまらない」

「遺産分割が終わらないと、小規模宅地等の特例は使えないのか」

と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

先に結論をお伝えすると、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなかった場合、未分割の土地について、当初の申告では小規模宅地等の特例を適用できません。

ただし、期限内に相続税の申告を行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付しておけば、遺産分割が成立した後に特例を適用できる可能性があります。

この記事では、遺産分割が相続税の申告期限に間に合わない場合の対応を、必要書類や期限、具体例とともにわかりやすく解説します。

目次

1.遺産分割が間に合わなくても、特例を使える可能性はある

相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていない場合でも、将来、小規模宅地等の特例を適用できる可能性を残すことはできます。

重要なポイントは、次の4つです。

・遺産分割が終わっていなくても、相続税の申告期限は延長されない

・未分割の土地については、当初申告で小規模宅地等の特例を適用できない

・相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する

・遺産分割後、原則として4か月以内に更正の請求をする

つまり、「遺産分割が終わるまで申告を待つ」のではなく、まずは未分割の状態で期限内に申告と納税を行い、その後の遺産分割に応じて税額を修正する流れです。


2.小規模宅地等の特例とは

制度の基本要件から確認したい方は、「小規模宅地等の特例とは?」をご覧ください。

小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅、事業用地、賃貸物件の敷地などについて、一定の要件を満たした場合に、相続税の計算に含める土地の価額を減額できる制度です。

代表的な区分は、次のとおりです。

・被相続人の自宅敷地に該当する特定居住用宅地等330平方メートルまで80%減額

・被相続人の事業用地に該当する特定事業用宅地等400平方メートルまで80%減額

・アパートや貸家などの敷地に該当する貸付事業用宅地等200平方メートルまで50%減額

例えば、評価額6,000万円の自宅敷地が特定居住用宅地等に該当し、その全体に80%の減額を適用できれば、相続税の計算に含める価額は1,200万円になります。

土地そのものの時価や売却価格が下がるわけではなく、あくまでも「相続税を計算するときの価額」を減らす制度です。

減額効果が大きいため、小規模宅地等の特例を適用できるかどうかによって、相続税額が大きく変わることがあります。


3.遺産が未分割だと特例を適用できない理由

小規模宅地等の特例は、土地の用途だけで適用が決まる制度ではありません。

その土地を誰が相続したかによって、適用要件が変わります。

例えば、被相続人の自宅敷地を相続する場合でも、取得者が次のいずれに該当するかによって確認すべき条件が異なります。

・被相続人の配偶者

・被相続人と同居していた親族

・被相続人と別居していた一定の親族

また、事業用地や賃貸物件の敷地については、事業や賃貸経営を引き継いでいるか、土地を継続して保有しているかなども確認されます。

遺産分割が終わっていない段階では、土地を最終的に誰が取得するのか決まっていません。そのため、取得者ごとの適用要件を判定できず、未分割の土地については当初申告で特例を適用できないのです。

遺産分割が後日成立した場合でも、分割後の状態だけを確認するわけではありません。取得者の居住状況、事業の継続状況、土地の保有状況などについて、相続開始から当初の相続税申告期限までの事実関係を確認する必要があります。


4.遺産分割が間に合わない場合に、申告期限までに行うこと


4-1.未分割のまま期限内に申告する

相続税の申告期限は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。通常は、死亡日の翌日から10か月以内と考えます。

遺産分割協議が続いていても、申告期限は原則として延長されません。

期限までに遺産分割が成立していない場合は、各相続人が民法に定める相続分、いわゆる法定相続分などに従って財産を取得したものとして相続税を計算します。

これは便宜的に「仮の申告」と呼ばれることがありますが、税務上は正式な相続税申告です。

「遺産分割が終わっていないから、相続税申告もできない」ということではありません。申告しないまま期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が発生する可能性があるため注意が必要です。


4-2.未分割の土地には特例を適用しない

当初申告では、未分割となっている土地に小規模宅地等の特例を適用せず、減額前の価額で相続税を計算します。

配偶者が相続する予定の財産についても、まだ遺産分割が成立していなければ、原則として配偶者の税額軽減を適用できません。

そのため、遺産分割が成立している場合と比べて、当初申告時の納税額が大きくなることがあります。

後から税金が戻る可能性があったとしても、当初の申告期限までにいったん納税しなければならない点には注意が必要です。

相続財産に占める不動産の割合が高く、現預金が少ない場合は、早い段階から納税資金を確認しておく必要があります。


4-3.「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する

後日、小規模宅地等の特例を適用する可能性がある場合は、相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。

この書類には、主に次の内容を記載します。

・申告期限までに遺産分割が終わっていない理由

・今後の遺産分割の見込み

・将来適用を受けようとする特例

小規模宅地等の特例を受ける予定がある場合は、該当する特例の欄に記載します。

この分割見込書は、原則として相続税申告書と一緒に提出する書類です。

単に「今後、遺産分割をする予定です」と税務署へ口頭で伝えただけでは、正式な手続きにはならないので注意が必要です。


4-4.分割見込書を提出すれば特例が確定するわけではない

分割見込書を提出する意味は、将来の特例適用を確定させることではありません。

期限後に遺産分割が成立した場合に、小規模宅地等の特例を適用できる可能性を残しておくための手続きです。

実際に特例を適用するためには、遺産分割後に次の点を確認しなければなりません。

・対象となる土地の用途

・土地を取得した相続人

・被相続人と取得者との関係

・同居や居住の状況

・土地の保有状況

・事業や賃貸経営の継続状況

・対象となる面積

・他の土地との限度面積の調整

最終的な遺産分割の内容によっては、小規模宅地等の特例を適用できないこともあります。


5.申告期限後3年以内に遺産分割が成立した場合


5-1.まずは特例の適用要件を確認する

相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合は、土地を取得した相続人について、小規模宅地等の特例の要件を改めて確認します。

例えば、自宅敷地を配偶者が取得した場合と、同居していた子が取得した場合では、確認すべき要件が異なります。

また、賃貸物件の敷地を相続した場合は、被相続人の貸付事業を引き継いでいるか、申告期限まで土地を保有しているかなどの確認が必要です。

「期限内に分割できた」という事実だけで、必ず特例を受けられるわけではありません。


5-2.税額が減る場合は更正の請求を行う

遺産分割後に小規模宅地等の特例を適用し直した結果、当初申告よりも相続税額が少なくなる場合は、更正の請求を行います。

更正の請求とは、納めすぎた税金を返してもらうために税務署へ行う手続きです。

申告期限後3年以内に分割され、特例を適用する場合は、原則として遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。

遺産分割が成立しただけで、税金が自動的に還付されるわけではありません。相続人側から更正の請求書を提出する必要があります。


5-3.税額が増える場合は修正申告を行う

遺産分割の内容によっては、当初申告よりも相続税額が増える相続人が出ることもあります。

例えば、法定相続分に基づいて申告した金額よりも、実際に取得した財産の金額が多くなった場合などです。

税額が減る場合に行うのが「更正の請求」、税額が増える場合に行うのが「修正申告」です。

遺産分割後は、一部の相続人だけでなく、原則として相続人全体の税額を再計算し、それぞれに必要な手続きを確認することが大切です。


6.申告期限から3年を超えても遺産分割できない場合


6-1.一定のやむを得ない事由があれば、例外がある

相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が成立しない場合でも、直ちにすべての可能性がなくなるとは限りません。

相続に関する訴えが提起されているなど、遺産を分割できないことについて一定のやむを得ない事由がある場合は、税務署長の承認を受けることで、3年経過後の分割でも小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。

ただし、相続人同士の話し合いが長引いているという事情だけで、当然に承認されるわけではありません。

何が「やむを得ない事由」に当たるかは、遺産分割ができない具体的な事情に基づいて個別に判断されます。


6-2.承認申請書には提出期限がある

3年を超える場合は、所轄税務署長に次の書類を提出します。

「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」

提出期限は、原則として、相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までです。

期限を過ぎてから、「実は裁判が続いていた」と説明しても、当然に救済されるものではありません。

3年以内に分割できない可能性が出てきた段階で、承認申請の対象となるか、提出期限がいつになるかを早めに確認することが重要です。


6-3.承認後にも期限がある

税務署長の承認を受けたとしても、無期限に遺産分割を先送りできるわけではありません。

基本的な流れは次のとおりです。

1.裁判の判決が確定するなど、遺産分割ができる状態になる

2.遺産分割ができることとなった日の翌日から4か月以内に分割する

3.分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求をする

やむを得ない事由が解消した後も、遺産分割と更正の請求について、それぞれ期限管理が必要です。


7.手続きの流れを時系列で確認


遺産分割が申告期限に間に合わない場合の流れを、時系列で整理すると次のようになります。

【相続開始】

被相続人が亡くなり、相続が始まります。

 ↓

【相続税の申告期限まで】

原則として、死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税を申告・納税します。

遺産分割が終わっていない場合は、法定相続分などに従って税額を計算します。

未分割の土地には、小規模宅地等の特例を適用しません。

相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。

 ↓

【申告期限後3年以内】

遺産分割協議を成立させ、誰がどの財産を取得するかを確定します。

 ↓

【遺産分割後】

土地を取得した相続人について、小規模宅地等の特例の適用要件を確認します。

 ↓

【分割後、原則4か月以内】

税額が減る場合は、更正の請求を行います。

税額が増える場合は、修正申告を行います。

申告期限後3年以内に分割できない場合は、一定のやむを得ない事由があるかを確認し、所定の期限までに税務署長への承認申請を検討します。

相続申告の流れ

8.遺産分割が間に合わない場合によくある失敗

相続手続全体の期限や流れについては、「相続の基本と全体像」で整理しています。


8-1.遺産分割が終わるまで申告しない

最も避けたいのは、遺産分割協議が終わるまで相続税の申告をしないことです。

相続税の申告期限は、遺産分割協議の進捗状況とは別に到来します。

期限までに遺産分割が終わらない場合でも、未分割の状態で申告と納税を行う必要があります。


8-2.3年間は申告期限が延びると誤解する

「申告期限後3年以内」という言葉は、相続税申告の期限が3年間延長されるという意味ではありません。

相続税の申告・納税は、原則10か月以内に行います。

そのうえで、一定の手続きをしておけば、申告期限から3年以内に成立した遺産分割に基づいて、後から特例を適用できるという制度です。


8-3.分割見込書を提出し忘れる

将来、小規模宅地等の特例を適用する予定があるにもかかわらず、当初の相続税申告書に分割見込書を添付していないケースがあります。

分割見込書は、後日の特例適用に関わる重要な書類です。

提出を忘れた場合に、後から提出すれば必ず認められるとは限りません。添付漏れが判明した場合は、自己判断で放置せず、速やかに税理士や所轄税務署へ確認する必要があります。


8-4.遺産分割後に何もしない

遺産分割が成立しても、税務署が自動的に相続税を再計算して還付してくれるわけではありません。

税額が減る場合は、原則として期限内に更正の請求を行います。

遺産分割協議書を作成した段階で安心せず、税務上の手続きが残っていないか確認しましょう。


8-5.税金だけで遺産分割方法を決める

小規模宅地等の特例を使えば相続税を減らせるため、特例の効果だけを見て土地の取得者を決めたくなることがあります。

しかし、不動産の遺産分割では、次の点も検討する必要があります。

・取得者が固定資産税や修繕費を負担できるか

・他の相続人へ代償金を支払えるか

・将来、その不動産を売却する予定があるか

・不動産を共有することによる問題がないか

・配偶者の相続後に発生する二次相続への影響

・賃貸物件の管理を継続できるか

相続税だけでなく、相続後の管理や売却、家族関係まで含めて判断することが大切です。


9.まとめ

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなくても、一定の手続きを行うことで、後から小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。

重要なポイントを改めて整理します。

1.遺産分割が終わっていなくても、相続税は原則10か月以内に申告・納税する

2.未分割の土地については、当初申告で小規模宅地等の特例を適用しない

3.相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する

4.原則として申告期限から3年以内に遺産分割を成立させる

5.分割後に税額が減る場合は、原則4か月以内に更正の請求を行う

6.3年を超える場合は、やむを得ない事由について税務署長の承認が必要になる

遺産分割が間に合わない相続では、申告期限、3年の期限、分割後4か月の期限など、複数の期限を同時に管理しなければなりません。

また、誰が不動産を取得するかによって、小規模宅地等の特例の適用可否だけでなく、相続税額や将来の不動産管理、二次相続にも影響します。

「まだ遺産分割が終わっていないから、相続税申告の準備も進められない」と考えるのではなく、申告期限が近づく前に財産評価と税額計算を進めておくことが大切です。

遺産分割がまとまらず、相続税の申告期限が迫っている方は、アポロ税理士法人までお気軽にご相談ください。状況を整理したうえで、期限内申告と将来の特例適用を見据えた対応を検討いたします。


【参考資料】

監修者

志田 宏樹

公認会計士・税理士・宅地建物取引士


監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。


専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継

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