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【事業承継シリーズ 第6回】自社株はいくら?非上場株式の評価方法と注意点

10月28日
読了時間: 11分

更新日:6 日前

「うちの会社の株はいくらなのだろう」「決算書を見れば自社株の評価が分かるのでは?」。非上場会社の事業承継を考えたとき、自社株式の評価額は最初に気になる項目の一つです。


上場会社の株式には市場価格がありますが、非上場会社の株式は日々の取引価格が表示されません。そのため、相続・贈与なのか、親族間の売買なのか、M&Aなのかによって、評価の目的と考え方を整理する必要があります。


この記事では、国税庁が示す非上場株式の評価方法の概要と、事業承継で自社株評価をどう使うかについて解説します。



▍ この記事の要点|1分でわかる自社株評価


事業承継シリーズ第6回のsummary図解:自社株はいくら?非上場株式の評価方法と注意点

  • 相続税・贈与税の評価とM&A価格は別。 評価の目的と前提が違うため、同じ金額になるとは限りません。

  • 会社規模や株主区分で評価方式が変わる。 類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式などがあります。

  • 株価だけで承継方法を決めない。 税金、後継者の取得資金、家族の財産配分、事業の継続性と合わせて考えます。


▍ 目次


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1. 結論|自社株の「値段」は目的によって異なる


非上場株式には、上場株式のような市場価格が常にあるわけではありません。そのため「自社株はいくらか」という質問に答えるには、何のための評価かを明確にする必要があります。


相続や贈与で株式を取得した場合には、相続税・贈与税の計算で用いる財産評価基本通達に沿って評価します。これに対し、M&Aで売買価格を交渉する場合には、将来の利益やキャッシュフロー、実際の取引条件が重視されることがあります。


また、親族間で売買する場合には、税務上の時価と実際の契約価格の整合を確認する必要があります。「税務評価額を計算したから、どんな売買でもその価格でよい」というわけではありません。


自社株の評価額が高いことは会社の強みを示す面もありますが、後継者への贈与・相続・売買の資金負担には影響します。会社の事業価値と承継する人の負担を分けて考えることが大切です。





2. 国税庁の評価で最初に決まること


国税庁の「取引相場のない株式の評価」では、株式を取得する人が同族株主等に当たるかどうか、会社の規模等によって評価方式が異なります。


一般に、経営を支配する立場の同族株主等が取得する株式については原則的評価方式が用いられます。一方、一定の少数株主等については配当還元方式による評価となる場合があります。


原則的評価方式では、会社規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分し、主に類似業種比準方式と純資産価額方式を用います。ただし、特定の評価会社に該当するかどうかなど例外的な判定も重要です。


評価前に株主名簿と別表二を確認するのは、評価額が会社の数字だけでなく「誰が取得する株式か」によっても変わるためです。





3. 主な評価方法を比較する


事業承継シリーズ第6回のdiagram図解:自社株はいくら?非上場株式の評価方法と注意点

評価方法

基本的な考え方

主な確認事項

類似業種比準方式

類似業種の株価と配当・利益・純資産等を比較

類似業種、会社規模、比準要素

純資産価額方式

資産・負債を相続税評価に洗い替えるなどして算定

土地・株式・負債、含み損益等

併用方式

類似業種比準方式と純資産価額方式を併用

会社規模・比率等

配当還元方式

株式から受ける配当を基礎に評価

株主区分、配当の状況


例えば、大会社は原則として類似業種比準方式、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両方式の併用が基本となります。実際には選択可能な評価や特例会社の取扱いなどがあるため、会社規模だけで断定しないことが重要です。


類似業種比準方式では、評価会社の配当、利益、簿価純資産などを類似業種の指標と比較します。純資産価額方式では、帳簿価額をそのまま使うのではなく、相続税評価に洗い替えた資産・負債等を基に算定します。


不動産保有会社などでは、土地や有価証券の保有割合に応じた判定が問題になる場合があります。決算書の純資産を株数で割れば税務上の株価が出るという説明は正確ではありません。





4. 評価のために必要となる資料


自社株の概算評価でも、会社の決算書だけでは足りない場合があります。会社の概要、株主構成、保有資産、決算・申告内容、過去の取引等を整理しましょう。


資料

主な用途

直近複数期の決算書・法人税申告書

利益・純資産・会社規模の検討

株主名簿・法人税申告書別表二

株主区分・議決権の確認

土地・建物・有価証券の明細

資産評価、特定評価会社の判定

借入金・保証・関連当事者取引の明細

負債・純資産や承継上の課題整理

設立・増資・株式移動の履歴

株式数・権利関係の確認


会社によっては名義株や所在不明株主が問題になることがあります。こうした法的な所有関係の確定は、税務の計算だけで解決できない場合があり、弁護士等の確認が必要です。


また、概算評価と正式評価では目的と調査範囲が異なります。まず承継方針を考えるための概算額を把握し、その後、贈与や相続、売買などの実行段階で正式な評価を行うという進め方もあります。





5. 株価が高いことは悪いこと?


業績が好調で利益が蓄積している会社は、税務上の自社株評価が高くなる場合があります。株価が高いこと自体は会社が長年事業を継続し、価値を積み上げてきた結果である場合もあります。


一方、後継者に株式を贈与する場合は贈与税等の負担、相続で引き継ぐ場合には相続税・納税資金、売買する場合には取得資金が問題となります。


ここで安易に株価を下げることだけを目的とした取引を行うと、会社の現預金や財務状況が悪化する可能性があります。例えば、多額の役員退職金の支払いは税務や株価に影響する場合がありますが、会社の資金繰りを苦しくすることもあります。


株価を一つの目標数値にするのではなく、後継者が会社を引き継いだ後、安定した経営を続けられるかを併せて考えましょう。





6. 具体例|不動産を保有する会社の自社株評価


架空の不動産管理会社G社を考えます。会社には預金のほか、賃貸物件や土地があり、長年利益を蓄積しています。父親が株式を100%所有し、長男に引き継ぐ予定です。


社長は決算書の純資産が1億円なので、自社株価も1億円だと考えていました。しかし、土地の税務上の評価、会社規模、特定の評価会社に該当するか、株主区分等を確認する必要があります。


さらに、株式を相続・贈与で取得する場合の評価と、第三者に会社を売却する場合の取引価格は別に考えなければなりません。保有不動産の価値や賃料収入、借入金、物件修繕、将来キャッシュフローなどによって、買い手の判断が変わる可能性があります。


後継者が株式を購入する場合は、購入代金の調達と借入返済の原資を確認します。家族間で承継する場合は、他の相続人にどのように財産を配分するかも整理します。


自社株評価は会社の承継を考える入口であり、会社の財務と家族の問題を解決するための最終回答ではありません。





7. 自社株評価を活用する5つのSTEP


事業承継シリーズ第6回のtimeline図解:自社株はいくら?非上場株式の評価方法と注意点



STEP 01 │ 何のための評価か決める


概算の承継検討、相続・贈与、親族間売買、M&Aなど、評価の目的を整理します。税務と企業価値を混同しないことが出発点です。




STEP 02 │ 株主構成と資料を確認する


株主名簿、別表二、議決権、過去の株式移動、直近の決算・申告を確認します。




STEP 03 │ 評価方式と必要な調整を検討する


会社規模や株主区分、保有資産の状況等を踏まえて評価方式を判定します。不動産等がある場合は適切な資料を揃えます。




STEP 04 │ 贈与・相続・売買の負担を比較する


評価額をもとに税負担や取得資金を試算し、先代・後継者・会社の資金への影響を確認します。




STEP 05 │ 実行前に評価時点を再確認する


業績、資産価格、株主構成、法令等は変化します。贈与や売買の直前には、当初の評価額をそのまま使ってよいか確認しましょう。





8. 誰にいつ評価を依頼する?


税理士には、相続税・贈与税のための非上場株式評価、株主区分や評価方式の判定を依頼できます。公認会計士等には、M&A等での企業価値や事業の収益力に関する検討が必要になる場合があります。


会社の保有不動産の評価が複雑な場合には、不動産鑑定士等と連携することがあります。また、株主の法的な所有関係や契約の問題は弁護士等の確認が必要です。


自社株評価は贈与・売買を実行する前に依頼することが重要です。税額を計算してから承継方法を決めるのではなく、評価と資金計画を比較する段階から相談する方が、選択肢を整理しやすくなります。


◇ よくある質問|評価額を読むときの注意


Q.純資産が1億円なら、株価も必ず1億円ですか?


そうとは限りません。相続税・贈与税における非上場株式の評価では、会社の規模や株主の区分等により評価方式を判定し、資産・負債を税務上の評価へ洗い替える場合もあります。帳簿上の純資産をそのまま株式の評価額として扱うことはできません。


Q.赤字の会社なら、自社株式の評価額はゼロになりますか?


必ずしもゼロとは限りません。過去の利益蓄積、土地や有価証券などの資産、借入金等の負債、会社規模と評価方式によって結論は変わります。税務上の評価額と第三者の買収価格も別なので、赤字というだけで結論を出さず資料に基づき評価します。


Q.不動産をたくさん持つ会社の評価は普通と違いますか?


保有する土地や株式等の割合が一定以上の会社は、税務上、特定の評価会社に該当する可能性があります。土地保有特定会社等に該当する場合、原則的な評価方法が変わるため、資産の一覧と保有割合の判定が必要です。不動産が一つあるだけで必ず特定会社になるわけではありません。


Q.株価を下げてから贈与すればよいですか?


株価が低い時期に承継することが合理的な場合はあります。しかし、利益・資産の変化や取引の実態を無視して価格だけ調整することは適切ではありません。役員退職金の支給などは会社の資金繰りにも影響します。まず自社株の評価方式と会社の将来計画を整理し、合法性・合理性を確認することが重要です。


◇ 概算評価と正式評価の使い分け


承継を考え始めた時点で、株主名簿や直近決算に基づく概算の株価を把握することは、方向性を整理するうえで有効です。一方、実際の贈与・相続・売買を実行する際には、課税時期や取引条件に応じた正式な確認が必要となります。重要なのは概算と正式な評価の目的を取り違えないことです。評価額の変化を見込む場合も、税額だけでなく後継者の購入資金、先代の生活資金、家族の財産配分への影響を同時に確認しましょう。


◇ 自社株評価の結果をどう読むか


評価書を受け取ったとき、最終的な金額だけを見るのではなく、前提条件を確認してください。対象となる株主区分は何か、どの評価方式を使ったか、保有不動産の評価はどう扱われたか、決算日や課税時期はいつか。これらの情報が異なれば、別の機会に同じ株式を評価しても金額が変わることがあります。


また、相続税・贈与税の評価は、後継者が株式を買い取る際の返済可能額を示すものではありません。例えば税務上の株価が5,000万円だったとしても、後継者が個人で5,000万円の借入を返済できるとは限りません。給与・配当・個人資産などの返済原資と、会社の今後の資金繰りを確認する必要があります。


会社の価値が高いことを単に不利と考えず、税金・取得資金・事業の将来性を分けて評価結果を読むことが、実際の事業承継に役立ちます。





9. まとめ|評価額を知ることは承継計画の第一歩


自社株式の評価は、会社規模、株主区分、資産構成、評価目的によって異なります。評価額を知るだけでなく、税金・資金・経営・家族の問題を一緒に整理しましょう。


☐ 株主名簿と別表二を確認した


☐ 評価の目的(税務・売買・M&A等)を明確にした


☐ 保有不動産等の資産明細を整理した


☐ 贈与・相続・売買の税負担と取得資金を考えた


☐ 実行前の評価時点を再確認する予定がある





▍ アポロ税理士法人の考え方


アポロ税理士法人では、株価だけを下げる発想ではなく、事業の継続・資金繰り・後継者の経営体制・家族の財産配分まで考えた評価と承継方針の検討を重視しています。税務・会計は当法人が担い、財務・不動産の検討は必要に応じてファルコン株式会社等と連携します。



監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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※本文は2026年10月時点の一般的な情報です。評価の具体的な方法は適用時点で確認してください。



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