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【相続の実践ガイド 第14回】相続税の納税資金はどう準備する?生命保険・預貯金・不動産売却の比較

10月28日
読了時間: 10分

更新日:6 日前

相続税は、財産が多い人ほど必ず納税しやすいわけではありません。不動産や非上場株式が中心で、現金が少ない相続では、税額が確定してから資金不足に気づくことがあります。


本記事では、相続人ごとに納税資金を見積もり、預金、生命保険、不動産売却、融資などをどう組み合わせるかを検討します。特に不動産オーナーの方は、相続後の修繕や返済資金も含めて考える必要があります。


第14回の要点を3つの視点で整理した図解

▍ この記事の要点|1分でわかる


  • 1.相続人別の納税額

  • 2.現金・生命保険

  • 3.売却・融資の検討


▍ 目次












1. 結論|最初に知っておきたいこと


相続税は原則として法定の期限までに金銭で納める必要があります。相続人全員の財産をまとめて考えるだけでなく、実際に財産を取得する人が、いつまでにいくら必要なのかを確認しましょう。


例えば、長男が評価額の大きい土地を取得し、長女が預貯金を取得する場合、長男の納税資金は不足するかもしれません。税額の配分と現預金の配分が一致しないと、分割案を実行できないことがあります。




2. 制度・仕組みの基本


死亡保険金には、被相続人が保険料を負担していたなどの条件で相続税の対象となるものがあります。相続人が受け取る死亡保険金には原則として法定相続人1人当たり500万円の非課税限度額がありますが、受取人や契約関係によって適用が異なります。


生命保険を納税資金に使うときは、受取人、保険料負担者、解約返戻金、受取時期を確認します。保険に加入すれば常に有利というわけではなく、保険料負担と生活資金への影響も比較します。




3. 選択肢と影響を比較する


不動産を売却して納税する案では、売却価格、仲介手数料、譲渡所得税、ローン返済、売却完了時期などを確認します。相続税評価額どおりに売れるとは限らず、売り急ぎによる価格下落も考えられます。


借入によって資金を用意する場合は、返済原資、金利、担保、保証などを金融機関と相談する必要があります。延納・物納には厳格な要件と手続があるため、最初から使える前提で計画するのは避けましょう。


方法

メリット

確認すべき負担

預金

確実性が高い

生活資金との取り合い

生命保険

受取人に資金を確保

契約関係・保険料

不動産売却・借入

まとまった現金を確保し得る

売却費用・返済・期限




4. 見落としがちな注意点


評価額の高い自宅や土地を相続しても、金融機関から必ず希望額を借りられるわけではありません。また、所有物件の売却を予定していても、相続人間の合意がないと売却の判断が難しい場合があります。


納税資金の準備では、相続税そのものだけでなく、葬儀費用、住まいの維持費、賃貸物件の大規模修繕、借入返済などの支出も確認しましょう。納税後の家族の生活が成り立つことも重要な目標です。




5. 具体例|相続財産の大半が賃貸アパートと土地


父の相続財産は賃貸アパート2棟と自宅、少額の預金が中心で、子ども2人が相続するとします。一人がアパートを取得する案では、納税額の大部分を不動産取得者が負担しますが、その人の手元には十分な現金がありません。


まず分割案ごとに相続税の概算と資金不足額を試算します。保険金の受取人、預金の取得割合、不採算不動産の整理、金融機関への相談可能性を比較し、期限までに実現できるかを確認します。




6. 実務の進め方|5つのステップ


第14回の実務の進め方を3段階で示す図解

STEP 01 │ 相続人別の税額を試算


誰が何を取得し、どれだけ納税するかを概算する。


STEP 02 │ 現金化可能な財産を把握


預金・生命保険・売却可能資産を調査する。


STEP 03 │ 不足額を計算


納税資金から生活資金・返済・修繕の予備費を区別する。


STEP 04 │ 調達案を比較


売却・借入・分割案の見直しを検討する。


STEP 05 │ 期限と担当を管理


必要な契約・金融機関協議・売却手続を早めに進める。




7. 資料・チェックリスト


最初から完璧に資料を揃える必要はありません。分かる範囲で現状を記録し、不足している事項を確認しながら次の行動を決めましょう。


  • □ 相続人ごとの概算納税額を把握した

  • □ 保険の受取人と保険料負担を確認した

  • □ 売却したときの税・費用も試算した

  • □ 返済・生活・修繕費を残している

  • □ 納税期限までに実行可能な方法を確認した




8. 専門家・金融機関に相談する時期


税理士は相続税額や各種控除、売却時の税金の概算を整理します。金融機関は融資や借入条件、担保・保証について相談する相手になります。不動産の売却候補がある場合は、仲介会社や鑑定等の専門家へ価格・流動性を確認しましょう。


期限直前になって初めて相談するのではなく、現状の財産と想定納税額が見えた段階で複数案を比較します。税務・融資・売買の判断を別々に進めると、全体として資金不足になるおそれがあります。


税務上の判断と法律上の判断、金融機関との契約上の手続は別々です。担当する専門家の役割を共有して進めることで、見落としや手戻りを減らしやすくなります。




9. よくある質問とまとめ


Q. 物納なら土地で納税できますか?


A.物納は原則的な方法ではなく、延納によっても金銭納付が困難などの要件があります。対象財産や手続の確認が必要です。


Q. 保険金があれば納税資金は十分ですか?


A.受取人と納税義務者が一致するか、生活費や他の支出を考慮した後に十分かを確認する必要があります。


まとめ: 納税資金は、財産全体の現金ではなく、相続人別の手元資金と納税期限を基準に設計することが重要です。






▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ


実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。


CASE 01 │ 土地の評価額は高いが預金が少ない場合


相続した土地の評価額が大きくても、相続人の預金が少なければ納税資金が不足する可能性があります。土地を取得する人と預金を取得する人が異なる場合、相続人ごとの納税額と手元資金を確認します。売却の可能性がある土地を事前に選び、売却に要する時間、仲介費用、譲渡所得税、借入返済額を試算しましょう。評価額だけを見て資金不足は起こらないと考えるのは危険です。


CASE 02 │ 生命保険で資金を確保する場合


死亡保険金は受取人にまとまった現金が入る場合があり、納税資金の準備に活用されることがあります。ただし、誰が保険料を負担し、誰が受け取るかによって課税関係が変わります。相続税の非課税枠も受取人の条件などを確認する必要があります。保険を使えば税負担が必ず減ると考えるのではなく、保険料負担、家族の生活資金、受取時期、納税者本人の資金需要を比較することが重要です。


CASE 03 │ 金融機関へ相談する場合


不動産をすぐに売却したくないため、納税用の借入を検討する場合があります。融資の可否は土地の担保価値だけでは決まらず、返済原資、既存借入、金利、担保、保証などの条件を総合的に確認する必要があります。賃貸物件の家賃を返済に充てる場合は、空室や修繕費、将来の金利上昇も考慮します。納税後も生活と事業を維持できる資金計画かどうかを優先して判断しましょう。


こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。


▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント


01 │ 納税資金は相続人ごとに一覧化する


相続財産の合計額と相続税の合計額だけでは、誰が資金不足になるか分かりません。例えば土地を取得する人は評価額が大きくても現金が少なく、預金を取得する人は納税資金に余裕があることがあります。分割案ごとに各人の納税額、取得預金、保険金、売却候補、借入可能性を並べると、実現可能な案かどうかを具体的に判断できます。



02 │ 生命保険は受取人と契約関係を確認する


生命保険を使った納税資金の確保では、保険金の額だけでなく誰が受け取るかが重要です。死亡保険金の非課税枠には適用条件があり、相続人以外が受け取る場合は取扱いが異なります。保険料の負担者によっても課税関係が変わり得ます。『受取人にまとまった現金が入る』という点と『家族全体の税負担』を分けて検討することが大切です。



03 │ 不動産売却は時間と税金を考慮する


相続税申告の直前に不動産を売る計画を立てても、買主が見つからない、相続人間で合意できない、境界が未確定などの理由で間に合わないことがあります。売却価格と相続税評価額は同じとは限りません。仲介手数料、譲渡所得税、抵当権抹消や測量などの費用、借入返済後の手取額を見積もり、納税期限までに現金化できるか確認しましょう。



04 │ 金融機関から借りる場合は返済原資を示す


納税のための借入が可能かは、担保価値だけでは決まりません。借入人の返済原資、既存借入の負担、金利、返済期間、保証の条件などを金融機関と協議します。賃貸不動産の家賃で返済する場合は、空室や修繕によって収入が変わることも考慮しましょう。取得した財産を守るために過大な借入を行い、その後の生活を圧迫しないことが重要です。



05 │ 延納と物納を安易な保険にしない


相続税は原則として金銭で納めます。延納は金銭での一括納付が困難などの要件があり、利子税や担保の検討が必要になる場合があります。物納もさらに要件が厳しく、希望する土地を渡せばよい制度ではありません。通常の納税計画は預金・保険・売却・借入などで実現可能性を確認し、延納・物納は要件を満たすか専門家と検討します。



06 │ 生活資金と修繕資金を残す


納税資金を準備できても、納税後に配偶者の生活費やアパートの修繕費が不足しては本末転倒です。相続税の概算だけでなく、一定期間の生活費、既存借入の返済、賃貸物件の大規模修繕、将来の介護費用なども分けて考えます。税額を減らすことが最優先ではなく、家族の生活と財産の維持を両立させる計画を目指すべきでしょう。




▍ アポロ税理士法人の考え方


相続税の有利・不利だけで判断せず、分割・納税資金・不動産や事業の承継後まで考えることを大切にしています。税務・会計・財務に関する論点を整理し、法律・登記・金融機関との調整が必要な部分は各分野の専門家と連携します。




監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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全記事の目次:第1回|相続の全体像


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※2026年10月時点で確認した一般的な制度・実務です。改正、個別要件、最新の届出期限などを実行前に確認してください。




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