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【相続の実践ガイド 第13回】遺言・家族信託・成年後見はどう使い分ける?認知症への備えも整理

10月28日
読了時間: 10分

更新日:6 日前

親が元気なうちに財産をどう守るかを考えると、遺言書、家族信託、成年後見制度などが候補に挙がります。しかし、それぞれ目的が異なり、どれか一つを選べば相続対策が完成するわけではありません。


本記事では、財産を誰に渡すか、判断能力が低下したときの管理をどうするか、本人を保護するために何が必要かを分けて整理します。不動産を所有する方の例も取り上げます。


第13回の要点を3つの視点で整理した図解

▍ この記事の要点|1分でわかる


  • 1.遺言で分割を指示

  • 2.家族信託で管理

  • 3.後見で本人を保護


▍ 目次












1. 結論|最初に知っておきたいこと


遺言は、亡くなった後に財産をどう承継させるかを示すための手段です。自筆証書遺言、公正証書遺言など方式があり、有効な遺言にするには法的な要件を守る必要があります。


家族信託は、財産の管理・処分を一定の枠組みで家族等に託す方法です。所有権の移転や受益権の設定などが伴うため、単に『代理で管理してもらう』のとは違います。税務上の扱いも設計内容に応じて確認が必要です。




2. 制度・仕組みの基本


成年後見制度は、本人の判断能力が不十分な場合などに本人を保護・支援する制度です。法定後見と任意後見では開始までの流れや仕組みが異なります。本人の財産を自由に相続税対策へ使うための制度ではありません。


家族信託の契約は遺言の代わりに何でもできるものではなく、相続人の遺留分や信託の受益権、登記、契約相手方との関係などを検討する必要があります。公証人・弁護士・司法書士・税理士等の役割を明確にします。




3. 選択肢と影響を比較する


認知症への備えとして、賃貸不動産を家族が管理できるようにすることと、亡くなった後の不動産の取得者を決めることは別の課題です。遺言だけでは生前の財産管理に直接対応できません。家族信託を設けても、信託外の財産や身上保護の問題が残ることがあります。


家族の関係性や対象財産、本人の意思能力、信託のコストを確認し、組み合わせるかどうかを判断します。


制度

主な目的

注意する点

遺言

死後の財産の承継先を指定

方式・遺留分・実行

家族信託

財産管理・承継の枠組み

信託対象と税務・登記

成年後見

本人の生活・財産を保護

裁判所等の関与と権限




4. 見落としがちな注意点


制度の名前だけで『認知症対策になる』『税金が下がる』と判断するのは危険です。家族信託それ自体に一般的な相続税節税効果があるわけではありません。また、財産を託された人が誰に報告し、どのように意思決定するかという運営ルールが欠けると、家族間の不信につながることがあります。


本人に判断能力があるうちに意思を確認し、必要な契約手続を進めることが大切です。能力に不安がある場合は、契約や遺言の有効性を法的に確認します。




5. 具体例|高齢の親が賃貸アパートを所有している


母が賃貸アパートを所有し、子ども2人が管理を手伝っているとします。母の判断能力が低下した場合に修繕や売却判断をどうするか、将来アパートを誰が取得するかが課題です。


家族信託を選ぶ場合は対象物件、受託者の権限、受益者、帳簿管理、終了時の取扱いを検討します。一方、遺言は相続後の承継先を指示するために検討します。必要に応じて後見制度についても確認し、本人の希望を軸に役割分担を設計します。




6. 実務の進め方|5つのステップ


第13回の実務の進め方を3段階で示す図解

STEP 01 │ 本人の希望と判断能力を確認


遺産分割と生前管理のどちらが課題か整理する。


STEP 02 │ 対象財産を選ぶ


預貯金・自宅・賃貸物件・株式の範囲を区分する。


STEP 03 │ 制度を比較


遺言、信託、任意後見等の目的・コストを比較する。


STEP 04 │ 法務・税務を確認


契約、登記、課税関係、遺留分などを専門家と整理する。


STEP 05 │ 実行後の管理体制を決める


報告・会計・見直しの担当者を定める。




7. 資料・チェックリスト


最初から完璧に資料を揃える必要はありません。分かる範囲で現状を記録し、不足している事項を確認しながら次の行動を決めましょう。


  • □ 本人の意思・能力を確認した

  • □ 生前管理と死後承継の目的を分けた

  • □ 対象財産と管理者の役割が明確

  • □ 法律・税務・登記を個別に確認

  • □ 家族への報告方法を決めた




8. 専門家・金融機関に相談する時期


遺言書や信託契約の法的設計、遺留分の問題は弁護士・司法書士等と確認します。税理士は財産移転、受益権や相続税・贈与税の影響を整理します。不動産が対象なら、管理会社や金融機関に契約上の制約も確認したいところです。


特に多額の賃貸不動産を保有するケースでは、信託設定によって管理の手続と確定申告の実務がどう変わるかまで確認します。制度導入そのものを目的にしないことが大切です。


税務上の判断と法律上の判断、金融機関との契約上の手続は別々です。担当する専門家の役割を共有して進めることで、見落としや手戻りを減らしやすくなります。




9. よくある質問とまとめ


Q. 家族信託をすれば相続税は安くなりますか?


A.家族信託そのものに一般的な節税効果があるわけではありません。受益権の帰属等に応じた税務確認が必要です。


Q. 遺言書だけで認知症への備えは十分ですか?


A.遺言は主に死後の承継を定める手段です。生前の財産管理や生活支援について別の対策が必要になる場合があります。


まとめ: 遺言・家族信託・後見は目的が異なります。『死後の分け方』『生前の管理』『本人の保護』を分けて検討します。






▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ


実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。


CASE 01 │ 親が元気なうちに遺言書を作成する場合


親が自宅を同居の子へ残したいと希望している場合、遺言書で承継先を示すことが一つの方法になります。ただし、遺言の方式に不備があると無効となる可能性があり、他の相続人の遺留分も問題になることがあります。自筆証書遺言や公正証書遺言の違い、財産の特定方法、遺言執行者の役割を専門家と確認し、相続税額と納税資金の見込みも併せて考えておくとよいでしょう。


CASE 02 │ 賃貸不動産の管理を家族へ委ねたい場合


高齢の親が賃貸アパートを所有し、認知症によって将来の修繕や売却判断が難しくなることを心配している場合、家族信託などの方法が候補になります。しかし、信託契約を作れば自動的に問題が解決するわけではありません。受託者がどの範囲の管理行為を行い、誰に帳簿や収支を報告し、信託終了時に財産をどうするかを具体的に設計します。信託の税務と登記も確認が必要です。


CASE 03 │ 既に判断能力に不安がある場合


判断能力が低下した後では、本人が有効に遺言や信託契約を締結できるかが問題になることがあります。成年後見制度の利用を検討する場合は、本人の財産と生活を保護することが中心で、自由な相続税対策を行うための仕組みではない点を理解しましょう。本人の意思や健康状態を尊重し、弁護士・司法書士等と必要な制度を確認することが大切です。


こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。


▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント


01 │ 遺言は『亡くなった後』の承継を考える


遺言書は財産の承継先や遺言執行に関する本人の意思を示す手段ですが、本人が生きている間の資産運用を家族に任せる制度ではありません。自筆証書遺言は法的な方式を満たす必要があり、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度なども選択肢です。財産の特定や遺留分に問題が残らないか、作成前に専門家へ確認することが重要です。



02 │ 家族信託は管理のルールを具体的に決める


賃貸不動産を家族信託の対象にする場合、誰が受託者になり、賃料をどの口座で管理し、修繕や売却をどの範囲で判断できるのかを設計します。契約を作るだけで管理が自動化されるわけではありません。帳簿、報告、受益者への利益の帰属、信託終了後の財産の取扱いまで確認します。家族の信頼関係と事務負担も設計の重要な条件です。



03 │ 成年後見は財産保護の制度である


成年後見制度は、判断能力が不十分な本人の権利や財産を保護するための制度です。家族が望む投資や相続税対策を自由に実行できるようにするものではありません。本人の生活、医療・介護費用、財産管理などが中心となり、利用後の手続や裁判所等の関与も考慮する必要があります。制度選択は節税の便利さではなく本人を守る目的から考えます。



04 │ 家族信託で税金が下がるとは限らない


家族信託を設定したこと自体で相続税が自動的に減るわけではありません。受益権が誰に帰属するか、信託設定時や終了時にどのような財産移転が起こるかによって、所得税・相続税・贈与税などの検討が必要です。賃貸不動産を対象とする場合は、信託後の家賃収入の帰属と申告実務まで税理士と確認しましょう。



05 │ 金融機関や管理会社との関係を忘れない


ローンのある不動産を信託する場合、金融機関との契約により事前相談が必要になることがあります。管理会社との委託契約、保険、修繕・工事の名義などにも実務上の整理が生じます。信託契約の作成だけで手続が完了するわけではないため、契約当事者へどのタイミングで連絡するかを決め、税務・登記・口座管理を一体で確認します。



06 │ 親の希望を優先し家族間の対立を防ぐ


家族が『親のため』と思って制度を選んでも、本人の意思が十分に確認されていなければ後に争いにつながるおそれがあります。誰が管理者になるのか、収支を誰に報告するのか、利益相反の場面をどう扱うのかを家族間で整理しましょう。特定の相続人に権限が集中する場合には、ほかの家族が納得できる情報共有の仕組みを設けることが重要です。




▍ アポロ税理士法人の考え方


相続税の有利・不利だけで判断せず、分割・納税資金・不動産や事業の承継後まで考えることを大切にしています。税務・会計・財務に関する論点を整理し、法律・登記・金融機関との調整が必要な部分は各分野の専門家と連携します。




監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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全記事の目次:第1回|相続の全体像


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※2026年10月時点で確認した一般的な制度・実務です。改正、個別要件、最新の届出期限などを実行前に確認してください。



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