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【相続の実践ガイド 第18回・最終回】相続対策は何から始める?分割・納税資金・不動産の実行チェックリスト

10月28日
読了時間: 11分

更新日:6 日前

「相続対策は何から始めればよいのでしょうか」。相続税の心配があっても、家族の状況や不動産の分け方、将来の生活資金など、考えることが多くて手を付けられない方も少なくないと思います。


相続対策の目的は税金を最小にすることだけではありません。財産を誰に渡すのか、納税に必要なお金をどう準備するか、相続後の不動産管理や家族の暮らしをどう守るか。それぞれをつなげて考えることが大切です。


シリーズ最終回では、相続対策の全体像を実際の行動に変えるための「実行チェックリスト」を紹介します。生前に準備する方にも、相続が発生して手続を始める方にも共通する考え方を整理します。


相続対策の分割・税と資金・相談先の3視点

▍ 目次


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1. 相続対策は税金を減らすことだけが目的ではない


相続税を減らすために不動産を購入する、財産を早めに贈与するといった方法が話題になることがあります。もちろん税務上の効果を検討することは重要ですが、税金が減る方法が家族にとって適切とは限りません。


たとえば、賃貸不動産を購入して評価額が下がったとしても、家賃収入が減り、借入金返済や大規模修繕が続けば、引き継ぐ家族に大きな負担が残ることがあります。相続税は小さくても遺産分割がまとまらず、不動産を売却できないケースも考えられます。


「何を守りたいか」を先に決めましょう。自宅を残す、賃貸経営を続ける、子どもたちへの公平な財産配分を考える、配偶者の生活費を確保するなど、重視する目的によって選択肢は変わります。


視点

確認事項

財産分割

誰が何を取得するか、家族の希望と合うか

税金

財産評価と税負担、特例の要件

納税資金

いつ、誰が、どの資金で納税するか

承継後

不動産・事業・借入金を誰が管理するか





2. 最初に整理するのは「家族・財産・債務」


生前贈与や遺言書の作成を具体的に進める前に、まず現在の状況を把握します。完璧な書類が初めからそろっている必要はありません。分かっていることと、調べる必要があることを分けるだけでも、次の行動が明確になります。


2-1. 誰が相続人になるのか


配偶者や子どもなどの家族関係を確認し、法定相続人を整理します。前婚の子、養子、先に亡くなった子の子などが関係する場合もあります。法定相続分と実際の取得割合は同じとは限らず、遺言や遺産分割協議、遺留分についての法的な検討が必要になるケースもあります。


2-2. 預貯金だけでなく不動産や保険も一覧にする


預貯金、株式、投資信託、生命保険、土地建物、貸付金、会社の株式などを一覧にします。不動産は所在地、用途、名義、担保、賃貸借関係も整理します。過去に贈与した財産や、家族名義の預金の原資・管理状況も確認しておくと、相続税の試算や財産分割に役立ちます。


2-3. 借入金や保証も把握する


住宅ローン、アパートローン、事業借入、未払金、個人保証などを整理します。債務が存在することと、相続税の計算で控除できることは別の問題です。債務の性質や負担者など、税務上の要件を確認する必要があります。


2-4. 「受け取る側」の意向を確認する


親は「長男に実家を守ってほしい」と考えていても、長男は遠方に住み、管理する意思がないかもしれません。不動産や事業は取得後にも費用や責任が生じます。所有させたい財産と、引き継ぐ本人が管理できる財産が一致するかを確認しましょう。





3. 相続税の概算と分割案の試算は分ける


相続税を検討する際は、まず財産と債務を把握し、税務上の評価を行います。相続税の基礎控除は原則として、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。正味の遺産額が基礎控除を超えるかどうかが、最初の目安になります。


ただし、相続税評価額と実際の売却価格は異なります。土地には路線価方式や倍率方式などがあり、賃貸不動産の利用状況によって評価が変わる場合があります。非上場株式も、会社規模や株主区分等に応じた評価を検討します。


最初の試算では、相続税の対象財産と概算税額を把握します。次に、誰がどの財産を取得するかによって税負担がどう変わるかを比較します。配偶者の税額軽減を利用する場合には、一次相続だけでなく、配偶者が亡くなった後の二次相続も考えることが重要です。


小規模宅地等の特例は、土地の種類や取得者、相続後の利用状況などの要件に左右されます。自宅を相続すれば必ず80%の評価減を受けられる、アパートを持っていれば必ず50%の減額を受けられる、と決めつけることはできません。


また、適用する特例によっては、納税額がゼロでも相続税申告が必要となる場合があります。納税がないことと申告が不要なことを混同しないようにしましょう。





4. 遺産分割は公平感と管理できることを両立させる


預貯金は比較的分けやすい財産ですが、自宅や賃貸アパートは単純に均等に分けられません。子どもが2人いて、実家と賃貸アパートが主な財産だとします。評価額を半分にそろえても、アパートを取得する人が借入返済や修繕費を負担するのであれば、実際の負担は同じではありません。


財産そのものを分ける現物分割、不動産を取得する人が他の相続人に金銭を支払う代償分割、売却して代金を分ける換価分割などを比較することができます。


共有名義にすれば一見公平に感じるかもしれませんが、将来の売却、建替え、次の相続で意思決定が複雑になる可能性があります。共有を選ぶときには管理方法や費用負担も確認しましょう。


遺言書を作成する場合は、財産の特定方法、遺留分などを法律の専門家と確認します。税額が小さい分け方と、家族が無理なく維持できる分け方が異なる場合、何を優先するかが重要です。





5. 納税資金は「相続人ごと」に確認する


相続税は原則として金銭での納付が基本です。財産が多くても、預貯金が少ない場合には納税資金が不足する可能性があります。


特に地主や不動産オーナーでは、相続財産の大部分が土地建物で、現金化しにくいケースがあります。物件を売却するにしても、いつ、いくらで売れるかは確実ではありません。借入返済、固定資産税、管理費、修繕費などを考慮する必要があります。


相続税の概算額を出したら、財産を取得する相続人ごとに、現預金・保険金・売却できる財産がどれだけあるかを確認します。生命保険の税務上の取扱いは、保険料負担者、被保険者、受取人の関係などによって異なるため、契約内容を確認することが必要です。


納税資金の不足が見込まれる場合には、不動産整理や金融機関への相談を早めに検討します。延納や物納は要件のある制度であり、必ず認められる前提で計画するのは避けましょう。


◇ 納税資金のチェック項目


☐ 相続人ごとに概算納税額を試算した


☐ 現預金、保険金、売却可能な資産を把握した


☐ 借入返済や修繕費、生活資金も考慮した


☐ 不足資金の確保方法と時期を確認した





6. 不動産・事業を引き継ぐなら相続後も考える


賃貸不動産を引き継ぐ場合、相続税の申告が終わっても家賃管理、入居者対応、管理会社との連絡、修繕、借入返済などが続きます。物件ごとの収入と支出、築年数、修繕履歴、借入残高を整理し、誰が管理するかを検討しましょう。


不動産は相続税評価額が低いからといって、ずっと保有することが合理的とは限りません。賃貸需要、維持費、将来の売却可能性も判断材料です。


会社を経営している方の場合は、株式の所有を引き継ぐことと、会社の経営を引き継ぐことを分けて整理します。後継者の意思、他の相続人への財産配分、会社の借入金や個人保証も確認する必要があります。


◇ 税務と登記では期限が異なる


相続税の申告・納税は、原則として死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。一方、相続登記は原則として不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。遺産分割が成立した場合の追加的な登記義務にも注意が必要です。


亡くなった方が事業や賃貸経営を行っていた場合には、準確定申告や、引き継ぐ方の所得税・消費税の手続なども関係することがあります。名義変更だけでなく、税務・契約・金融機関の引継ぎまで確認しましょう。





7. 専門家・金融機関に相談するタイミング


相続には税務、法務、登記、金融、不動産などの問題が関係します。すべてを一人の専門家で完結できるとは限りません。


相談先

役割

相談の時期

税理士

相続税試算・財産評価・申告・贈与

生前の現状整理から

公認会計士・財務専門家

財務分析、会社・事業の資金計画

事業承継を伴うなら早め

弁護士

遺言、遺産分割、遺留分、紛争

法的課題が見えた段階から

司法書士

相続登記等の登記手続

分割方針を考える段階から

金融機関

借入・担保・保証、資金調達

資金問題がある場合は早め

不動産専門家

賃貸管理、売却、価格・修繕

不動産の承継案を決める前


例えば、不動産を一人に引き継がせる案を考える場合、税負担だけでなく、遺産分割の法律上の問題、登記、借入金の取扱いを検討する必要があります。必要な専門家が同じ財産一覧や方針を共有することは、手戻りの防止に役立ちます。





8. 具体例|土地とアパートのある家庭の5ステップ


架空の家庭を例に考えてみましょう。父親は80代で、母親と子ども2人がいます。父親名義の自宅と賃貸アパートがあり、アパートには借入金が残っています。長男は比較的近くに住んでいますが、長女は遠方で物件管理には不安があります。


父親は「2人に公平に財産を残したい」と考えています。ただし、アパートを管理する人と借入返済を負担する人、納税資金を準備する人は、同じとは限りません。



STEP 01 │ 家族の希望を共有する


誰が実家を使うのか、誰が賃貸経営を続けられるのかを確認します。「公平」を金額で考えるのか、将来の負担も含めて考えるのか話し合います。



STEP 02 │ 財産と債務を一覧化する


不動産の登記、賃貸借契約、借入残高、預貯金、保険、過去の贈与を整理します。アパートの修繕予定も確認します。



STEP 03 │ 分割案と納税資金を試算する


長男がアパートを引き継ぐ案、不動産を一部売却して現金を分ける案などを比較します。評価額と税額だけでなく、管理の負担や手元資金も考慮します。



STEP 04 │ 専門家と担当・期限を決める


税理士による試算、必要に応じた弁護士への遺言・遺留分相談、司法書士への登記相談、金融機関との借入協議などを整理します。



STEP 05 │ 実行し定期的に見直す


遺言書の検討や資金の準備などを進めます。家族の状況、資産の内容、法令等が変わった際は、計画を更新します。


相続対策の実行を5段階で整理した図解

検討事項

主な資料

次の行動

家族と分割

家族関係、希望、遺言書

分割案を整理

財産・債務

財産一覧、登記、借入明細

不明点を調査

税額

財産評価資料

複数案を試算

納税資金

預金、保険、売却候補

資金不足を確認

管理

賃貸借契約、修繕履歴

承継後の管理者を決める





9. まとめ|相続対策の実行チェックリスト


相続対策の第一歩は、贈与や不動産購入を急ぐことではありません。家族の希望を確認し、財産・債務の全体像を把握し、分割・税務・納税資金を一緒に考えることです。


☐ 法定相続人と家族の希望を確認した


☐ 財産・借入金・保証を一覧にした


☐ 相続税の概算と適用する特例を確認した


☐ 不動産の分け方と管理方法を考えた


☐ 相続人ごとの納税資金を確認した


☐ 専門家・金融機関への相談時期を決めた


☐ 実行する人・期限・見直し時期を決めた


評価・分割・納税資金・相続後の運営まで、一つの計画として考える。 そのことが家族と財産を守る相続対策につながります。





▍ アポロ税理士法人の考え方


相続では、税額を小さくすることが唯一の正解ではありません。ご家族の生活、不動産や事業の維持、納税資金まで含めた判断を大切にしています。


アポロ税理士法人では、税務・会計の視点から相続税の申告や生前の試算、不動産を含む対策の課題整理に取り組んでいます。






監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

[詳しいプロフィールを見る →]



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全記事の目次:第1回|相続の全体像


最終回です。シリーズの最初に戻りたい方は第1回をご覧ください。



▍ 参考情報



※本記事は2026年10月時点の一般的な制度を説明しています。個別の適用要件や期限は最新の法令・公的情報を確認してください。




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