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不動産を買うとなぜ相続税が下がる?

  • 2025年9月14日
  • 読了時間: 11分

更新日:6月16日



1. 不動産で相続税が抑えられる理由

  • 相続税評価額と市場価格(時価)のギャップがある

     相続税を計算する際、不動産は実際の売買価格そのものではなく、相続税法上の評価方法に基づいて評価されます。土地は、「路線価方式」または「倍率方式」により評価され、建物は原則として「固定資産税評価額」を基準に評価されます。

     そのため、不動産の相続税評価額は、市場価格より低く算出されることがあります。たとえば、時価1億円の不動産であっても、相続税評価額は8,000万円になるケースもあります。同じ1億円の財産であっても、現金で保有している場合と不動産として保有している場合とでは、相続税の課税対象となる評価額が変わることがあるのです。

     さらに、賃貸用不動産、たとえばアパート・マンション・貸家などであれば、土地については「貸家建付地」として評価額が減額される場合があります。また、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」の適用により、評価額をさらに引き下げられる可能性もあります。建物についても、貸家として賃貸されている場合には、借家権割合や賃貸割合を反映した評価減が行われるため、自用の建物よりも相続税評価額が低くなる場合があります。


  • 借入金は相続財産から控除できる

     相続税は、基本的に「プラスの財産」から「マイナスの財産」を差し引いた純資産に対して課税されます。具体的には、不動産・預貯金・株式などの財産を評価したうえで、そこから借入金や未払金などの債務を差し引いて、相続税の課税対象となる金額を計算します。

     このため、現金2億円をそのまま保有して相続を迎える場合と比べて、時価2億円(相続税評価額1.5億円)の不動産を、借入2億円で購入していた場合には、相続税の課税対象は「現金2億円+不動産1.5億円-借入金2億円=純資産1.5億円」となります。

     つまり、現金2億円をそのまま保有している場合と比較すると、手元資金を維持しながら、相続税評価上の財産額を5,000万円圧縮できる可能性があります。



2. 評価の流れを解説

 相続税の流れを図示すると以下のようになります。

相続税計算の全体像
相続税計算の全体像

相続計算の全体像は、

① 法定相続人把握

② 資産負債の把握/評価

③ 税額の算出

が基本となります。


ここでは②の資産負債の把握/評価に絞って、要点だけを解説していきます。



2-1.相続税評価額の算定

2-1-1.土地(宅地)の評価

① 貸家建付地の評価

 自身が所有する賃貸用不動産の土地は「貸家建付地」として評価し、相続税評価額は次の式で求めます。

自用地価額 ×〔1 −(借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

 自用地価額は、所有者が自由に利用できる前提の土地の価額で、実務上は路線価方式等(敷地面積 × 路線価 × 各種補正率 × 持分割合)で算定します。

 一方、アパート等で入居者が居住している土地は、借家権の存在により立退き請求・取り壊し・用途変更に制約がかかります。相続税評価では、この利用制限(=換金性の低下)を上式のとおり機械的に減額して反映します。

 目安として、住宅街の賃貸物件では借地権割合が60~70%となる地域が多く、借家権割合30%・賃貸割合100%とすると、減額率は約18~21%(=0.6×0.3~0.7×0.3)となり、自用地価額からおおむね20%前後の評価減になるケースが一般的です。※地域の割合や賃貸割合によって変動します。


土地の時価と相続税評価額
  • 自用地価額:その土地を自分で自由に使えると仮定したときの価額(路線価方式等で計算)。

  • 借地権割合:エリアごとの地価に占める借地権の割合(路線価図に表示※1)

  • 借家権割合:第三者(入居者)の占有権割合(原則全国一律30%)。

  • 賃貸割合:敷地のうち、実際に賃貸建物の用に供されている部分の割合(全部貸していれば100%(※2)、自宅+賃貸の混在なら延床面積比など合理的な方法で按分)。



※1:借地権割合は都心商業地ほどA・Bが多く、郊外ほどE〜Gが増える傾向があります。

(注:以下はあくまでもイメージとなりますので保有物件の路線価は最新の路線価図or倍率表で個別にご確認ください)

記号

借地権割合

代表的な傾向(目安)

A

90%

大都市の都心一等地の商業地など(例:都心の主要幹線沿い)。

B

80%

都市中枢・高集積の商業地、駅前一等地など。

C

70%

都心近接の商業地・繁華街、主要ターミナル周辺の一部住宅地。

D

60%

都市の一般的な住宅地や準商業地。

E

50%

郊外の住宅地、地方中核都市の標準的エリア。

F

40%

地方都市の周辺部・密度が低い住宅地。

G

30%

郊外・農村部など、収益性・転用自由度が相対的に低い地域。

※2:賃貸割合は、入居中の“住戸数の割合”ではなく、賃貸に供している独立部分の床面積合計を分子、独立部分の床面積合計を分母とする「床面積比」で算出します。満室であれば賃貸割合は100%です。

 賃貸割合は、賃貸物件として他人に貸している住戸の戸数ではなく専有部分の床面積で算出します。具体的な計算式は、次の通りです。

賃貸割合

 賃貸割合は、相続が開始されたときの状況で計算されます。ただし、賃貸マンションや賃貸アパートの場合、次の事実関係がそろっていれば、空室部分の床面積も賃貸割合の分子に含められます。


  • 課税時期の前に継続して賃貸されていた独立部分であること。

  • 退去後速やかに募集を開始し、空室期間中は他用途で使用していないこと。

  • 空室期間が課税時期の前後で例えば1か月程度

  • の一時的期間であること。

    「1か月」は目安で、厳密な日数基準ではありません(全体事情で判断)。2~3か月空いていたとしても、募集の開始時期・活動状況・賃料設定・成約までの経緯などの説明資料をしっかり残しておけば、認められる余地は十分あると考えます。

  • 課税時期後も、一時的でない賃貸が継続していること。


「一時的空室」の説明のために、以下の資料を残しておくと良いでしょう。

  • 募集開始の記録:募集依頼書・レインズ/ポータル掲載履歴・チラシ入稿日・画像の保存(スクリーンショット)。

  • 空室期間の管理記録:入退去日、内覧履歴、申込書・審査記録、成約日。

  • “他用途なし”の証跡:短期貸し・民泊・倉庫利用等をしていない誓約/管理会社メモ。

  • 課税時期後の継続賃貸:賃貸借契約書(開始日・期間)、賃料入金記録。



②小規模宅地の特例(貸付事業用宅地等

 一定の要件を満たす宅地については評価額を大幅に減額できます。事業や居住の継続を守るための制度で、対象ごとに上限面積と減額割合が決まっています。

 賃貸用不動産の土地(貸付事業用宅地等)の場合、最大200まで評価額が50%減額できます。

 例えば、200㎡の土地の上に貸アパート1棟があり、土地部分の相続税評価額(貸家建付地として評価後)が6,000万円としましょう。貸付事業用宅地等に該当すれば、土地部分の評価額が3,000万円まで減額され、結果として相続税の支払を抑えることができます。


基本要件

 賃貸アパートの土地に「小規模宅地等の特例」を適用させるためには、以下の要件を満たす必要があります。

貸付事業用宅地の要件

上記の要点をまとめると以下となります。

1.相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること
2.その宅地を相続税の申告期限まで保有し続けること
3.相続開始前3年以内に貸付事業の用に供されたものでないこと

ただし、「3.」の要件については例外も認められており、「事業的規模(5棟10室基準)」で貸付事業を行っていた場合などであれば、3年以内に貸付事業の用に供されたものでも、本特例の適用が可能です。


2-1-2.建物(家屋)の評価

 賃貸用不動産の建物(家屋)の相続税評価額は次の式で求めます。

固定資産税評価額 ×〔1 −(借家権割合 × 賃貸割合)〕

 借家権割合は全国一律30%なので、賃貸用不動産の場合は、自己利用に比べて評価額が約30%減額されることになります。賃貸割合については先述した内容と同じです。


 なお、建物(家屋)の評価額は土地のように市場価格の一定割合で捉えることは困難です。なぜならば、固定資産税評価額の作りがコスト型(再建築価格×経年減点補正)のため、市場の収益性を直接は反映しないからです。したがって、築年数・状態・稼働・地域の利回りで、固定資産税評価額と“家屋の市場価値”の関係は大きく変わります。


 ただし、ざっくりとした傾向(目安)をあげると以下のようになります。

  1. 築浅・稼働良好・低利回りエリア

    • 収益力が高く、家屋の市場価値(寄与)が厚くなりやすい

      市場価値 ≧ 固定資産税評価額 になりやすい

      なお、新築当初は請負工事金額の50~60%程度の価格で評価されるのが一般的です。

  2. 築古×未修繕・建替え前提・機能的陳腐化

    • 取引では“ほぼ土地値”(家屋は解体前提)

      市場価値(家屋)≦ 0 に近い一方、評価は残存率(20%)で下げ止まり

      固定資産税評価額 > 市場価値 になりやすい

  3. 中築・適切に修繕済み

    • 双方が近づきやすいが、評価のタイムラグで差が出ることも



3. ケーススタディ:実際に賃貸用不動産を購入したらどれくらい差が出る?

  • 前提

    ・物件購入前の保有資産は現金1億円、負債はゼロ

    ・市場価格1億円(土地5,000万円、建物5,000万円)の賃貸用不動産を購入

    ・土地路線価4,000万円、建物固定資産税評価額は3,000万円

    ・借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%、入居率は100%

    ・購入資金のうち8,000万円はローン、2000万円は自己資金

    ・敷地面積は100㎡


  • 概算評価

購入直前

純資産:1億円
 1.資産:現金 1億円

 2.負債:なし

購入後の資産・負債(時点:購入直後を想定)

純資産:3,740万円
 1.資産:1億1,740万円

▶ 現金:8,000万円(頭金2,000万円を支払済み)

▶ 土地の相続税評価額(貸家建付地+小規模宅地適用後):1,640万円
 ・貸家建付地の評価
  4,000万 ×(1 − 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合100%)
 =4,000万 × (1 − 0.18) = 3,280万円

 ・小規模宅地の特例
   貸家建付地評価額 × 50%
   =3,280万円 × 50%
   =1,640万円

▶ 建物の相続税評価額(貸家):2,100万円
  3,000万 ×〔1 − 借家権割合30% × 賃貸割合100%〕
 =3,000万 × 0.7 = 2,100万円

2.負債:8,000万円
 借入金元本:8,000万円

純資産差額:

購入前1億円 → 購入後3,740万円(差額▲6,260万円)

(※小規模宅地の特例を使わない場合の純資産は5,380万円(差額▲4,620万円))

相続対策前後

 このように、「不動産」と「借入金」を活用することによって、相続税の計算基礎である純資産を圧縮することが可能となり、相続税を抑えることができます。

 ただ、相続税の圧縮だけを目的にした取得や過度に相続税を圧縮するスキームの場合、税務否認リスクや保有期間中のキャッシュフローがマイナスになる可能性が高いので絶対に避けるべきです。あくまでも「この不動産は自身の資産形成に役立つか?」という目的を基本として購入することが大切で、相続税の圧縮効果は副産物的なものと考えると安全です。



4. 突然の否認!-財産評価基本通達6項(総則6)って何?〔裁判例〕

 上述したように、賃貸用不動産の取得により、結果として相続税負担が軽くなる場合があります。

 ただし、財産評価基本通達6項(以下、総則6項)は、通達どおりの評価が「著しく不適当」となる例外的なケースでは、国税庁長官の指示により通達によらない評価(=適正な時価評価)を行いうると定めています。したがって、形式的に路線価等を当てはめただけで著しく不当な評価となる事情が認められると、時価ベースの評価(※実務上は不動産鑑定評価書や実際の売買価額等の客観資料を参酌)に引き直されるリスクがあります。

1.近い将来の相続を見越し、被相続人と相続人らが借入れによる賃貸不動産の取得を企画・実行した。(節税意図の存在)
2.その結果、通達評価では課税価格が約2,826万円にとどまり基礎控除により相続税額が0円となる一方、取引前の状況では課税価格は6億円超であった。(極端な相続税圧縮)

 という事情の下では、通達による評価額を上回る価額で評価しても租税法上の平等原則に反しないと判示しました。


 もっとも、単に「節税目的で購入した」こと自体は直ちに総則6項の適用要件ではありません。 判断の軸は「通達評価が著しく不適当かどうか」であり、その具体的事情(短期での転売・恣意的な資産区分・実態の伴わない賃貸関係の付け替え等)が総合的に検討されます。総則6項は例外・補充的規定で、適用には相応の根拠づけが必要なのです。近時の裁判例でも、国側の総則6項適用が否認された事案が報じられており、適用には厳格な審査が伴っています。


 なお、分譲マンション(居住用の区分所有財産)については、令和6年1月1日以後取得分から新たな補正率制度が導入され、従来指摘されてきた評価乖離を通達内で補正する枠組みが整備されています(いわゆる“タワマン節税”対応)。

 


5. まとめ

  • 土地(宅地)

    ①路線価をベースに形状・間口・奥行等で補正。

    ②賃貸用不動産なら貸家建付地の減額補正。

    ③一定要件を満たせば小規模宅地の特例で200㎡まで50%減額。


  • 建物(家屋)

    ①固定資産税評価額をベースに評価(時価、帳簿価格は無関係)。

    ②賃貸用不動産なら貸家の減額補正。


  • 借入金

    ①購入資金のローンは負債控除。

    ②条件次第では手元資金の確保+純資産圧縮により、相続面で合理性が高まる。


  • 総則6項(特別な見直しルール)

    通達評価と実勢の極端な乖離、節税企図を裏づける事情等が重なると、通達を超える評価が適用されるリスクがある。


 不動産は、相続税評価と市場価格の乖離(評価差)に加え、借入金等の負債控除を組み合わせやすいことから、課税価格を抑制しやすい資産です。

 もっとも、節税は目的ではなく資産形成を加速するための手段にすぎません。収益性・資金繰り・保全性の観点から優良物件を選定し、適切に運用して不動産所得を着実に積み上げられるのであれば、相続対策としての合理性は高まります。

 取得・運用にあたっては、投資の目的(キャッシュフローの拡大、資産価値の維持・向上、相続時の資産構成の最適化)を明確にし、その実態と整合するスキームを構築することが大切です。


 当ファームではアポロ税理士法人が税務のサポートを、ファルコン株式会社では投資意思決定のコンサルティングを提供しています。セカンドオピニオンでのご利用も歓迎です。顧問税理士がいてもまったく問題ありません。不動産にかかる疑問がございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。



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