【相続の実践ガイド 第5回】相続財産はどう調べる?預貯金・名義預金・生命保険・債務の探し方
更新日:6 日前
相続税申告で最初の難所になりやすいのが、財産の全体像を把握することです。親が使っていた銀行や証券会社を知らない、昔の保険契約が見つからない、実家以外にも土地があるかもしれない、という相談は珍しくありません。
相続税の対象財産は通帳や登記だけで把握できるとは限りません。名義預金、貸付金、生前贈与、債務も含めた確認方法を整理します。

▍ この記事の要点|1分で理解する
相続財産はどう調べる?預貯金・名義預金・生命保険・債務の探し方
▍ 目次
02 制度や財産の仕組み ›
04 間違えやすいポイント ›
09 よくある質問・まとめ ›
1. 結論|相続財産はどう調べる?預貯金・名義預金・生命保険・債務の探し方
預貯金については、被相続人が利用していた銀行やネット銀行を洗い出し、死亡日時点の残高証明書、必要に応じて取引履歴を取得します。証券会社では口座の有無、上場株式、投資信託、外国株式等を確認します。
口座が不明な場合には、郵便物、メール、スマートフォンのアプリ、金融機関との取引書類、確定申告書などが手掛かりになることがあります。相続人が手続できる資料や方法は金融機関ごとに異なります。
2. 制度や財産の仕組み
生命保険は、死亡保険金だけでなく保険料負担者や受取人の関係を確認します。死亡保険金の課税関係や非課税枠の判定には契約内容が重要です。保険契約者が被相続人でなくても、保険料負担に応じて検討が必要になることがあります。
家族名義の預金でも、資金の出所、管理、贈与の実態により相続税の対象かどうかの判断が必要なことがあります。単に通帳名義が子どもだから相続税と無関係と決めることはできません。
3. 具体的な比較と判断方法
不動産は固定資産税課税明細、登記事項証明書、名寄帳等から所有状況を確認します。自宅以外の土地や持分、共有物件などが見落とされる場合があるため、納税通知書の記載を丁寧に読みます。
債務は借入契約、住宅ローン・アパートローンの残高証明、未払費用などを確認します。相続財産から控除できる債務かどうかは、実際に存在していた債務の性質等によって判断します。
財産・債務 | 調べる資料 | 注意点 |
|---|---|---|
預貯金・証券 | 残高証明・取引履歴 | 名義と実態 |
不動産 | 登記・名寄帳・税明細 | 共有持分・貸地 |
保険・借入 | 保険金通知・契約・残高 | 保険料負担・債務の帰属 |
4. 間違えやすいポイント
生前贈与をしたつもりの預金でも、子どもがその存在を知らず、親が通帳や印鑑を管理していた場合には、実態について確認が必要になります。贈与契約書があるかどうかだけで結論が決まるものではありません。
相続開始前の現金引出しが大きい場合には、その使途を確認することがあります。医療費、生活費、介護費用などの領収書や記録を残しておくことが、財産の帰属の説明に役立ちます。
5. 事例|亡くなった父の金融口座が分からない
父の遺品から銀行通帳は見つかりましたが、ネット証券の取引履歴が分からず、過去には家族への送金もありました。自宅以外の土地を所有していた可能性もあります。
遺品、郵便物、確定申告書、金融機関の通知を確認し、金融機関・証券会社に相続手続の資料を問い合わせます。同時に固定資産税明細や名寄帳を確認して、不動産を把握します。相続税の申告期限を考え、調査担当者と依頼日を記録することが重要です。
6. 実際の進め方|5つのステップ

STEP 01 │ 財産の種類を洗い出す
銀行・証券・保険・不動産・貸付金・債務を分類する。
STEP 02 │ 手掛かりを集める
通帳、メール、通知、確定申告書を確認する。
STEP 03 │ 必要な証明書を取得
金融機関、登記・名寄帳、保険会社の資料を集める。
STEP 04 │ 名義と実態を点検
家族預金、贈与、借入・立替等を整理する。
STEP 05 │ 一覧表と証憑を保管
相続税試算・分割協議・納税準備に利用する。
7. 確認資料とチェックリスト
以下の確認事項は、財産一覧や資料依頼リストに転記して、提出済み・未確認・相談中の状態を管理すると使いやすくなります。
□ 利用していた金融機関を一覧化
□ 残高証明・取引履歴を必要に応じ取得
□ 登記・名寄帳等で不動産を確認
□ 保険料負担者・受取人を確認
□ 債務・贈与・名義預金を確認
8. 相談する専門家とタイミング
財産調査の進め方は、税理士に相談すると資料の優先順位を整理しやすくなります。戸籍や法律上の取得権限、相続人間での情報共有に争いがある場合には、弁護士等の法律専門家が必要になることがあります。
不動産の所有関係は登記・固定資産税資料を、借入金は金融機関の契約・残高資料を基に確認します。相続人同士が別々に資料を持っている場合は、情報を一か所へ集約することで漏れを防ぎます。
税務・法律・登記・金融機関への対応は、それぞれの専門分野で確認が必要です。相談先に同じ資料と方針を共有し、情報の行き違いを減らしましょう。
9. よくある質問・まとめ
Q. 通帳が見つからなければ預金は調べられませんか?
A.金融機関が分かれば相続人として残高証明等を取得できる場合があります。必要書類や方法を確認しましょう。
Q. 名義が子どもの預金は調べなくてよいですか?
A.資金の出所や贈与の成立・管理実態によって確認が必要な場合があります。名義だけで判断しません。
まとめ: 財産調査では、名義と実態を区別し、金融資産・不動産・保険・債務・過去の贈与を一つの一覧にまとめます。
▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ
実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。
CASE 01 │ ネット銀行・証券の口座が不明な場合
紙の通帳が残っていないネット銀行や証券会社では、家族が口座の存在を知らないことがあります。メールや郵便物、確定申告書に記載された配当や譲渡所得の情報、スマートフォンのアプリなどから利用先を把握することが手掛かりになります。必要に応じて金融機関へ相続人としての手続を確認し、死亡日時点の残高や保有銘柄を取得します。金融機関ごとに必要資料と取得日を一覧で管理しましょう。
CASE 02 │ 家族名義で親が管理していた口座
子どもの名義になっている預金でも、親が資金を拠出し通帳や印鑑を管理していた場合、実際に誰の財産だったのかが論点になることがあります。贈与契約書の有無だけで判断せず、贈与の意思、受贈者の承諾、財産の管理、資金の使途などを資料で確認することが重要です。単純に子ども名義として相続財産一覧から除外すると、後で申告内容の訂正が必要になる可能性があります。
CASE 03 │ 親が会社へ資金を貸していた場合
会社経営者の相続では、被相続人が会社に貸し付けていた役員貸付金等が、相続財産の調査対象になることがあります。会社の決算書に負債として計上されている金額と、個人が保有する貸付債権の関係を整理します。返済の見込みや税務上の評価に論点がある場合もあります。また、会社の借入に対する個人保証とは別のものなので、貸付金と保証契約を区別して確認しましょう。
こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。
▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント
01 │ 金融機関の資料を一つずつ整理する
通帳が見つかった銀行については残高証明書を依頼し、必要に応じて過去の取引履歴も確認します。ネット銀行や証券会社は郵送物が少ないため、メール、スマートフォンアプリ、確定申告書などが手掛かりになることがあります。被相続人が利用していた金融機関がすべて分からない場合でも、家族で担当を分けて調査し、取得した資料を共通の一覧に整理すると漏れを防ぎやすくなります。
02 │ 名義預金は誰のお金だったかを確認する
家族名義の口座に入っている預金について、通帳名義だけで相続税の対象外と決めることはできません。親から渡された資金が実際に贈与され、受贈者自身で管理されていたかを確認する必要があります。印鑑・通帳の管理や資金の使い方、贈与契約書、贈与税申告等の記録が参考になります。形式的な契約書があっても、実態が伴っているかを丁寧に整理しましょう。
03 │ 保険の契約関係を確認する
死亡保険金には、被相続人が保険料を負担していたかどうかなどにより税務上の取扱いが変わるものがあります。保険金の受取人が誰か、保険料を実際に誰が負担したか、解約返戻金のある契約かなどを確認します。生命保険会社の支払通知や保険証券を整理して、みなし相続財産や非課税枠の対象となるかを検討することが重要です。
04 │ 不動産は固定資産税明細だけで終わらない
固定資産税の課税明細書は不動産を見つける手掛かりになりますが、所有するすべての土地建物が載っているとは限りません。市区町村ごとの名寄帳、登記、共有持分、相続登記が未了の古い不動産なども調査する必要がある場合があります。地番と住所表示が異なることもあるため、登記情報と現況を照らし合わせましょう。
05 │ 貸付金や借入金を見落とさない
親が会社へ貸し付けていた資金や、家族に貸したお金がある場合、相続財産に含まれることがあります。一方、相続開始時の借入金や未払金が相続税の債務控除の対象になるかは、負担の確実性や債務の性質を確認する必要があります。会社の決算書や借用書、返済履歴を調べて、名義と実態にずれがないかを整理します。
06 │ 資金移動の説明資料を残す
相続開始前に多額の引出しや家族への送金がある場合、何に使ったお金かを確認する必要があります。医療費や介護費、葬儀準備、生活費等の領収書を保管し、資金の動きと照合できる状態にします。過去の贈与や名義預金を整理した記録は、相続税申告だけでなく、相続人間での財産の説明にも役立ちます。
▍ アポロ税理士法人の考え方
税金だけで決めず、財産を引き継ぐ家族の希望、納税資金、不動産・事業の管理を横断して検討することを大切にしています。税務・会計を起点に、法律、登記、金融機関など各分野の専門家とも連携して課題を整理します。

監修者
月方 智彦
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。
専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継
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