【相続の実践ガイド 第3回】相続税はいくらからかかる?基礎控除と申告要否をわかりやすく解説
更新日:6 日前
『うちは資産家ではないから相続税は関係ない』と思っていても、実家の土地や預貯金、保険金の合計で基礎控除を超える場合があります。一方、遺産の額が大きく見えても、借入金などを確認すると課税対象となる正味の遺産額が異なる場合があります。
本記事では、相続税の基礎控除額の計算方法と、財産の数え方、税額がゼロでも申告が必要なケースを整理します。

▍ この記事の要点|1分で理解する
相続税はいくらからかかる?基礎控除と申告要否をわかりやすく解説
▍ 目次
02 制度や財産の仕組み ›
04 間違えやすいポイント ›
09 よくある質問・まとめ ›
1. 結論|相続税はいくらからかかる?基礎控除と申告要否をわかりやすく解説
相続税の基礎控除額は原則として3,000万円+600万円×法定相続人の数です。配偶者と子ども2人が相続人なら4,800万円、子ども1人なら3,600万円が目安です。
ただし、基礎控除と比較するのは預金や不動産の見た目の合計ではなく、相続税の課税価格を集計した正味の遺産額です。債務控除、死亡保険金や一定の生前贈与の取扱いなども確認します。
2. 制度や財産の仕組み
相続税の対象となる財産には、土地建物、預貯金、株式、投資信託、一定の生命保険金や死亡退職金などがあります。財産の名義と実態が異なる場合、名義預金などの問題もあります。
相続時精算課税を適用した贈与財産や、一定期間内の暦年課税による贈与財産が相続税計算に関係する場合もあります。『亡くなった日の財産だけ』という理解では不足することがあります。
3. 具体的な比較と判断方法
たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人なら基礎控除は4,800万円です。預金3,000万円と自宅の相続税評価額2,500万円があり、控除できる債務等が500万円なら単純化した正味遺産額は5,000万円となります。基礎控除を超える部分があるため、相続税の検討が必要です。
ここに適用可能な小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が関係する場合は、最終税額と申告要否が変わることがあります。概算額がゼロでも申告が必要な制度があることに注意します。
法定相続人の数 | 基礎控除額 | 確認すること |
|---|---|---|
1人 | 3,600万円 | 財産と債務の一覧 |
2人 | 4,200万円 | 保険金・贈与など |
3人 | 4,800万円 | 特例と申告要否 |
4人 | 5,400万円 | 取得者と納税資金 |
4. 間違えやすいポイント
土地の固定資産税評価額と相続税評価額、実際の売却価格は同じではありません。特に自宅や賃貸土地は、使っている人や相続する人によって、評価や特例の検討事項が変わります。
また、生命保険金の非課税限度額や相続人の数の扱いは条件があるため、単純に家族の人数を掛ければよいとは限りません。まず相続人と財産の範囲を確認しましょう。
5. 事例|自宅と預金を持つ家庭の基礎控除
亡くなった父には自宅と預金があり、母と子ども2人が相続人です。基礎控除額は4,800万円になります。相続税評価額を調べると、住宅地の評価が予想より高いことが分かりました。
まず相続財産、保険金、債務、過去の贈与を集計します。基礎控除を超える可能性があれば、申告要否と税額、利用できる特例を確認します。税額を少なくする前に、申告の必要性と納税資金を把握することが大切です。
6. 実際の進め方|5つのステップ

STEP 01 │ 相続人を確認
戸籍や家族関係から法定相続人を判定する。
STEP 02 │ 財産・債務を一覧化
金融資産、不動産、保険、借入等を集計する。
STEP 03 │ 基礎控除額を計算
3,000万円+600万円×法定相続人の数で求める。
STEP 04 │ 税額と特例を検討
小規模宅地等や配偶者の税額軽減を確認する。
STEP 05 │ 申告要否・期限を判断
税額の有無と申告義務を区別する。
7. 確認資料とチェックリスト
以下の確認事項は、財産一覧や資料依頼リストに転記して、提出済み・未確認・相談中の状態を管理すると使いやすくなります。
□ 法定相続人を正しく把握
□ 預金・保険・土地等を把握
□ 債務と生前贈与を確認
□ 基礎控除を正しく計算
□ 申告を要する特例を確認
8. 相談する専門家とタイミング
税理士に相談すると、財産を税務上どのように評価するか、基礎控除を超えるか、申告が必要かを整理しやすくなります。土地が多い場合は簡易試算と詳細評価を分けて考えることもできます。
相続税が発生する場合、税額の計算だけでなく遺産分割と納税資金の準備が必要です。問題が見えてからではなく、財産が基礎控除に近そうな段階で相談しておくことが役立ちます。
税務・法律・登記・金融機関への対応は、それぞれの専門分野で確認が必要です。相談先に同じ資料と方針を共有し、情報の行き違いを減らしましょう。
9. よくある質問・まとめ
Q. 基礎控除額以下なら必ず申告不要ですか?
A.財産の範囲や課税価格の確認が必要です。正しく集計して基礎控除以下で、申告を要する制度の適用がなければ通常は申告不要です。
Q. 相続税がゼロなら税理士への相談は不要ですか?
A.評価や財産範囲が不明な場合、概算の確認が役立つことがあります。特例適用によるゼロ税額なら申告要否に注意します。
まとめ: 相続税の判断は、基礎控除額だけでなく正味の課税価格、特例、申告要否を合わせて確認することが重要です。
▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ
実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。
CASE 01 │ 都市部の自宅だけで基礎控除を超える場合
預金がそれほど多くなくても、都市部の自宅敷地の相続税評価額が高いと、基礎控除額を超えることがあります。『自宅しかない』という言い方で申告不要とは判断できません。路線価や倍率を使った評価、建物の固定資産税評価額、保険金、債務などを集計し、相続人の数に応じた基礎控除と比較します。小規模宅地等の特例の適用可否は取得者・居住状況などを確認して別に判断します。
CASE 02 │ 賃貸不動産の借入残高が大きい場合
アパートの評価額が高くても多額の借入金が残っている場合、正味の遺産額は見た目の資産合計より小さくなることがあります。ただし、借入金が本当に被相続人の債務であるか、控除できる性質かなどを確認する必要があります。また、評価額だけでなく、相続人が引き継ぐ月々の返済負担や修繕費も重要です。課税価格の判断と、相続後の賃貸経営の判断は別々に整理しましょう。
CASE 03 │ 生前贈与を受けている家族がいる場合
相続前に子どもへ贈与していた現金は、贈与した日の時点で相続税と完全に切り離されるとは限りません。暦年課税の加算対象期間や相続時精算課税の適用状況によって、相続税の課税価格に関係する場合があります。贈与者、受贈者、日付、金額、制度選択の有無を一覧にし、死亡日時点の財産だけを足して判断しないことが重要です。年間110万円という数字だけで結論を出さないようにします。
こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。
▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント
01 │ 財産の評価方法によって課税価格は変わる
相続税がかかるかを判断する際、預金残高だけでなく土地や建物の評価が大きく影響します。土地は路線価方式や倍率方式など、税務上のルールで評価します。家の購入時の価格や不動産会社の査定額を、そのまま相続税の評価額として使うことはできません。賃貸されている不動産や形状に特徴のある土地では、契約や現況を確認したうえで計算が必要になる場合があります。
02 │ 基礎控除は法定相続人の数で決まる
相続税の基礎控除額は、原則として3,000万円に法定相続人1人当たり600万円を加えた金額です。配偶者と子ども2人なら4,800万円になります。ただし、養子がいる場合など相続税法上の人数に特別な扱いがあることもあります。法定相続人の数を把握せずに『家族が3人だから』と単純に計算すると誤る可能性があるため、戸籍などを確認することが出発点です。
03 │ 保険金を受け取った人と保険料負担者を確認する
死亡保険金は契約者・受取人・保険料負担者の関係に応じて、相続税、所得税、贈与税などの課税関係が異なります。被相続人が保険料を負担した死亡保険金には、一定の条件でみなし相続財産としての取扱いがあります。非課税限度額の判定にも相続人の範囲が関わります。保険金の額だけで結論を出さず、保険証券と払込状況を併せて確認しましょう。
04 │ 家族名義の預金や生前贈与を見落とさない
子ども名義の口座に親が長年お金を入れている場合、名義だけで相続税の対象外と決めることはできません。実際に贈与が成立していたか、誰が通帳を管理していたかなどを確認する必要があります。また、一定期間内の生前贈与は相続税の計算に加算される場合があります。『死亡日の財産だけを足せばよい』と考えず、資金の移動や過去の贈与記録も整理しておくことが大切です。
05 │ 税額がゼロでも申告が必要な場合がある
相続税の基礎控除以下であれば通常は申告不要となる場合が多い一方、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を利用した結果、税額がゼロになるケースでは申告が適用要件となることがあります。特例を使わない場合の課税価格と、特例を適用した後の税額を分けて考えましょう。納税額がないことだけを理由に申告要否を判断するのは避けたいところです。
06 │ 初回は概算でよいが重要財産は詳しく調べる
相続税がかかりそうか分からない段階では、まず財産一覧と法定相続人の数を使って概算を出す方法が役立ちます。一方、大きな土地や賃貸不動産、非上場株式など、税額への影響が大きい財産については、詳細な評価を行う必要があることもあります。最初からすべての資料が揃っていなくても、どの財産を精査すべきか判断するために、早い段階で税理士に相談しておくとよいでしょう。
▍ アポロ税理士法人の考え方
税金だけで決めず、財産を引き継ぐ家族の希望、納税資金、不動産・事業の管理を横断して検討することを大切にしています。税務・会計を起点に、法律、登記、金融機関など各分野の専門家とも連携して課題を整理します。

監修者
月方 智彦
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。
専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継
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