【相続の実践ガイド 第2回】誰が相続人になる?法定相続分・遺留分・家族構成ごとの違い
更新日:6 日前
相続の話し合いを始める前に、誰が法定相続人になるのかを確認することが重要です。配偶者や子どもだけでなく、親や兄弟姉妹が相続人になる場合もあり、前婚の子、養子、代襲相続など家族関係によって判断が変わります。
法定相続分は財産を必ずその割合で分けるという意味ではありません。本記事では、相続人の範囲と法定相続分、遺留分の基本を整理します。

▍ この記事の要点|1分で理解する
誰が相続人になる?法定相続分・遺留分・家族構成ごとの違い
▍ 目次
02 制度や財産の仕組み ›
04 間違えやすいポイント ›
09 よくある質問・まとめ ›
1. 結論|誰が相続人になる?法定相続分・遺留分・家族構成ごとの違い
配偶者は常に相続人になります。配偶者以外は、子ども等の直系卑属が第1順位、父母等の直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位です。先順位の相続人がいれば、後順位の人は原則として相続人になりません。
子どもが先に亡くなっている場合は、その子ども(被相続人の孫)などが代襲相続人になることがあります。兄弟姉妹の代襲相続は範囲が異なります。養子や前婚の子が関係する場合も、戸籍などを確認します。
2. 制度や財産の仕組み
配偶者と子どもが相続人なら、法定相続分は原則として配偶者2分の1、子ども全体で2分の1です。配偶者と父母等なら配偶者3分の2、父母等3分の1です。配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1となります。
ただし、遺言書や遺産分割協議によって実際の取得内容が変わる場合があります。法定相続分は権利関係を理解する基準であり、家族の事情を考慮した分割を一切認めないものではありません。
3. 具体的な比較と判断方法
遺留分は、一定の相続人に認められる最低限の権利に関する制度です。兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分の割合や請求の期限は、法定相続分とは異なる仕組みのため、遺言書を作る場合には法律上の確認が必要です。
財産の大部分が自宅や会社の株式の場合、後継者に集中させる遺言を作っても、遺留分に関する問題が起こり得ます。相続税の試算とともに、現金による調整可能性を考えておきたいところです。
相続人の組合せ | 配偶者 | その他の相続人 |
|---|---|---|
配偶者+子ども | 1/2 | 子ども全体で1/2 |
配偶者+父母等 | 2/3 | 父母等全体で1/3 |
配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹全体で1/4 |
4. 間違えやすいポイント
家族の誰かが『自分には相続権がないと思っていた』場合でも、戸籍を調べると相続人であることがあります。逆に親族として近しい関係でも、法定相続人に該当しない場合があります。
また、相続人の数は相続税の基礎控除や死亡保険金の非課税枠に関係します。法的な相続人の範囲と税務上の人数計算は条件によって異なる場合があるため、税務にも注意します。
5. 事例|前婚の子がいる父親の相続
父が再婚し、現在の妻と子ども1人、前婚の子ども1人がいるとします。財産は自宅と預金が中心で、現在の妻がその家に住み続けることを望んでいます。
戸籍で相続人を確認し、配偶者と子ども2人の法定相続分を整理します。そのうえで遺言の有無、遺留分、自宅の居住継続、預金の分配などを検討します。単に同居の有無だけで相続権を判断しないことが重要です。
6. 実際の進め方|5つのステップ

STEP 01 │ 戸籍で家族関係を確認
出生から死亡までの戸籍等を確認する。
STEP 02 │ 相続順位を判定
配偶者、子ども、直系尊属、兄弟姉妹の順序を整理する。
STEP 03 │ 法定相続分を計算
相続人の組合せに応じた割合を確認する。
STEP 04 │ 遺言・遺留分を確認
特定の人への集中が問題にならないか検討する。
STEP 05 │ 分割・税務を整理
財産の性質、納税資金、申告要否を確認する。
7. 確認資料とチェックリスト
以下の確認事項は、財産一覧や資料依頼リストに転記して、提出済み・未確認・相談中の状態を管理すると使いやすくなります。
□ 戸籍等で相続人を確認
□ 前婚の子や養子を確認
□ 代襲相続の有無を確認
□ 法定相続分と遺留分を区別
□ 遺言・分割と税務への影響を確認
8. 相談する専門家とタイミング
相続人の調査や遺留分、遺言書の効力など法律上の疑義がある場合には、弁護士等に相談します。相続税計算では、税理士が法定相続人の人数、基礎控除、2割加算などの税務上の判断を行います。
家族間で財産分割の希望が違う場合は、税額が小さくなる案を先に示すより、法的な権利と各人の希望を整理する方が適切なことがあります。
税務・法律・登記・金融機関への対応は、それぞれの専門分野で確認が必要です。相談先に同じ資料と方針を共有し、情報の行き違いを減らしましょう。
9. よくある質問・まとめ
Q. 法定相続分どおりに必ず分ける必要がありますか?
A.法定相続分は基準の一つです。遺言や協議などにより実際の取得は異なる場合があります。
Q. 兄弟姉妹にも遺留分はありますか?
A.兄弟姉妹には遺留分がありません。ただし相続人になる場合はあります。
まとめ: 相続人の範囲を戸籍で確認し、法定相続分・遺留分・実際の分割案をそれぞれ区別して考えましょう。
▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ
実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。
CASE 01 │ 前婚の子がいる場合
父の死亡後、再婚後の家族だけで遺産分割を進めようとしていたところ、前婚の子がいることが分かりました。現在の生活を共にしていなかったことだけで相続権がなくなるわけではありません。出生から死亡までの戸籍等で相続人の範囲を確認し、遺言や遺産分割協議の対象者を漏らさないことが必要です。税理士が税額試算を行う前に、相続人の法的な確定を優先したいケースです。
CASE 02 │ 兄弟姉妹が相続人となる場合
亡くなった方に子がなく、父母も既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人となることがあります。配偶者がいるからといって、ほかの相続人との確認が不要になるとは限りません。一方、兄弟姉妹には遺留分がないため、子や直系尊属が相続人となる場合とは遺言を考える際の論点が異なります。家族構成によってどの制度が関係するかを分けて確認しましょう。
CASE 03 │ 自宅を一人に残したい場合
親と同居していた子に自宅を相続させたいという希望があっても、ほかの子に相続権がないということではありません。自宅に住み続ける人の生活を守る一方、他の相続人の遺留分や財産の公平感も考える必要があります。預金・保険・ほかの不動産などを含めて分割案を作り、住居の維持と納税資金を両立できるかを確認します。単純な持分共有が最適とは限りません。
こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。
▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント
01 │ 戸籍で相続人を確定する理由
親族が集まって相続について話し合っていても、話し合いに参加していない法定相続人がいる可能性があります。前婚の子や養子、代襲相続などがある場合は特に注意が必要です。出生から死亡までの戸籍等を確認し、相続人全員の範囲を確定してから遺産分割協議を進めることが重要です。住民票や現在の戸籍だけでは過去の婚姻関係などを把握しきれないことがあります。
02 │ 法定相続分と遺産分割の割合は同じではない
法定相続分は、相続人の組合せによって民法が定める基準となる割合です。ただし、すべての家庭で必ずその割合どおりに財産を分ける必要があるわけではありません。遺言の有無や相続人全員の合意、財産の種類などによって、実際の分割方法が変わることがあります。自宅や収益不動産を単純に均等共有にする前に、住み続ける人や将来の管理者を確認しましょう。
03 │ 遺留分は法定相続分と別の制度
遺留分は一定の相続人に認められる権利ですが、法定相続分そのものを請求できる制度ではありません。兄弟姉妹には遺留分がない点も特徴です。遺留分侵害額請求の対象となる場合には金銭の支払いが問題になるため、後継者へ自社株式や不動産を集中させる際は、ほかの相続人に渡せる預貯金や保険金等も考慮する必要があります。法的な判断は弁護士等と確認します。
04 │ 相続税の人数計算にも影響する
相続人の数は相続税の基礎控除額だけでなく、死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額などにも関係します。養子がいる場合などは、民法上の相続人の数と税務上の法定相続人数に違いが生じる場合があるため、単に戸籍上の人数を数えるだけでは十分ではありません。相続税の申告要否を調べるときは、まず相続人の法的な範囲を整理し、その後に税務上の人数判定を行うことが重要です。
05 │ 家族の公平感は取得後の負担を含めて考える
子どもが2人いて長男が不動産を管理し、長女が預貯金を取得する場合、財産の相続税評価額が同じでも、実際の負担が均等とは限りません。不動産には固定資産税、管理費、修繕費、場合によっては借入金返済が伴います。家族間で『金額の公平』『管理負担の公平』『親の希望』のどれを重視するのかを話し合い、将来も納得できる分割案を検討しましょう。
06 │ 専門家への相談は対立が起きる前に
遺言書を作りたい、同居している子に自宅を残したい、会社の後継者に株式を集中させたいなど、相続人によって利害が違う場合は早めに法律専門家へ相談することが有効です。税理士は税負担や納税資金を試算し、弁護士は遺留分や遺産分割の法的な論点を扱います。互いの役割を分けたうえで家族の希望を共有することで、後からの手戻りを減らしやすくなります。
▍ アポロ税理士法人の考え方
税金だけで決めず、財産を引き継ぐ家族の希望、納税資金、不動産・事業の管理を横断して検討することを大切にしています。税務・会計を起点に、法律、登記、金融機関など各分野の専門家とも連携して課題を整理します。

監修者
月方 智彦
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。
専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継
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