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【相続の実践ガイド 第10回】配偶者の税額軽減は使うべき?一次相続と二次相続を比較

10月28日
読了時間: 10分

更新日:6 日前

配偶者が財産を取得すると、相続税の大きな軽減を受けられることがあります。しかし、一次相続の税負担を減らすために配偶者へ財産を集中させると、次の相続で子どもの税負担が増える場合があります。


本記事では配偶者の税額軽減の仕組みと、一次相続・二次相続を通じた比較方法を説明します。税額だけでなく、残された配偶者の住まいや生活費も重要な判断材料です。


第10回の要点を3つの視点で整理した図解

▍ この記事の要点|1分でわかる


  • 1.軽減の仕組み

  • 2.一次相続と二次相続

  • 3.配偶者の生活を守る


▍ 目次












1. 結論|最初に知っておきたいこと


ⓘ 配偶者の税額軽減は未分割と申告に注意

配偶者が実際に取得した正味の遺産額のうち1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までが軽減対象です。申告期限までに未分割の財産は原則として対象外ですが、所定の分割見込書等を提出し後日分割された場合に適用できることがあります。

国税庁:配偶者の税額の軽減



配偶者の税額軽減は、配偶者が実際に取得した正味の遺産額のうち、原則として1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからないという制度です。適用には相続税の申告が必要で、未分割財産の取扱いにも条件があります。


『配偶者がすべて相続すれば相続税はゼロ』とは限りません。財産額が大きい場合や他の事情がある場合は税額が生じることがあります。また、相続税額と配偶者の将来の生活資金を分けて検討しましょう。




2. 制度・仕組みの基本


一次相続は夫婦の一方が亡くなった相続、二次相続は残された配偶者が亡くなったときの相続として考えます。二次相続では配偶者の税額軽減を使う配偶者がいないため、相続人の数や財産の額によって税負担が変わります。


一方、一次相続で配偶者が取得する財産を少なくすればよいという単純な話でもありません。配偶者の年齢、健康状態、住まい、生活費、子どもとの関係、二次相続までの時間を考慮する必要があります。




3. 選択肢と影響を比較する


例えば、自宅や預金の多くを配偶者が取得すれば生活の安定に役立つ場合がありますが、数年後に二次相続が生じると財産が再び課税対象になります。反対に、収益不動産を子どもが取得すれば、賃貸経営や借入金を早く引き継ぐことになります。


比較には、一次相続の税額だけでなく、二次相続までの想定期間、財産の増減、配偶者の生活費と修繕費、子どもの納税資金まで表にすることが有効です。


比較の視点

配偶者へ多く取得

子へ早めに取得

一次相続の税

軽減の効果が大きい場合

子の税負担が生じ得る

二次相続

配偶者の財産が増え得る

課税対象が分散する場合

生活・管理

配偶者の生活を守りやすい

子の管理負担が早期発生




4. 見落としがちな注意点


税額軽減が適用されるからといって、配偶者が管理できない賃貸不動産まで取得することが適切とは限りません。高齢の配偶者が物件管理を続けることに不安がある場合、管理会社の利用や将来の承継方針も考えたいところです。


未分割のままでは原則として配偶者の税額軽減が使えず、所定の見込書等の手続を経て後に適用される場合があります。期限と添付書類の確認を忘れないようにしましょう。




5. 具体例|自宅と賃貸アパートを持つ夫婦と子ども2人


父が亡くなり、母と子ども2人が相続するとします。母は自宅での生活を継続したく、子どもの一人は賃貸経営に関心があります。一次相続の税額だけを考えれば母の取得割合を増やしたい案もあります。


しかし、母が取得した賃貸不動産が二次相続で再度対象になることや、家賃管理と借入返済の負担も考慮します。自宅と生活に必要な現金は母へ、賃貸アパートは管理できる子へといった複数案を作り、税額と生活の安定を比較します。




6. 実務の進め方|5つのステップ


第10回の実務の進め方を3段階で示す図解

STEP 01 │ 一次相続の財産を把握


家族構成、自宅、預金、賃貸物件を整理する。


STEP 02 │ 税額軽減の要件を確認


配偶者の取得額と遺産分割・申告の状況を確認する。


STEP 03 │ 二次相続を仮定


将来の財産・相続人の数・税額を概算する。


STEP 04 │ 生活・管理の負担を確認


配偶者の生活費、住居、物件管理能力を考える。


STEP 05 │ 複数の分割案を比較


一次・二次の税額と家族の希望を合わせて判断する。




7. 資料・チェックリスト


最初から完璧に資料を揃える必要はありません。分かる範囲で現状を記録し、不足している事項を確認しながら次の行動を決めましょう。


  • □ 配偶者の生活資金と居住を確保

  • □ 一次相続の特例要件を確認

  • □ 二次相続の税額を試算

  • □ 不動産管理・修繕負担を確認

  • □ 申告期限までの分割・書類を管理




8. 専門家・金融機関に相談する時期


税理士は一次相続と二次相続の税額試算、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例の要件を整理します。遺言や遺留分、相続人間の意見の相違がある場合には弁護士等の法律専門家の役割も重要です。


配偶者が高齢で、不動産管理や金融機関との連絡が難しい場合は、管理会社や家族の支援体制も確認しましょう。税務で最も有利な案が生活面でも最適か、複数の視点で考えることが大切です。


税務上の判断と法律上の判断、金融機関との契約上の手続は別々です。担当する専門家の役割を共有して進めることで、見落としや手戻りを減らしやすくなります。




9. よくある質問とまとめ


Q. 1億6,000万円以下なら申告はいりませんか?


A.配偶者の税額軽減を受ける場合は原則として相続税の申告が必要です。税額がゼロになることと申告不要は別です。


Q. 一次相続で配偶者に多く渡せば必ず得ですか?


A.二次相続の税負担や生活・不動産管理の状況によって結論が異なります。両方の相続を通じて比較します。


まとめ: 配偶者の税額軽減は大切な制度ですが、一次相続の税額だけでなく二次相続と配偶者の生活を一緒に考えます。






▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ


実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。


CASE 01 │ 配偶者が自宅を取得し子が預金を取得する場合


残された配偶者が自宅に住み続けることを希望し、子どもが預金を取得する案では、配偶者の生活の安定と子どもの納税資金を両立できるか確認する必要があります。自宅敷地の小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を検討すると同時に、固定資産税、建物の修繕費、配偶者の生活費も考慮します。一次相続だけの税額を最小にするのではなく、二次相続で財産がどのように動くかも試算しましょう。


CASE 02 │ 配偶者に賃貸アパートを集中させる場合


賃貸アパートを配偶者が取得すると、家賃収入を生活費に充てられる利点があります。しかし、築年数が古く多額の修繕が必要な物件や、借入金返済が残る物件を高齢の配偶者が管理できるかは別の問題です。管理会社や家族の支援体制を確認し、二次相続で子どもへ引き継ぐ際の負担も考慮します。相続税の軽減だけでなく、収益と管理負担の両面から取得者を決めましょう。


CASE 03 │ 二次相続までの期間で試算が変わる場合


一次相続で配偶者が財産を取得し、その後長期間生活費として預金を使うケースと、短期間で二次相続が生じるケースでは、将来の財産残高や税負担が異なる可能性があります。現時点の財産をそのまま二次相続に持ち越した試算だけでは十分ではありません。生活費、介護費、家賃収入、不動産の修繕、財産価額の変動などを複数のシナリオで置き、家族の希望と併せて判断しましょう。


こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。


▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント


01 │ 配偶者の生活を守る財産を先に考える


配偶者の税額軽減を最大限使うことだけに集中すると、残された配偶者が管理しにくい不動産を取得する可能性があります。まずは住み続ける住まいと生活費、医療・介護費用、今後の修繕費を把握し、それを無理なく確保できる案を考えます。税務上のメリットは重要ですが、配偶者自身の暮らしを犠牲にしてまで追求するべきではありません。



02 │ 二次相続では相続人の数も変わる


一次相続で配偶者と子ども2人が相続する場合、基礎控除は4,800万円です。その配偶者が後に亡くなり、子ども2人だけが相続人なら基礎控除は4,200万円になります。二次相続では配偶者の税額軽減を受ける配偶者もいません。一次相続の税額が少なくなる分割方法が、二次相続まで含めた税負担でも有利とは限らないことを理解しましょう。



03 │ 二次相続の財産は現在のままとは限らない


二次相続の税額を試算するとき、一次相続で配偶者が取得する財産をそのまま二次相続に持ち越すだけでは不十分です。配偶者が生活費や介護費として使うお金、賃貸不動産から得る家賃収入、株式や不動産の値動き、修繕や借入返済によって財産が変化します。複数の仮定を置いて比較することが、過度に断定的な判断を避ける方法です。



04 │ 未分割で配偶者軽減を使う際の手続


相続税の申告期限までに分割されていない財産については、原則として配偶者の税額軽減の対象になりません。一定の見込書などの手続きを行い、後に分割された場合に適用される仕組みがありますが、期限や要件の確認が必要です。『配偶者がいるのだから当然に軽減される』と考えず、遺産分割と申告書の提出を同時に管理しましょう。



05 │ 不動産の分割では管理負担も比較する


高齢の配偶者が賃貸アパートを取得すれば、家賃収入が生活資金になる一方、修繕・空室・入居者対応や借入返済も引き継ぐことになります。子どもが管理できるなら、経営を任せる方法もありますが、所有権と管理の役割は分けて確認する必要があります。税金を減らす案と、家族が実際に運営できる案が一致するかを確認しましょう。



06 │ 分割案を複数作り総額で比較する


一次相続で配偶者が大部分を取得する案、子どもに一定の財産を渡す案、不動産の種類ごとに分ける案を比較します。各案について一次相続・二次相続の税額に加え、相続人ごとの納税資金、配偶者の生活費、不動産管理費用を表にします。一つの数字だけで結論を出すのではなく、家族の希望と実行可能性を一緒に考えることが重要です。




▍ アポロ税理士法人の考え方


相続税の有利・不利だけで判断せず、分割・納税資金・不動産や事業の承継後まで考えることを大切にしています。税務・会計・財務に関する論点を整理し、法律・登記・金融機関との調整が必要な部分は各分野の専門家と連携します。




監修者 月方智彦(公認会計士・税理士)

監修者

月方 智彦

公認会計士・税理士


公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。


専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継

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全記事の目次:第1回|相続の全体像


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※2026年10月時点で確認した一般的な制度・実務です。改正、個別要件、最新の届出期限などを実行前に確認してください。



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