【相続の実践ガイド 第8回】相続財産の評価方法|土地・建物・賃貸不動産・非上場株式はどう評価する?
更新日:6 日前
相続税の計算では、財産を『いくらで売れそうか』ではなく、相続税評価のルールに従って評価する必要があります。特に土地・賃貸建物・非上場株式は評価方法が複雑で、金額に大きな影響を与えることがあります。
相続対策を考える場合にも、評価の仕組みと、実際に換金できる価格を区別することが重要です。本記事では財産別の基本と専門家に確認したい点を解説します。

▍ この記事の要点|1分で理解する
相続財産の評価方法
土地・建物・賃貸不動産・非上場株式はどう評価する?
▍ 目次
02 制度や財産の仕組み ›
04 間違えやすいポイント ›
09 よくある質問・まとめ ›
1. 結論|相続財産の評価方法
土地の評価には路線価方式と倍率方式があります。路線価方式では路線価に奥行価格補正率などの補正率を適用し、土地の面積を乗じて評価します。倍率方式では固定資産税評価額に所定の倍率を乗じます。宅地と農地など、地目によって方法が異なります。
一般的な家屋は固定資産税評価額を基に評価します。道路に接する状況、形状、高低差、利用制限などによって土地評価の検討事項が生じます。路線価を見て単純に面積を掛けただけでは、適切な評価にならないことがあります。
2. 制度や財産の仕組み
賃貸されている建物や土地では、借家権や借地権、賃貸割合などの権利関係によって評価額が変わる場合があります。契約内容、入居状況、建物の所有者、敷地利用状況を確認します。
小規模宅地等の特例は、相続税評価を算定したうえで一定の宅地等について減額を検討する制度です。最初の評価と特例の適用は別の段階で判断します。
3. 具体的な比較と判断方法
非上場会社の株式は、税務上、会社規模や株主区分等に応じた方式で評価します。会社が保有する土地や有価証券、配当、利益、純資産等が関連することがあります。
税務上の株価とM&Aでの売却価格、銀行が見る担保評価は目的が異なり、同じ金額になるとは限りません。比較するときには『何のための評価か』を明確にしましょう。
財産 | 主な確認事項 | 代表的な資料 |
|---|---|---|
土地 | 地目・路線価・形状・権利 | 登記・測量図・公図・固定資産税明細 |
建物・貸家 | 固定資産税評価・賃貸状況 | 課税明細・賃貸借契約 |
非上場株式 | 株主区分・会社規模・財務 | 決算書・申告書・株主名簿 |
4. 間違えやすいポイント
土地の評価額を下げたいという目的だけで、利用実態のない賃貸借を形式上作っても、適切な評価になるわけではありません。相続開始時点の権利関係や実際の利用状況を確認する必要があります。
貸付用不動産の評価について税制・評価ルールの見直しが話題になる場合もあります。制度の検討段階の情報と、施行が決まった法令・通達を区別し、評価の対象となる相続開始日のルールを確認しましょう。
5. 事例|評価額と売却価格が異なる土地
父名義の土地について路線価を調べたところ、一定の価額が出ました。しかし現地には段差があり、利用制限もあります。さらに建物は賃貸中で、地代や借家の契約関係も存在していました。
単純な路線価×面積ではなく、土地の形状、権利関係、実際の利用状況を資料で確認します。同時に売却可能価格を知りたい場合は、税務評価とは別に不動産の専門家へ相談する必要があります。
6. 実際の進め方|5つのステップ

STEP 01 │ 財産を分類する
土地・建物・金融資産・非上場株式等を整理する。
STEP 02 │ 資料を集める
登記・固定資産税明細・賃貸借契約・決算書を集める。
STEP 03 │ 評価方法を選ぶ
路線価・倍率・株式評価方式等を確認する。
STEP 04 │ 権利関係と特例を検討
貸家・貸家建付地・小規模宅地等の要件を確認する。
STEP 05 │ 説明資料を残す
評価明細と根拠資料を保存し、分割・納税計画にも使う。
7. 確認資料とチェックリスト
以下の確認事項は、財産一覧や資料依頼リストに転記して、提出済み・未確認・相談中の状態を管理すると使いやすくなります。
□ 土地の地目と用途を確認
□ 貸家・貸地の契約と賃貸割合を確認
□ 不整形地・高低差等の現況を確認
□ 株主と会社の財務情報を整理
□ 税務評価と売却可能価格を区別
8. 相談する専門家とタイミング
土地の複雑な評価や株式評価は税理士の専門的判断が必要になることがあります。測量・境界の問題は土地家屋調査士、不動産売却価格は不動産会社や鑑定士など、評価目的に応じて専門家を選びます。
財産評価は相続税の計算だけでなく、誰にどの不動産を残すかを検討する材料です。税務上の価額だけで公平な財産分割が実現するとは限らない点にも注意します。
税務・法律・登記・金融機関への対応は、それぞれの専門分野で確認が必要です。相談先に同じ資料と方針を共有し、情報の行き違いを減らしましょう。
9. よくある質問・まとめ
Q. 路線価が分かれば土地評価は終わりですか?
A.土地の形状、接道、権利関係、用途等によって評価が変わる場合があります。個別の現況確認が重要です。
Q. 賃貸不動産は必ず評価額が下がりますか?
A.契約内容や実際の賃貸状況、対象土地・建物の条件によります。単純な一律減額ではありません。
まとめ: 税務上の評価と市場価格を分け、土地の利用状況・契約・非上場株式の資料を把握することが大切です。
▍ 場面別に考える|実務のケーススタディ
実際の相続では、制度の概要だけでなく、家族の状況や財産の種類によって判断が変わります。以下のような場面では、当初の方針だけで進めず、必要な資料と実行時期を確認することが重要です。
CASE 01 │ 不整形地の評価を確認する場合
路線価図を見ると、前面道路の路線価が分かりますが、それだけで土地の相続税評価額が確定するわけではありません。土地が細長い、奥行きが短い、高低差がある、複数の道路に接しているなどの事情によって補正や個別の検討が必要となることがあります。登記・測量図・公図・現況写真を揃え、土地の実態を把握しましょう。税務上の評価と不動産会社の査定額が異なることも説明できるようにしておくとよいでしょう。
CASE 02 │ アパート敷地の評価を検討する場合
賃貸中の建物がある土地について、貸家建付地などの評価が問題になることがあります。単にアパートが建っているだけで一律に評価が下がるわけではなく、賃貸借契約、賃貸割合、土地・建物の所有関係等を確認する必要があります。空室の状況や賃貸契約の開始時期も関係することがあります。税務評価を目的として形式的な契約を作るのではなく、相続開始時の実際の利用状況を記録することが大切です。
CASE 03 │ 会社の株式と個人所有の土地がある場合
父が不動産管理会社の株式を保有し、同時にその会社が利用する土地を個人で持っているケースでは、会社株式と土地を別々の財産として評価する必要があります。自社株式の税務評価には会社の財務状況や株主区分等が関係し、土地は利用状況や権利関係により評価します。どの財産を誰が取得するかによって、会社の支配権や土地利用の継続に影響するため、評価だけでなく分割方針も同時に考えましょう。
こうしたケースでは、税金の計算だけで結論を決めるのではなく、財産の帰属・権利関係・納税資金・相続後の管理・専門家の役割を同じ資料の中で整理すると、判断を誤りにくくなります。選択肢ごとの利点と制約を表にし、誰がいつ何を確認するかまで具体化しましょう。
▍ さらに詳しく|実務判断の6つのポイント
01 │ 相続税評価額と売却価格を区別する
土地の相続税評価額は路線価や倍率などのルールに基づいて計算されるため、必ずしも不動産会社の査定額や実際の売却価格と同じではありません。評価額を分割協議に用いる場合は、納得感のある時価評価が必要となることもあります。相続税の申告用の評価と、家族が財産を分ける際の価格、金融機関の担保評価では目的が違うと理解しましょう。
02 │ 土地の形状・接道・現況を確かめる
同じ路線価の地域でも、土地が細長い、不整形である、道路との高低差がある、複数の道路に接するなどの事情で評価上の検討が必要になる場合があります。地積測量図や公図、現地写真、登記等の資料を確認し、単に路線価×面積だけで判断しないことが重要です。実際の利用制限があるかについても専門家に確認します。
03 │ 貸家・貸家建付地は契約を確認する
賃貸建物やその敷地では、入居者がいることや契約の内容、賃貸割合などによって相続税の評価額が変わる場合があります。賃貸借契約書、入居状況、建物の所有者、敷地の利用関係を確認します。形式的な賃貸契約があるだけで一律に評価を下げられるとは限らず、相続開始時の実際の利用状況が重要です。
04 │ 小規模宅地等の特例は別に判定する
通常の土地評価を行った後、一定の宅地等について小規模宅地等の特例の適用を検討します。自宅、事業、賃貸の区分で対象面積や減額割合、取得者の要件が異なるため、財産評価と特例判定を混同しないことが大切です。遺産分割の結果によって特例の適用可否が変わる場合もあり、誰が取得するかを決める前の試算が役立ちます。
05 │ 非上場株式の評価は目的を明確にする
非上場株式には市場で毎日公表される株価がありません。相続税評価では会社規模や株主の区分、財務状況などに応じた方法を検討します。一方、M&Aでの価格や後継者が売買する際の条件は別の判断です。相続税評価額だけを見て会社の売却価格と考えたり、過去の取得価額をそのまま使ったりしないようにしましょう。
06 │ 資料を残し将来の売却にも備える
相続税申告のために作成した評価明細、登記事項、測量図、賃貸借契約書、株式評価資料は、将来の不動産売却や次の相続でも確認する場面があります。評価の前提となった利用状況や土地の形状を写真・契約で残し、後日説明できるように整理するとよいでしょう。評価額だけを一覧に残しても、なぜその金額になったのか分からなければ再検証が難しくなります。
▍ アポロ税理士法人の考え方
税金だけで決めず、財産を引き継ぐ家族の希望、納税資金、不動産・事業の管理を横断して検討することを大切にしています。税務・会計を起点に、法律、登記、金融機関など各分野の専門家とも連携して課題を整理します。

監修者
月方 智彦
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。
専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継
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