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「うちは大丈夫」が一番危ない!!相続争いを防ぐ5つの対策

  • 7月6日
  • 読了時間: 8分
木目の机に住宅書類、ペン、電卓、家の置物と鍵が並ぶ。これから相続に関して話し合いをする雰囲気を連想させる明るい静かな場面

相続対策というと、まず「相続税を減らすこと」を思い浮かべる方が多いです。

もちろん、税金の負担を抑えることは大切です。でも実務上、本当に大変なのは、別のところにあります。

「誰がどの不動産を引き継ぐのか」

「現金が少なく、平等に分けられない」

「親の介護をした子と、していない子で感情がぶつかる」

こうした話は、決して珍しくありません。

特に地主・家主・不動産オーナーの相続では、財産の多くが土地や建物です。現金のように1円単位で分けることができません。

さらに、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年4月1日より前に相続した未登記不動産も対象です。

つまり、相続の問題は「あとで考える」から「いま考える」時代に変わったのです。

この記事では、不動産オーナーが家族の争いを避けるために、何を準備すべきかを実務目線で解説します。



結論:相続対策は「節税」より先に「分け方」を決める

結論から言うと、不動産オーナーの相続対策で最初に考えるべきことは、節税ではなく、財産の分け方です。

相続税を下げるために不動産を増やしても、相続人同士で分けられなければ、かえって争いの火種になります。

たとえば、相続人は子ども3人、財産の大半がアパートやマンションとその土地だけ、現金は少ない。

このようなケースでは、法定相続分どおりに分けようとしても、現実にはかなり難しくなります。

そこで重要になるのが、次の5つです。


  1. 遺言書を作る

  2. 不動産の共有をできるだけ避ける

  3. 遺留分に配慮する

  4. 納税資金・代償金の現金を準備する

  5. 生前に家族と情報共有しておく


相続対策は、税金の計算だけでは終わりません。

家族の感情、生活、事業承継、賃貸経営まで含めて設計する必要があります。



1. 遺言書がない相続は、争いになりやすい

不動産を持つ方にとって、遺言書は非常に重要です。

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。ここで全員が納得すればよいのですが、実際にはそう簡単ではありません。

「長男が家業を継いでいる」

「次男は親の介護をしてきた」

「長女は現金がほしい」

「配偶者の生活費をどうするのか」

このように、それぞれの立場で言い分があります。相続では、法律の問題と感情の問題が同時に出てきます。

だからこそ、生前に意思を示しておくことが大切です。

特に不動産オーナーの場合は、

「どの不動産を誰に相続させるのか」

「賃貸経営を誰が引き継ぐのか」

「配偶者の生活費をどう確保するのか」

まで決めておく必要があります。



2. 不動産の共有は、できるだけ避ける

相続でよくあるのが、不動産を相続人全員の共有にする方法です。

一見すると平等に見えます。でも、実務上はかなり注意が必要です。

共有不動産は、売却・建替え・大規模修繕・借入などの場面で、共有者間の合意が必要になります。

最初は兄弟3人の共有でも、その後それぞれに相続が起きると、甥・姪・配偶者などに権利が広がります。気がつけば、所有者が何人もいる状態になります。

こうなると、誰か一人が反対するだけで売却が進まない。修繕したくても費用負担で揉める。賃料収入の分配でも不満が出る。

まるで、ハンドルが3つも4つもある車を運転するようなものです。進む方向が決まりません。

そのため、相続対策では、不動産ごとに取得者を決めることが基本です。

たとえば、次のような整理です。

・Aアパートは長男

・B土地は次男

・現預金と自宅は配偶者

・差額は生命保険や代償金で調整

もちろん、完全に平等にすることは難しいです。

そのため、遺言書の付言事項(ふげんじこう)も検討してみてもよいでしょう。付言事項とは、遺言書に添える想いの部分、家族への感謝や希望など、メッセージを伝えるための手紙のようなものです。法的な効力そのものは限定的ですが、なぜその分け方にしたのかを伝える役割があります。

「長男には賃貸経営を継いでもらうため」

「次男には生前に援助しているため」

「配偶者の生活を守るため」

このような理由があるだけで、相続人の納得感は変わります。



3. 遺留分を無視した遺言書は、争いを残す

遺言書を作れば、必ず争いが防げるわけではありません。

特に注意したいのが遺留分です。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分です。

たとえば「長男に全財産を相続させる」という遺言を作った場合でも、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

2019年の相続法改正により、遺留分侵害額請求は原則として金銭請求の形になっています。民法でも、遺留分権利者は受遺者等に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるとされています。

これは、不動産の権利関係を複雑にしにくいという意味ではメリットがあります。

ただし、金銭で支払う必要がある以上、支払う側に現金がなければ困ります。

不動産はあるが現金がない。遺留分を請求された、納税資金も必要だ…。

この状態になると、結局は物件を急いで売却することになりかねません。

遺言書を作るときは、誰に多く残すかだけでなく、他の相続人の遺留分にどう配慮するかも考える必要があります。

「公平」と「平等」は違います。

法定相続分どおりにきっちり分けることが平等だとすれば、介護、同居、家業への貢献、生活状況を踏まえて分けることが公平です。

ただし、公平な分け方をする場合ほど、理由の説明が大切になります。

ここでも、遺言書の付言事項や生前の話し合いが効いてくるのです。



4. 納税資金・代償金の現金を準備する

地主・家主の相続で見落とされやすいのが、現金の準備です。

不動産を多く持っていても、現金が少ないケースはよくあります。

相続税は、原則として現金で納付するため、一定の現金を準備しておくことが重要です。

また、特定の相続人が不動産を引き継ぐ場合、他の相続人に代償金を支払うことがあります。代償金とは、不動産を多く取得する人が、他の相続人に支払う調整金のようなものです。

たとえば、「長男がアパートを相続する。その代わり、次男や長女に現金を支払う。」

このような形です。

問題は、その現金をどう用意するかです。

現金がなければ、せっかく残した不動産を売らざるを得ないことがあります。

しかも、相続後に慌てて売ると、条件の悪い売却になりやすいです。


そのため、次のような準備が考えられます。

・預貯金を一定額残しておく

・生命保険を活用する

・収益性の低い不動産を生前に売却する

・物件を分けやすい形に組み替える

・相続税対策として借入を活用して不動産を購入する

ただし、「相続税評価が下がるから」という理由だけで不動産を買うのは危険です。

借入をして物件を購入すれば、相続税評価が下がる場合があります。

しかし、空室リスク、金利上昇、修繕費、売却時の価格下落、相続人の管理能力まで考えなければなりません。

節税のために買った不動産が、相続後に家族を苦しめる。

そんなケースもあります。

相続対策では、節税効果だけでなく、納税資金と代償金をどう準備するかをセットで考える必要があります。



5. 家族で財産情報を共有しておく

争いを避けるためには、生前のコミュニケーションも欠かせません。

相続人が財産の全体像を知らないまま相続が始まると、不信感が生まれます。

「ほかにも財産があるのでは」

「兄だけが親から聞いていたのでは」

「介護をしていた分は考慮されないのか」

このような感情が出ると、話し合いは一気に難しくなります。

だからこそ、元気なうちに財産の棚卸しをしておくことが大切です。

最低限、次の情報は整理しておきたいところです。

・不動産の一覧

・借入金の残高

・賃料収入と修繕費

・預貯金、証券、保険

・固定資産税や管理費

・誰に何を引き継がせたいか

・介護や事業承継への考え方

すべてを細かく公開する必要はありません。ただ、相続人がまったく知らない状態は避けたいところです。


特に地主・家主の場合、土地や建物の数が多く、相続人だけでは全体像を把握できないことがあります。

「通帳が見つからない」

「借入金が分からない」

「賃貸借契約書が整理されていない」

こうなると、相続人も専門家もかなり苦労します。

相続対策は、遺言書だけでなく、資料整理まで含めて考える必要があります。

そして、家族会議を開く場合は、いきなり分け方を決めようとしないことも大切です。

最初は、財産の全体像を共有する。

次に、親の考えを伝える。

そのうえで、必要に応じて専門家を交えて整理する。

この順番の方が、感情的な対立を避けやすくなります。



まとめ

実務で相続のご相談を受けていると、強く感じることがあります。

それは、相続トラブルは「何十億円もの資産家」だけに起きるものではない、ということです。


あるご家族では、70代だったお父様が急に亡くなりました。そのため、生前に遺言書は作成されておらず、不動産や預貯金の整理も十分にされていませんでした。お母様はすでに亡くなっていたため、相続人はお子様2人です。ただ、お子様といっても、すでに40代から50代。それぞれに配偶者がいて、子どもがいて、住宅ローンや老後資金への不安もあります。健康状態も違います。家計の余裕も違います。親との関わり方も違います。

つまり、同じ兄弟であっても、相続が起きた時点では、それぞれが別々の人生を背負った「大人」になっているのです。そのため、たとえ数百万円であっても、その人の生活に大きな影響を与える金額であれば、簡単には譲れません。

「自分にも事情がある」

「こちらの生活も楽ではない」

そんな思いが重なると、相続の話し合いは一気に感情的になります。

そのご家族では、相続をきっかけに兄弟関係がこじれ、その後、絶縁状態になってしまったのです。


「うちは大した財産がないから大丈夫」

そう思っていても、実際にはそうとは限りません。

相続は、財産の承継であると同時に、家族関係の承継でもあります。

大切な不動産を残すこと。家族の関係を守ること。この2つを両立させるためには、早めの準備が何より重要です。


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