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別居している子でも使える?小規模宅地等の「家なき子特例」を解説

9月4日
読了時間: 19分

更新日:4 日前

静かな住宅街を見つめる男性

「親と別居していたため、小規模宅地等の特例は使えないのではないか」

「自分は賃貸住宅に住んでいるので、家なき子特例の対象になるのではないか」

親が亡くなり、実家の土地を相続することになった方の中には、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

小規模宅地等の特例には、被相続人である親と同居していなかった親族でも、一定の要件を満たせば適用を受けられる制度があります。

いわゆる「家なき子特例」と呼ばれている制度です。

ただし、親と別居していることや、自分名義の持ち家がないことだけで適用できるわけではありません。

被相続人に配偶者がいないこと、被相続人と同居していた相続人がいないこと、過去3年間に本人や配偶者、一定の親族などが所有する住宅に住んでいないことなど、複数の要件をすべて確認する必要があります。

この記事では、家なき子特例の要件、適用できるケース・できないケース、老人ホーム入居時の取扱い、申告に必要な書類について、わかりやすく解説します。

相続全体の手続や遺産分割から確認したい方は、「相続の基本と全体像」もあわせてご覧ください。

目次

1.結論|別居している子でも使える可能性があります

親と別居している子であっても、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。

そのため、次のように考える必要はありません。

「親と同居していなかったので、実家の土地には小規模宅地等の特例を使えない」

一方で、次のような考え方も正確ではありません。

「自分名義の家がないので、必ず家なき子特例を使える」

家なき子特例では、本人の持ち家の有無だけでなく、次のような事情も確認されます。

・被相続人に配偶者がいたか

・被相続人の自宅に同居していた相続人がいたか

・過去3年間に誰が所有する住宅に住んでいたか

・現在住んでいる住宅を過去に所有していたことがあるか

・相続した土地を相続税の申告期限まで保有しているか

したがって、別居している子が適用を受けられるかどうかは、単純に「持ち家があるか、ないか」だけでは判断できません。

本人だけでなく、配偶者や三親等内の親族、本人と特別な関係がある法人が所有する住宅まで確認する必要があります。


2.小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例全体の要件については、「小規模宅地等の特例とは?」で解説しています。


2-1.親の自宅敷地の評価額を最大80%減額できる制度

小規模宅地等の特例とは、相続または遺贈によって取得した一定の宅地等について、相続税を計算する際の評価額を減額できる制度です。

親が住んでいた自宅の土地が「特定居住用宅地等」に該当する場合、原則として330平方メートルまでの部分について、土地の評価額を80%減額できます。

例えば、親の自宅敷地の相続税評価額が1億円で、敷地全体が330平方メートル以内だったとします。

特例を適用できる場合の計算は、次のとおりです。

1億円-1億円×80%=2,000万円

相続税の計算に算入される土地の評価額を、1億円から2,000万円まで圧縮できることになります。

ただし、税額そのものが80%減るわけではありません。

80%減額されるのは、原則として対象となる土地等の相続税評価額です。また、建物の評価額が80%減額される制度でもありません。


2-2.「家なき子特例」は正式な法律用語ではない

「家なき子特例」という名称は、法律上の正式名称ではありません。

小規模宅地等の特例のうち、被相続人の配偶者や同居親族以外の親族が、一定の条件を満たして特定居住用宅地等を取得する場合の取扱いを、一般的にに「家なき子特例」と呼んでいます。

名前からは「自宅を持っていない子であれば使える制度」という印象を受けますが、実際にはそれほど単純ではありません。

また、対象者は必ずしも被相続人の「子」に限られません。一定の要件を満たす被相続人の親族が、相続または遺贈によって対象の土地を取得した場合に、適用を受けられる可能性があります。


3.家なき子特例を使うための6つの要件

家なき子特例を利用するためには、原則として、次の6つの要件をすべて満たす必要があります。


3-1.海外居住者などについて国籍要件を満たしていること

取得者が一定の海外居住者などに該当する場合、日本国籍に関する要件を満たす必要があります。

日本国内に住んでいる日本人の子が相続する一般的なケースでは、通常、この要件が問題になることは多くありません。

一方、相続人が海外に長期間居住している場合や、日本国籍を有していない場合には、相続税の納税義務者区分も含めた個別の確認が必要です。

海外居住者については、家なき子特例の要件だけで判断せず、相続税が課税される財産の範囲なども含めて確認しましょう。


3-2.被相続人に配偶者がいないこと

相続開始時点で、被相続人に配偶者がいないことが必要です。

例えば、父親が亡くなったときに母親が存命である場合、別居している子は、原則として家なき子特例を利用できません。

これは、母親が実家の土地を相続するかどうかとは別の問題です。

母親が土地を相続せず、別居している子が土地を相続したとしても、被相続人に配偶者がいるという事実によって、家なき子特例の要件を満たさないことになります。

「配偶者が土地を相続しなければ、別居の子が特例を使える」という制度ではないため、注意が必要です。


3-3.被相続人の自宅に同居していた相続人がいないこと

相続開始の直前に、被相続人の自宅に住んでいた相続人がいないことが必要です。

例えば、長男は賃貸マンションに住んでいるものの、次男が父親と実家で同居していた場合、長男は原則として家なき子特例を使えません。

この場合、同居していた次男が実家の土地を相続するかどうかは関係ありません。

被相続人の自宅に居住していた相続人が存在すること自体が、別居親族の家なき子特例に影響します。

また、相続放棄をした人についても、この要件を判定するときは、相続放棄がなかったものとして相続人に該当するかどうかを確認します。

同居していた子が相続放棄をすれば、別居しているほかの子が家なき子特例を使えるようになる、というものではありません。


3-4.相続開始前3年以内に、一定の人や法人が所有する住宅に住んでいないこと

家なき子特例の判定で、特に間違いやすいのがこの要件です。

土地を取得する親族は、相続開始前3年以内に、日本国内にある次の者が所有する住宅に居住していないことが必要です。

・取得者本人

・取得者の配偶者

・取得者の三親等内の親族

・取得者と特別の関係がある一定の法人

つまり、本人名義の持ち家がなかったとしても、配偶者名義の家や親名義の家、兄弟姉妹名義の家などに住んでいた場合は、原則として要件を満たしません。

家賃を払っていたか、無償で住んでいたかは、基本的な判定を左右しません。

例えば、兄が所有するマンションを弟が借り、毎月相場どおりの家賃を兄に支払っていたとしても、三親等内の親族が所有する住宅に住んでいたことに変わりはありません。

また、自分や配偶者、一定の親族が支配する会社が所有する社宅に住んでいる場合も注意が必要です。

「自分の登記名義ではないから問題ない」と判断せず、住宅の登記名義と法人の株主構成まで確認する必要があります。


3-5.現在住んでいる住宅を過去に所有したことがないこと

相続開始時に住んでいる住宅を、過去のいずれかの時点で取得者本人が所有していたことがないことも必要です。

これは、所有していた住宅を売却した後、その住宅を借りて住み続けるようなケースなどを対象外とするための要件です。

例えば、自分が所有していたマンションを第三者に売却し、売却後は買主からそのマンションを借りて住んでいるとします。

相続開始前3年より前に売却していたとしても、相続開始時に住んでいるマンションを過去に所有していたため、この要件を満たしません。

「自宅を売却して3年経過すれば、必ず家なき子特例を使える」ということではない点に注意しましょう。


3-6.相続した土地を申告期限まで保有すること

家なき子特例の対象となる土地を、相続開始時から相続税の申告期限まで保有していることが必要です。

相続税の申告期限は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告期限前に実家の土地を売却した場合、原則として家なき子特例を適用できません。

一方、家なき子特例には、相続した親の家へ実際に転居し、申告期限まで住み続けなければならないという居住継続要件は設けられていません。

別居している子が、相続後も賃貸住宅などに住み続けること自体は、直ちに適用を妨げるものではありません。

ただし、土地については申告期限まで保有する必要があります。売却を検討している場合は、売買契約や引渡しを行う前に、必ず特例への影響を確認しましょう。


4.家なき子特例の簡易チェックリスト

次の項目を使って、家なき子特例を適用できる可能性があるか確認してみましょう。

□ 被相続人に配偶者がいない

□ 相続開始直前に、被相続人の自宅へ同居していた相続人がいない

□ 相続開始前3年以内に、自分が所有する住宅へ住んでいない

□ 相続開始前3年以内に、配偶者が所有する住宅へ住んでいない

□ 相続開始前3年以内に、三親等内の親族が所有する住宅へ住んでいない

□ 相続開始前3年以内に、自分と特別な関係がある法人が所有する住宅へ住んでいない

□ 相続開始時に住んでいる住宅を、過去に自分が所有したことがない

□ 相続した土地を相続税の申告期限まで保有する予定である

□ 海外居住者などの場合、日本国籍等に関する要件を確認している

上記のうち、1つでも満たしていない項目がある場合、原則として家なき子特例を利用できません。

ただし、簡易チェックリストだけで最終判断をすることはおすすめできません。

実際の判定では、住民票上の住所だけでなく、実際にどこで生活していたか、住宅を誰が所有していたか、法人とどのような資本関係があったかなども確認する必要があります。


5.家なき子特例を適用できるケース・できないケース


5-1.賃貸マンションに住んでいる子

【適用できる可能性があります】

第三者が所有する一般的な賃貸マンションに住んでいる場合は、家なき子特例を適用できる可能性があります。

ただし、賃貸住宅に住んでいるという事実だけでは判断できません。

被相続人に配偶者がいないこと、同居していた相続人がいないこと、相続した土地を申告期限まで保有することなど、ほかの要件もすべて満たす必要があります。


5-2.配偶者名義のマンションに住んでいる子

【原則として適用できません】

本人名義の持ち家がなくても、配偶者が所有するマンションに住んでいる場合は、原則として家なき子特例を利用できません。

夫婦の収入割合や住宅ローンの負担割合ではなく、誰が住宅を所有しているかが重要です。

登記上、配偶者のみの名義となっている場合だけでなく、本人と配偶者の共有名義の場合も注意が必要です。


5-3.親や兄弟名義の住宅に住んでいる子

【原則として適用できません】

父母や兄弟姉妹は、通常、本人から見て三親等内の親族に該当します。

そのため、親や兄弟姉妹が所有する住宅に住んでいる場合は、原則として家なき子特例を利用できません。

家賃を支払っていた場合も同様です。

「賃貸借契約書を作成しているから、一般の賃貸住宅と同じ扱いになる」とは限りません。


5-4.自宅を売却して賃貸住宅に引っ越した子

【売却時期によって結論が異なります】

相続開始前3年以内に、自分が所有する自宅へ住んでいた場合は、原則として家なき子特例を利用できません。

例えば、相続開始の2年前に自宅を売却し、その後、別の賃貸マンションへ転居した場合、3年以内に自分の所有する住宅へ住んでいたため、要件を満たさないことになります。

一方、自宅を売却してから3年を超えており、現在の賃貸住宅を過去に所有したこともなく、ほかの要件も満たしていれば、適用できる可能性があります。


5-5.売却した自宅を借りて住み続けている子

【原則として適用できません】

自宅を売却し、売却後も同じ住宅を借りて住む「セール・アンド・リースバック」を利用している場合は注意が必要です。

相続開始時に住んでいる住宅を過去に本人が所有していたため、自宅を売却してから3年を超えていたとしても、原則として要件を満たしません。

現在の登記名義だけでなく、過去の所有履歴まで確認する必要があります。


5-6.勤務先が所有する社宅に住んでいる子

【勤務先との関係によって異なります】

本人や親族と資本関係のない一般的な勤務先が所有する社宅に住んでいる場合は、それだけで家なき子特例の対象外になるとは限りません。

一方、本人や配偶者、一定の親族などが株式の50%を超えて所有する会社など、本人と特別の関係がある法人が所有する住宅に住んでいる場合は、原則として対象外です。

自分や親族が会社を経営しており、その会社名義の社宅に住んでいるケースでは、法人の株主構成、議決権割合、役員構成などを確認しましょう。


5-7.賃貸中の収益不動産を所有している子

【所有しているだけで直ちに対象外になるとは限りません】

家なき子特例は、住宅や不動産を一切所有してはいけないという制度ではありません。

例えば、第三者へ賃貸している投資用マンションを所有していても、本人がそのマンションに居住したことがない場合には、所有していることだけで直ちに対象外になるとは限りません。

重要なのは、相続開始前3年以内にどの住宅へ実際に住んでいたか、現在住んでいる住宅を過去に所有していたことがあるかです。

ただし、投資用として購入したマンションに一時的に居住していた場合などは、要件に影響する可能性があります。


5-8.相続後も親の家へ住まない子

【ほかの要件を満たせば適用できる可能性があります】

家なき子特例では、実家の土地を相続した後、その家へ転居することまでは求められていません。

相続後も勤務先に近い賃貸マンションに住み続ける場合でも、ほかの要件を満たしていれば、適用できる可能性があります。

ただし、相続した土地は相続税の申告期限まで保有しなければなりません。

建物を取り壊す場合、土地を売却する場合、土地を共有物分割する場合などは、特例への影響を事前に確認しましょう。


5-9.相続税の申告期限前に実家を売却する子

【原則として適用できません】

家なき子特例には、土地を相続開始時から相続税の申告期限まで保有するという要件があります。

そのため、申告期限前に実家の土地を売却すると、原則として特例を利用できません。

相続した不動産について早期売却の話が進んでいる場合は、売却による手取り額だけでなく、小規模宅地等の特例が適用できなくなることによる相続税への影響も含めて比較する必要があります。


6.親が老人ホームに入居していた場合はどうなる?

被相続人が亡くなる直前に老人ホームへ入居しており、自宅に住んでいなかった場合でも、一定の要件を満たせば、入居前の自宅敷地が特定居住用宅地等に該当する可能性があります。


6-1.要介護認定等を受けていること

被相続人が、要介護認定、要支援認定、一定の障害支援区分の認定などを受けていることが必要です。

単に高齢になったため、元気な状態で一般的な住宅へ転居したというケースでは、老人ホーム入居に関する取扱いの対象にならない可能性があります。


6-2.対象となる施設へ入居していること

対象となる主な施設には、次のようなものがあります。

・認知症対応型共同生活介護が行われるグループホーム

・養護老人ホーム

・特別養護老人ホーム

・軽費老人ホーム

・有料老人ホーム

・介護老人保健施設

・介護医療院

・一定のサービス付き高齢者向け住宅

・一定の障害者支援施設

施設の名称だけで判断できないケースもあるため、入居契約書や施設の種類を確認することが重要です。


6-3.入居後の自宅の利用状況に注意する

老人ホームへの入居後、被相続人の自宅がどのように利用されていたかも重要です。

自宅が空き家のまま維持されていた場合は、特例の対象になる可能性があります。

一方、入居後に自宅を第三者へ貸した場合、事業用として使用した場合、別の親族などが新たに住み始めた場合には、特例の対象外となる可能性があります。

老人ホームへ入居した親の自宅については、相続が発生するまでの利用状況を、賃貸借契約、公共料金、住民票、郵便物などから確認することがあります。

「老人ホームへ入居していたから使えない」「自宅を残していたから必ず使える」と一律に判断せず、認定状況、施設の種類、自宅の使用状況を確認しましょう。


7.家なき子特例の申告手続と必要書類


7-1.特例を受けるには相続税申告が必要

小規模宅地等の特例は、要件を満たしていれば自動的に適用される制度ではありません。

相続税申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算明細書や一定の添付書類を提出する必要があります。

特例を適用した結果、課税価格が基礎控除額以下となる場合でも、特例の適用を受けるために相続税申告が必要となるケースがあります。

「特例を使えば相続税がゼロになるので、申告も不要」とは限らない点に注意しましょう。


7-2.一般的に必要となる主な書類

家なき子特例の適用を受ける場合、一般的には次のような書類を準備します。

・小規模宅地等についての課税価格の計算明細書・遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し・遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書・相続関係を確認する戸籍関係書類・相続開始前3年以内の住所または居所を明らかにする書類・過去3年間に居住していた住宅の所有者を確認する書類・相続開始時に住んでいる住宅を過去に所有していないことを証明する書類

具体的には、戸籍の附票、住民票、建物の登記事項証明書、賃貸借契約書などを、事案に応じて確認します。

マイナンバーの記載状況などにより、一部の住所関係書類の提出が不要となる場合もあります。


7-3.老人ホームへ入居していた場合の追加書類

被相続人が老人ホーム等へ入居していた場合には、通常の書類に加えて、次のような書類が必要となることがあります。

・被相続人の戸籍の附票の写し・要介護認定、要支援認定などを確認できる書類・介護保険の被保険者証等の写し・老人ホーム等の入居契約書の写し・入居していた施設の名称、所在地、施設区分を確認できる書類

必要書類は施設の種類や認定状況によって異なるため、申告期限の直前ではなく、早い段階から収集を始めることをおすすめします。


7-4.土地を売却する前に適用可否を確認する

相続税の申告期限前に土地を売却すると、家なき子特例の保有要件を満たさなくなる可能性があります。

不動産会社から早期売却を提案されている場合でも、売買契約を締結する前に、税理士へ特例の適用可否を確認することが重要です。

売却価格だけを見て判断すると、小規模宅地等の特例を受けられなくなり、想定以上に相続税が増加することがあります。


8.家なき子特例についてよくある質問


8-1.孫が実家の土地を取得する場合も使えますか?

家なき子特例は、被相続人の「子」だけを対象とする制度ではありません。

被相続人の親族が相続または遺贈によって対象となる土地を取得し、所定の要件を満たしていれば、孫でも適用できる可能性があります。

ただし、孫が法定相続人になるのか、代襲相続によって取得するのか、遺言による遺贈で取得するのかなど、土地を取得する法的な経緯も確認する必要があります。


8-2.投資用マンションを所有していると使えませんか?

投資用マンションを所有しているという事実だけで、必ず家なき子特例が使えなくなるわけではありません。

本人がその投資用マンションに居住していない場合は、適用できる可能性があります。

ただし、購入後に一時的でも居住していた場合、相続開始時の自宅として使用している場合などは、過去3年間の居住要件や過去の所有要件に影響します。

不動産の用途だけでなく、実際の居住実態を確認することが重要です。


8-3.相続した実家へ引っ越す必要はありますか?

家なき子特例の適用を受けるために、相続した実家へ引っ越すことは原則として求められていません。

相続後も賃貸マンションなどに住み続けることは可能です。

ただし、実家の土地を相続税の申告期限まで保有する必要があります。


8-4.申告期限後であれば土地を売却してもよいですか?

家なき子特例の保有継続要件は、原則として相続税の申告期限までです。

したがって、申告期限まで土地を保有しており、ほかの要件も満たしていれば、申告期限後に売却したことだけを理由として特例が取り消されるものではありません。

ただし、売却時には譲渡所得税が発生する可能性があります。また、相続税の取得費加算の特例や空き家に係る譲渡所得の特別控除など、別の税務上の論点も検討する必要があります。


8-5.申告期限までに遺産分割が決まらない場合はどうなりますか?

申告期限までに対象の土地が分割されていない場合、当初の相続税申告では、原則として小規模宅地等の特例を適用できません。

ただし、相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合には、後から特例を適用できる可能性があります。

この場合は、原則として遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内に、更正の請求を行います。

遺産分割が終わっていなくても、相続税の申告期限が延長されるわけではありません。申告期限内の申告と納税は必要です。


9.まとめ

親と別居している子でも、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の家なき子特例を利用できる可能性があります。

一方、単に賃貸住宅に住んでいることや、自分名義の持ち家がないことだけでは、適用できるかどうかを判断できません。

特に重要なのは、次の3点です。

・被相続人に配偶者や同居していた相続人がいないか

・過去3年間に、本人、配偶者、三親等内の親族、関係法人が所有する住宅へ住んでいないか

・相続開始時に住んでいる住宅を過去に所有していないか

また、相続した土地は、原則として相続税の申告期限まで保有する必要があります。

家なき子特例は、住宅の現在の登記名義だけでなく、過去の住所、過去の所有履歴、親族関係、法人との資本関係などを総合的に確認する制度です。

適用できると思って土地を相続したものの、申告期限の直前になって要件を満たしていないことが判明するケースも考えられます。

相続後に実家を売却する予定がある場合や、配偶者・親族名義の住宅、社宅などに住んでいる場合は、早い段階で相続税に詳しい税理士へ相談しましょう。


出典

志田宏樹

監修者

志田 宏樹

公認会計士・税理士・宅地建物取引士


監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。


専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継

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