空き家税は全国に広がる?京都市・寝屋川市・神戸市の制度と不動産所有者への影響
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全国で空き家が増加する中、自治体が独自に「空き家へ課税する」という動きが出てきました。
先行しているのが京都市です。大阪府寝屋川市でも、2026年7月9日に「空き家流通促進税」の条例案が可決されました。さらに神戸市では、都心部の分譲マンションの空室を対象とした「空室税」の導入が検討されています。
これまでの空き家対策は、補助金、空き家バンク、行政指導など、所有者の行動を後押しする施策が中心でした。
しかし今後は、空き家を活用せずに保有し続けると税負担が増える、いわば「課税によって売却や賃貸を促す政策」へと変わっていく可能性があります。
本記事では、京都市・寝屋川市・神戸市の制度を比較しながら、空き家を所有する個人や不動産オーナーにどのような影響があるのかを解説します。
全国の空き家は900万戸に
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%となっています。
いずれも過去最多であり、日本の住宅のおよそ7戸に1戸が空き家という計算です。
ただし、一口に空き家といっても、その状況はさまざまです。
・相続した実家をそのままにしている住宅
・入居者を募集している賃貸住宅
・売却中の住宅
・別荘やセカンドハウス
・投資目的で取得されたものの、実際には使われていないマンション
・老朽化し、利用や売却が難しくなった住宅
空き家問題というと、地方の老朽化した戸建て住宅をイメージしがちです。
しかし、京都市や神戸市が問題視しているのは、住宅需要がある地域でありながら、実際には居住に使われていない住宅の存在です。
つまり、空き家対策には「危険な建物を適正に管理する」という側面だけでなく、「使われていない住宅を市場に流通させる」という住宅政策の側面も含まれています。
空き家税とは何か?
「空き家税」とは、利用されていない住宅の所有者に税金を課すことで、住宅の売却や賃貸、適切な管理を促すための制度です。
固定資産税とは別に、一定の空き家や居住実態のない住宅を対象として、自治体が独自に課税します。
ただし、「空き家税」は、全国共通の正式な税金の名称ではありません。
京都市の「非居住住宅利活用促進税」や、寝屋川市の「空き家流通促進税」など、自治体が独自に設ける税金の通称として使われています。
空き家税は、空き家をそのまま保有する負担を重くすることで、売却や賃貸、解体、適切な管理などを促し、空き家の増加や住宅不足、地域の防災・防犯上の問題を改善することを主な目的としています。
京都市は2030年度から課税開始予定
京都市は、全国に先駆けて「非居住住宅利活用促進税」を創設しました。
対象となるのは、京都市の市街化区域内にある「非居住住宅」で、一般的な空き家だけでなく、別荘やセカンドハウスなども対象に含まれます。
京都市は、住宅が存在するにもかかわらず、居住や売買、賃貸に活用されていない事象が若年・子育て世帯の定住が進まない一因になっていると説明しています。
そこで、空き家や別荘、セカンドハウスをそのまま保有する場合に一定の税負担を求め、居住、賃貸、売却などへの活用を促そうとしています。
京都市の場合、「空き家税」は、現在の固定資産税額(土地・家屋)の半額程度になるとされています。たとえば、土地と家屋の固定資産税が合計で年12万円なら、新税による追加負担は年6万円前後が一つの目安になります。
これは既存の固定資産税や都市計画税とは別にかかる金額で、課税開始は2030年度が予定されています。
京都市「非居住住宅利活用促進税について」
寝屋川市は市内全域の空き家を対象
大阪府寝屋川市では、2026年7月9日、「寝屋川市空き家流通促進税条例」が市議会で可決されました。
京都市が市街化区域内の非居住住宅を対象とするのに対し、寝屋川市は市内全域にある一定の空き家を対象としている点が特徴です。
寝屋川市は市域が限られ、新たな住宅地を大規模に開発する余地が多くありません。
そこで、使われていない住宅を比較的状態が良いうちに売却・賃貸市場へ戻し、子育て世帯などの居住につなげることを目的としています。
寝屋川市の場合、「空き家税は」は固定資産税額の3〜4割程度になるケースが多いとされています。
なお、計算式は概ね次のとおりです。
(家屋の固定資産税額+土地の固定資産税額÷土地面積×家屋の延べ床面積)×35%
たとえば、家屋の固定資産税額が年10万円、土地の固定資産税額が年5万円、土地100平方メートル、家屋80平方メートルの場合は、4万9000円の税額となります。
寝屋川市議会「令和8年6月市議会定例会付議事件一覧表」
寝屋川市「寝屋川市空き家流通促進税条例案」
神戸市は都心部の分譲マンションに「空室税」を検討
神戸市では、都心部の分譲マンションの住戸が、生活の本拠として十分に活用されていないことが問題視されています。
当初は、タワーマンションの空室を対象とする制度が想定されていました。
その後の検討では、問題は建物の高さだけではなく、都心部という立地との関係が強いとして、一般の分譲マンションも含めた制度が議論されています。
神戸市は2025年5月から有識者検討会を開催しており、2026年7月10日にも第6回検討会が開催されていますが、現時点では条例制定や導入が決定した段階ではありません。
対象地域、空室の判定方法、税率、免除要件、課税開始時期などは、今後の検討によって変わる可能性があります。
神戸市「居住と税制のあり方に関する検討会」
国会でも「非居住住宅税」の法案が提出された
国会でも、2025年12月、国民民主党・無所属クラブの議員から「利用されていない住宅への課税」を検討する法案が提出されました。
法案では、住宅価格や家賃が高騰している地域を念頭に、主に次の施策が提案されていました。
・市町村が、住宅価格等高騰地域にある非居住住宅の所有者に課税できる制度
・取得後2年以内に住宅を売却した場合の追加課税
・投機的取引や非居住住宅の保有による住宅価格・家賃高騰の実態調査
・独自課税に取り組む自治体への国の支援
もっとも、具体的な税率や課税開始時期が定められていたわけではなく、政府に対し、必要な制度設計を進めるよう求める内容でした。
ただし、2026年7月15日現在、法案は国土交通委員会に付託されたまま「閉会中審査」となっており、衆議院での可決や法律としての成立には至っていません。
ただ、住宅価格の高騰や投資目的の空室がさらに問題となれば、同様の制度が改めて検討される可能性があると考えています。不動産オーナーとしては、自治体の動きだけでなく、今後の国の住宅政策にも注意しておく必要があるでしょう。
衆議院「第219回国会 議案の一覧」
管理されていない空き家は固定資産税も重くなる
新しい「空き家税」とは別に、適切に管理されていない空き家に対する固定資産税の取扱いは、すでに全国で厳しくなっています。
住宅の敷地には、固定資産税の課税標準を軽減する「住宅用地特例」があります。
200㎡以下の小規模住宅用地の場合、固定資産税の課税標準は原則として6分の1です。
しかし、自治体から「管理不全空家」または「特定空家」として勧告を受けると、住宅用地特例を適用できなくなります。
一般に「空き家の固定資産税が6倍になる」と説明されることがありますが、厳密には「課税標準を6分の1とする特例が外れる」という意味です。
負担調整措置などもあるため、実際の税額が必ず一度に6倍になるわけではありませんが、空き家を放置することによって税負担が大きくなる可能性があります。
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」
空き家所有者が今から準備すべきこと
空き家税の対象地域でなくても、空き家を所有している場合は、次の事項を整理しておくことが重要です。
1.現在の利用状況を整理する
まず、所有する住宅がどのような状態にあるかを確認します。
誰かが実際に居住している
別荘として定期的に使用している
荷物を置いているだけ
賃貸募集をしている
売却活動をしている
相続後、何も決めずに保有している
制度によっては、住民票ではなく、実際の利用状況が課税判定に影響します。
住民票を置くだけで課税を避けられるとは考えない方がよいでしょう。
2.賃貸・売却活動の証拠を残す
賃貸や売却を予定している住宅が、課税免除の対象となる制度があります。
ただし、「いつか売却するつもりだった」という説明だけでは不十分です。
次のような資料を保存しておきましょう。
不動産会社との媒介契約書
インターネット上の募集広告
募集開始日が分かる資料
問い合わせや内覧の履歴
売出価格や賃料を変更した記録
実際に市場へ出していることを、客観的に説明できる状態にしておく必要があります。
3.保有を続ける総コストを計算する
空き家の保有には、固定資産税以外にも費用がかかります。
都市計画税
火災保険料
管理委託費
草刈り、換気、通水、清掃費
修繕費
マンションの管理費・修繕積立金
将来の空き家税
建物の老朽化による資産価値の低下
「将来使うかもしれない」という理由だけで保有を続けるのではなく、今後5年、10年の総コストを数字で把握することが重要です。
4.相続登記や共有関係を確認する
売却したくても、相続登記が終わっていないため処分できないケースがあります。
複数人の共有となっている場合は、売却、賃貸、解体のいずれについても、共有者間の調整が必要です。
課税が始まってから話し合うのではなく、登記名義、共有者、遺産分割の状況を早めに確認しておきましょう。
5.売却後の手取り額を試算する
空き家を売却して利益が生じると、原則として譲渡所得に所得税・住民税が課税されます。
相続した一定の空き家については、要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
ただし、建築時期、被相続人の居住状況、売却期限、売却価格、耐震改修や取壊しなど、複数の要件があります。
取得費が分からない場合は、想定以上に譲渡所得が大きくなることもあります。
仲介手数料、解体費、測量費なども含め、売却後にいくら手元へ残るのかを契約前に試算しておくことが大切です。
空き家市場は本当に動くのか
空き家税が導入されれば、売却や賃貸の相談は一定程度増えると考えられます。
毎年の追加負担は、これまで処分を急いでいなかった所有者が、保有方針を見直すきっかけになるためです。
一方、次のような問題を抱える空き家は、税負担が増えても容易には流通しません。
立地が悪く、買い手や借り手が見つからない
建物の老朽化が進んでいる
相続登記が終わっていない
共有者間で意見がまとまらない
接道や再建築に問題がある
残置物や境界の問題がある
市場性の低い住宅では、管理費や解体費に加え、新たな税負担まで生じる可能性があります。
そのため、空き家対策は税金だけでなく、相続、登記、売却、賃貸、改修、解体、資金計画を一体で検討する必要があります。
まとめ
空き家をめぐる政策は、「適切に管理してください」というお願いから、「活用しない場合には負担を求める」という段階へ移りつつあります。
今後、空き家が多い自治体だけでなく、住宅価格が高騰している都市部や、別荘・セカンドハウスが多い観光地にも、同様の制度が広がる可能性があります。
これからは、空き家を「とりあえず保有しておく」という判断にも、明確なコストが伴う時代です。
空き家を相続した場合や、長期間使用していない不動産がある場合には、課税が始まってから慌てて対応するのではなく、売却・賃貸・居住・改修・解体の選択肢を早めに比較しておくことが重要です。



