RSUの確定申告でよくあるミス6選|実際の追徴事例から税理士が解説
更新日:2 日前

外資系企業に勤務していると、給与や賞与とは別に、RSU(Restricted Stock Unit/譲渡制限付株式ユニット)を付与されることがあります。
RSUは、一定の条件を満たした後に株式等を受け取る株式報酬の一種です。
ところが、RSUの確定申告は一般的な給与所得と比べて分かりにくい部分があります。
例えば、
「株を売っていないから、まだ税金はかからないと思っていた」
「会社員なので、勤務先が年末調整で処理していると思っていた」
「海外証券会社に表示されている金額をそのまま使えばよいと思っていた」
といった認識が、申告漏れや計算誤りにつながることがあります。
実際、国税不服審判所には、RSUに係る給与所得を複数年にわたって申告しておらず、修正申告後に過少申告加算税を課された事例や、RSUについて使用する株価・為替レートの時点が争われた事例が公表されています。
本記事では、RSUの確定申告で特に注意したい6つのミスを、実際の公表裁決を交えながら、公認会計士・税理士が分かりやすく解説します。
目次
1. なぜRSUの確定申告は間違いやすいのか?
SO・RS・RSU・PSUの違いから確認したい方は、「SO・RS・RSU・PSUの違いとは?」で各制度の仕組みを比較しています。
RSUの申告が難しい理由は、大きく3つあります。
1-1. 海外親会社から直接付与されることがある
外資系企業では、
通常の給与は日本法人から支給される一方、RSUは米国などの海外親会社から付与される
というケースがあります。
この場合、日本法人から受け取る給与の情報だけを見ていても、株式報酬の全体像を把握できないことがあります。
1-2. 海外証券会社の資料を確認する必要がある
RSUは、E*TRADEなどの海外証券会社で管理されていることがあります。
画面上には、
Grant
Vest
Vesting Schedule
Release
Settlement
Shares Withheld
Sell to Cover
Net Shares
Cost Basis
など、さまざまな用語が表示されます。
問題は、海外証券会社に表示されている数字を、そのまま日本の確定申告書へ転記すればよいとは限らないことです。
日本の税務上、
いつ所得が生じたのか
いくらの所得が生じたのか
どの為替レートを使用するのか
株式売却時の取得価額はいくらなのか
を別途整理する必要があります。
1-3. 「株式報酬」と「株式売却」の2段階がある
RSUで特に重要なのが、この考え方です。
イメージすると、
Grant(付与)
↓
Vest・Settlement等
↓
株式報酬としての課税を検討
↓
株式を保有
↓
Sale(売却)
↓
株式譲渡としての課税を検討
という流れになります。

つまり、
「RSUによって株式等を取得する段階」と「その株式を売却する段階」は別の取引
として考える必要があります。
2. RSUの確定申告でよくあるミス6選
2-1. RSUに係る所得そのものを申告していない
最も注意したいのが、
「株式を売却していないから、まだ税金は発生していない」
と考えてしまうケースです。
株式を売却したかどうかと、株式報酬として所得が生じているかどうかは別問題です。
RSUでは、具体的な契約条件に基づいて、権利確定や株式交付等の時点で給与所得等の課税関係を検討する必要があります。
実際の事例|RSUを4年分申告していなかったケース
2023年12月7日の国税不服審判所の裁決では、国内法人に勤務する従業員が、米国親会社から付与されたRSUの制限解除による利益と、ESPP(従業員持株購入プラン)による経済的利益を受けていました。
しかし、2017年から2020年までの4年分について、これらのインセンティブ報酬に係る給与所得を確定申告に含めていませんでした。
その後、
2022年9月15日:税務署から株式報酬について確認したい旨の電話
9月26日:税理士法人を通じて修正申告
10月28日:過少申告加算税の賦課決定
という流れになっています。
この事例で重要なのは、確定申告そのものをしていなかったわけではなく、RSU等の給与所得だけが申告から漏れていたという点です。
会社員として毎年確定申告をしていても、海外親会社から付与された株式報酬が漏れていれば、申告内容が適正とは限りません。

2-2. 課税時点・株価・為替レートを間違えている
RSUの所得金額を計算する際には、どの日の株価・為替レートを使用するのかが非常に重要です。
例えば、
Grant Date
Vest Date
Settlement Date
株式交付日
Sale Date
は、それぞれ別の日である場合があります。
実際の事例|後日の低い株価で修正申告したケース
2012年3月7日の国税不服審判所の裁決では、納税者が2005年に217口のRSUを付与され、2008年2月8日の確定日に217株を取得していました。
しかし、その年の確定申告では、このRSUに係る給与所得を申告していませんでした。
その後、税務署からの「おたずね」をきっかけに申告漏れに気付き、2010年に修正申告をしました。
ところが、その際に納税者は、
2010年10月13日の株価54.40
を使用してRSUの所得金額を計算しました。
これに対して税務署は、
実際にRSUが確定した2008年2月8日の株価71.87と、その日の為替レート
を使用して所得金額を計算し直しました。
国税不服審判所も税務署側の計算を認めています。
納税者は、「RSUの確定後に株価が大きく下落しているのに、下落前の株価で課税するのは不公平ではないか」という趣旨の主張をしましたが、認められませんでした。
税理士の視点
ここから分かる重要なポイントは、「後になって株価が下落したからといって、税負担が少なくなる日を任意に選んで所得金額を計算することはできない」ということです。
ただし、「RSUならすべて必ずVest日の株価を使う」と一律に判断するのも適切ではありません。
実際には、Award Agreement(付与契約)、権利確定条件、Settlementの方法などを確認し、日本の税務上いつ所得を認識すべきかを判断する必要があります。
2-3. 「RSUは源泉徴収票に含まれている」と思い込んでいる
外資系企業勤務者で注意したいのが、
「会社員なのだから、RSUも勤務先が年末調整してくれているはず」
という思い込みです。
海外親会社から直接付与されたRSUについて、日本法人の源泉徴収票にその金額が含まれているとは限りません。
一方で、勤務先によっては給与明細や源泉徴収票に株式報酬が反映されていることもあります。
そのため、
RSUのVest履歴
↓
給与明細
↓
源泉徴収票
を照合することが重要です。
反対に、すでに源泉徴収票に含まれているRSUを確定申告でもう一度給与所得に加算すると、二重計上になってしまいます。
したがって、「源泉徴収票に入っているはず」でも、「海外親会社からもらったのだから入っていないはず」でもなく、実際の資料を照合して確認することが必要です。
2-4. Net Sharesだけを見て所得を計算している
RSUの管理画面を見ると、Vestした株数と、最終的に口座へ入庫した株数が違うことがあります。
例えば、
100株 Vest
↓
税金等への対応のため30株相当を処理
↓
70株が口座に残る
というケースです。
このとき、口座に残った70株だけを見て、
「自分が受け取ったRSUは70株」
と判断するのは危険です。
確認すべきなのは、
Gross Shares
Shares Vesting
Shares Withheld
Shares Sold
Net Shares
などの内訳です。
「Shares Withheld」と「Sell to Cover」は同じとは限らない
ここは特に注意が必要です。
Sell to Coverは、一般にVestした株式の一部を実際に売却し、その売却代金を税金等へ充当する仕組みです。
一方、Shares Withheldは、会社側が交付株数を減らす形で税額相当を処理する設計などもあり、必ずしも市場で株式が売却されているとは限りません。
したがって、
「Net Sharesが少ない=株式が売却された」
とも、
「単に税金が引かれただけ」
とも決めつけず、Transaction Historyなどで実際の処理を確認する必要があります。
2-5. Sell to Coverによる株式売却を見落としている
RSUでは、税金等の支払いに充てるため、Vest時に株式の一部を自動的に売却する「Sell to Cover」が行われることがあります。
本人としては、「自分で売却ボタンを押していない」ため、株式を売却した認識がないこともあります。
しかし、実際に株式が市場で売却されている場合、日本の税務上もその売却について譲渡損益の確認が必要になる可能性があります。
特に、VestとSell to Coverが同日または近い日に行われているケースでは、値動きが小さいため、「売却益なんてほとんどないから関係ない」と考えがちです。
しかし、まず重要なのは売却取引が存在するかどうかを確認することです。
そのうえで、日本の税務上の取得価額と売却価額を使用して譲渡損益を計算します。

2-6. 株式売却時の譲渡益・取得価額を間違えている
RSUによって株式を取得した後、その株式を売却した場合には、株式譲渡の税務も確認する必要があります。
例えば、株式報酬として100ドル相当の価値を認識した株式を、その後150ドルで売却したとします。
この場合、RSUによって株式を取得した段階と取得後に株価が100ドルから150ドルへ上昇した段階を分けて考える必要があります。
よくある誤解が、
「無料でもらった株だから、取得価額は0円」
というものです。
RSUで取得した株式だからといって、機械的に取得価額を0円とするわけではありません。
一方、「海外証券会社に表示されているCost Basisをそのまま使えばよい」とも限りません。
海外証券会社のCost Basisは、その国の税制や証券会社側の管理ルールを前提として表示されていることがあります。
日本の所得税計算では、株式取得時にどの金額を所得として認識したのか等を踏まえて、日本の税務上の取得価額を確認する必要があります。
また、同じ会社の株式を、
複数回RSUで取得している
ESPPでも取得している
自分でも購入している
といった場合には、取得費の計算がさらに複雑になることがあります。
3. 海外口座のRSUでも税務署は把握できる
「海外証券会社で管理している株式だから、日本の税務署には分からないのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、そうとは限りません。
3-1. 外国親会社の株式報酬には法定調書制度がある
日本の所得税法には、
「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」
という法定調書があります。
一定の場合、外国親会社等から株式報酬などの経済的利益を受けた役員・従業員が勤務する内国法人等が、この調書を税務署へ提出します。
この調書を提出するのは原則として対象となる勤務先法人等であり、RSUを受け取った従業員本人ではありません。
したがって、「海外口座だから申告しなくても分からない」という考え方は持たない方が賢明です。
3-2. 類似するストックオプションでも申告漏れが問題になっている
RSUそのものの全国的な追徴件数ではありませんが、類似する株式報酬であるストックオプションについては、会計検査院が2025年に検査結果を公表しています。
令和3年・令和4年のストックオプション取引について確認したところ、
内容 | 人数 | 金額 |
税制非適格SOの権利行使時の経済的利益を給与収入等に適正に計上していない蓋然性が高かった者 | 34人 | 経済的利益 約41.5億円 |
税制適格SOで取得した株式を譲渡したものの、譲渡所得を申告していない蓋然性が高かった者 | 73人 | 譲渡対価 約13.1億円 |
とされています。
上記は、RSUの統計ではなく、また記載された金額は追徴税額でもありませんが、会計検査院の報告からは、国税庁が法定調書等のデータと所得税申告書のデータを突合し、申告確認を行っていることが分かります。
このことから株式報酬は、「海外の制度だから日本では確認されにくい」と考えるよりも、日本の申告内容と海外の株式報酬資料をきちんと一致させ、適切に申告しておくことが安心です。

4. 過去のRSU申告に間違いがあるかもしれない場合
この記事を読んで、
「過去のRSUを申告していなかったかもしれない」
と気付いた場合は、まず事実関係を整理します。
おすすめは、年ごとにRSUの取引を並べることです。
Step 1. Vest履歴を確認する
海外証券会社の資料から、
Vest Date
Vestした株数
株価
Settlement内容
を確認します。
Step 2. 給与明細と照合する
RSUに相当する金額が給与明細へ反映されているか確認します。
Step 3. 源泉徴収票と照合する
RSUの金額が最終的に源泉徴収票の支払金額等に含まれているか確認します。
Step 4. 過去の確定申告書と比較する
RSUが源泉徴収票に含まれておらず、確定申告にも加算されていなければ、申告漏れの可能性があります。
Step 5. 株式売却も確認する
RSU取得後に、
Sell to Cover
自分で行った株式売却
がないか確認します。
Step 6. 必要に応じて修正申告を検討する
税額を少なく申告していた場合には、修正申告によって訂正します。
税務署からの調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合と、調査後等に修正する場合とでは、過少申告加算税の取扱いが異なることがあります。

5. RSUの確定申告で確認したい資料
RSUの申告では、次のような資料を確認します。
資料 | 主な確認内容 |
Award Agreement | RSUの契約条件 |
Grant Notice | Grant日・付与数 |
Vesting Schedule | Vest予定 |
Vesting Details | 実際のVest日・株数・株価 |
Settlement情報 | 株式交付等の内容 |
給与明細 | RSUの給与反映状況 |
源泉徴収票 | 日本の給与収入への反映状況 |
Transaction History | Sell to Cover・売却取引 |
Cost Basis情報 | 証券会社側の取得価額情報 |
Annual Statement | 1年間の株式取引全体 |
特に重要なのは、海外証券会社の資料だけを見るのではなく、給与明細・源泉徴収票・確定申告書まで横断して確認することです。
6. まとめ
RSUの確定申告では、次の3点が特に重要です。
① 株式を売却していなくても、RSUについて日本で課税関係が生じる場合がある
② 株式報酬として所得が生じる段階と、その株式を売却する段階は分けて考える
③ 海外証券会社の表示だけで判断せず、Vest履歴・給与明細・源泉徴収票・売却履歴を照合する
実際に、RSUに係る給与所得の申告漏れや、使用する株価・為替レートの時点を巡って、更正や過少申告加算税が問題となった公表裁決があります。
RSUは、本人が意図的に申告しなかった場合だけでなく、
「勤務先で処理済みだと思っていた」
「海外証券会社の資料の見方が分からなかった」
「どの株価・為替を使えばよいか分からなかった」
といった理由でも申告を誤る可能性があります。
そのため、RSUを受け取っている場合には、毎年の確定申告時に取引内容を整理しておくことが重要です。
アポロ税理士法人では、外資系企業勤務者のRSU・SO等の株式報酬について、日本での確定申告をサポートしています。
例えば、
「過去のRSUを申告していなかったかもしれない」
「RSUが源泉徴収票に含まれているのか分からない」
「E*TRADEのどの資料を確認すればよいか分からない」
「Sell to Coverが行われているが、どう処理すればよいか分からない」
「RSUを売却したが、日本の税務上の取得価額が分からない」
「以前自分で申告したが、計算が正しかったか確認したい」
「税務署から株式報酬について問い合わせがあった」
といった場合には、Award Agreement、Vest履歴、海外証券会社のStatement、給与明細、源泉徴収票などを確認し、取引を時系列で整理することが重要です。
アポロ税理士法人では、公認会計士・税理士が株式報酬の制度内容から、日本での所得税計算、取得後の株式売却まで一連の取引を確認して対応します。
RSU等の株式報酬を含む確定申告でお困りの場合は、アポロ税理士法人までご相談ください。

監修者
志田 宏樹
公認会計士・税理士・宅地建物取引士
監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。
専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継
参考資料・出典
※本記事は2026年9月現在の法令・公表資料等に基づき、RSUに関する一般的な税務上の留意点を解説したものです。
RSUの課税時期や所得区分、株式の取得価額等は、Award Agreement、Vesting Schedule、Settlement方法、居住者・非居住者の区分、勤務期間その他の事実関係によって異なる場合があります。個別案件については、実際の資料を確認したうえで判断する必要があります。

