【不動産投資を見極める5つの視点|第2回】不動産会社の提案を信用していい?購入前に確認したい7つのポイント
不動産会社から「利回り約7.5%の物件です」と説明されたら、どこを確認するでしょうか。数字だけを見ると魅力的ですが、それだけで購入判断はできません。
今回は、取得費7,300万円、借入6,000万円、年2.45%・30年元利均等返済という収支モデルで、販売資料を検証する7つのポイントを考えます。相手を疑うためではなく、提案を自分の言葉で説明できるようにするための確認です。
この記事のポイント|1分で分かる
02 今回のモデル 取得費7,300万円・借入6,000万円、金利2.45% |
CF 税引前の手残り 年間約163万円(収支が続くと仮定) |
会計 帳簿上の損失 約480万円。税務上の損益通算と別 |
目次
05 購入を急ぐべきでない場合
1.結論|数字の根拠が分かる提案かどうか
同じ「年間家賃550万円」でも、全額が現在の契約家賃なのか、更新料を含むのか、空室の想定を含むのかで意味は変わります。
売主や販売会社の資料を確認するときは、契約に基づく実績、将来の想定、購入後の支出を分けてください。質問に対して、原資料や具体的な条件で説明できるかが重要です。
2.購入前に確認したい7つのポイント
01|賃料と更新料を分けているか
このモデルでは賃料約536万円、更新料等約12万円、賃貸収入合計約547万円です。更新料は毎年必ず同じ金額になるとは限りません。賃貸借契約書、レントロール、入金明細で、経常的な家賃と一時的な収入を分けて確認します。
02|表面利回りの分母・分子は何か
取得費7,300万円に対し賃貸収入547万円なら表面利回りは約7.5%です。取得諸費用を別途負担する場合、総投資額に対する利回りは下がります。物件価格と取得費、手数料等の関係を確認し、比較条件を揃えましょう。
03|運営経費に不足がないか
このモデルでは管理費約29万円、修繕費約23万円、租税公課約31万円、その他費用を含めて年間の現金経費約102万円としています。過去の実績がこの金額でも、大規模修繕や設備更新は別に必要になる可能性があります。
04|融資条件と実際の返済額はどうか
借入6,000万円、2.45%、30年元利均等で年間返済は約283万円です。「毎月いくら借りられるか」ではなく、家賃と経費を差し引いた金額で返済を続けられるか確認します。
05|建物・設備・契約の資料はあるか
登記、重要事項説明書、建築・修繕資料、設備の点検報告、賃貸借契約、管理委託契約などを見ます。機械式駐車設備や古い給排水設備の更新が迫っていれば、追加の費用が必要になる場合があります。
06|出口の売却価格と借入残高を比較しているか
数年後の売却価格を一つに決めてしまわず、価格が変わる場合も想定します。ローン残高に加えて、仲介手数料、譲渡税、繰上返済費用などの有無を確認しましょう。
07|税務上の赤字と現金収支を区別しているか
減価償却費約762万円と長期前払費用償却約19万円を入れると、借入条件に合わせた帳簿損失は約480万円というモデルになります。しかし損失額がそのまま節税額になるわけではありません。土地取得に係る負債利子相当額など、損益通算の制限も確認します。
01 賃料実績・更新料 契約家賃と一時的収入を分ける |
02 表面利回り 取得費7,300万円の範囲と諸費用を確認 |
03 現金の運営費用 管理費、修繕費、租税公課等の実績を確認 |
04 借入条件 利率・返済期間・元金と利息の内訳を確認 |
05 設備・法務 長期修繕、登記、賃貸借契約を確認 |
06 売却時の手残り 価格・残債・費用・譲渡税を比較 |
07 税務と収支の違い 減価償却や損益通算の前提を検証 |
3.販売資料を、自分の収支表に置き直す
取得費 7,300万円 借入6,000万円、単純差額の自己資金約1,300万円。諸費用等は別途確認 |
借入条件 年2.45%・30年・元利均等 月返済約23.6万円 |
賃料+更新料 約547万円/年 賃料約536万円、更新料等約12万円 |
その他収入 約1万円/年 総収入約548万円 |
運営の現金経費 約102万円/年 管理・修繕・租税公課・水道光熱・広告等 |
元利返済 約283万円/年 初年度利息約145万円+元本約137万円 |
税引前の手残り 約163万円/年 その他の設備更新・所得税・購入諸費用等は別 |
このモデルで年間総収入約548万円から現金経費約102万円、元利返済約283万円を引くと、税引前の手残りは約163万円です。
ただし、これは空室や追加修繕が悪化しない場合のモデルです。賃貸収入が1割減ると手残りは約109万円、さらに100万円の追加修繕があれば約9万円まで縮みます。
4.資料と借入条件が一致しないとき
別の収支例で支払利息が約161万円と記載されています。一方、借入6,000万円・2.45%・30年元利均等から計算した初年度利息は約145万円です。
この差は約16万円あります。借入実行日、対象期間、借入残高、別の借入や諸費用等が関係していないか確認が必要です。一致しない数字を、説明のないまま一つの計算に混ぜないことが大切です。
5.購入を急ぐべきでない場合
必要な契約書や修繕履歴を確認できない、家賃査定の根拠が示されない、追加費用を含む収支が説明できない。こうした場合は確認が済むまで契約を保留することも合理的です。
販売会社を信頼するかどうかとは別に、投資家自身の責任で数字を確認する姿勢が必要です。
6.まとめ|「良さそう」から「説明できる」へ
販売資料には、家賃、修繕、融資、税金、売却の前提が重なっています。一つずつ根拠を確認し、通常・悪化・売却の三つの場面で手残りを説明できるようにしましょう。
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監修者
月方 智彦
公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として税務・会計の実務に携わり、事業経営や不動産保有の当事者としての経験も持つ。企業経営者や不動産オーナーの税務・財務・相続を横断して考え、必要に応じて各分野の専門家と連携した支援を重視している。
専門分野:法人・不動産税務/相続・贈与/財務・資金繰り/事業承継
シリーズ記事|全5回の目次
このシリーズでは、取得費7,300万円・借入6,000万円の共通モデルを使い、投資判断を5つの視点から解説します。
第2回|不動産会社の提案を信用していい?購入前に確認したい7つのポイント
※この数値例は収入・経費・減価償却費等を一定の条件で置いた参考モデルです。借入の元利返済と初年度利息は年2.45%・30年元利均等で別途試算しています。取得諸費用、将来の修繕、土地・建物の内訳、申告上の適用要件や実際の税金等により、結果は変わります。


