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追加融資はいくら受けられる?銀行の融資可能額が決まる条件と確認方法

10月20日
読了時間: 12分

更新日:6 日前

銀行担当者と追加融資について資金計画を打ち合わせする経営者のイメージ

「銀行から、あといくら借りられるのでしょうか?」

設備投資や大型仕入れ、新規事業などを検討している経営者にとって、非常に重要な質問です。

ところが、この質問に対して「年商の○%まで」「月商の3か月分まで」のように、一つの数字で答えることはできません。一方で、「銀行に聞いてみなければ分かりません」だけでも、経営判断には使えません。

実際の融資額は、会社側の必要資金や返済能力だけでなく、金融機関の融資方針、既存取引、資金使途、返済期間、担保・保証など、複数の条件を組み合わせて決まります。

自社の資金計画に対して、どの金融機関が、どの条件で、いくらまで検討できるのか。

さらに実務では、その金額の「確度」と「実行時期」まで確認することが重要です。

この記事では、既に事業を行い、銀行借入もある中小企業を前提として、今回さらにいくら借りられるのか――「追加融資額」をどう具体化していくかを解説します。

目次

1.結論|追加融資額は一つの計算式では決まらない

銀行から今回新たに借りられる金額は、「年商×○%」や「利益×○年」といった一つの計算式だけでは決まりません。

実務では、大きく次の4つを確認しながら融資額を具体化していきます。

  1. 今回、何にいくら必要なのか

  2. 既存借入を含めて返済できるのか

  3. その金融機関がどこまで融資を検討できるのか

  4. 金額・返済期間・金利・担保・保証など、どの条件なら成立するのか


追加融資額を考える際の必要資金・返済可能性・金融機関の判断・融資条件の4つの確認軸

例えば現在2億円の銀行借入がある会社が、新たな設備投資のために8,000万円を借りたいとします。

このとき知りたいのは、

「会社全体として何億円まで借りられるのか」

という抽象的な数字ではなく、

現在の借入・業績・今回の設備投資を前提に、さらに8,000万円を調達できるのか

です。


会社全体としてどの程度の借入水準が適切なのかについては、「借入金は多いほど悪い?中小企業の適正借入額と「どう借りるか」を解説」で詳しく解説しています。

今回の記事では、その次の段階である「銀行が今回どこまで追加融資を検討できるか」に焦点を当てます。

2.融資商品の「上限額」と、自社が借りられる金額は違う

「月商○か月」という考え方を採用する融資商品は実際にあります。しかし、それは商品固有の条件であって、銀行融資全体の共通ルールではありません。

例えば埼玉りそな銀行の法人向けビジネスローン「埼玉倶楽部」や、四国銀行の「税理士パートナーローン」には、平均月商を基準とした上限があります。

また、日本政策金融公庫の一般貸付にも制度上の融資限度額がありますが、審査結果によって希望に沿えない場合があることが明記されています。

商品上の最大融資額 ≠ 自社が実際に借りられる額

経営者が確認したいのは、「その商品はいくらまで使えるか」ではなく、自社の今回の計画なら現実的にいくらまで検討してもらえるかです。

3.銀行へ相談する前に「希望借入額」を自社で決める

ある会社が1億円の設備投資を予定しているとします。

  • 設備投資総額:1億円

  • 自己資金:2,000万円

  • 希望借入額:8,000万円

銀行に「いくら貸せますか?」とだけ聞くのではなく、まず会社側で、なぜ8,000万円必要なのかを説明できるようにします。

例えば、運転資金や不測の支出に備えて一定額の現預金を残すために8,000万円を希望する、という資金計画です。既存借入と合わせた年間返済額も確認し、銀行へ相談する金額として合理性があるかを自社側で整理します。

4.同じ会社でも、銀行によって融資額は違う

私自身、これまで多数の金融機関と資金調達について交渉してきましたが、金融機関によって融資に対するスタンスや検討可能な金額が大きく異なることは何度もありました。

ある金融機関では事業内容を深く理解してもらい、継続的に積極的な融資を検討してもらえる。一方で、財務内容に大きな問題がなくても、その金融機関の業種方針や融資方針と合わず、融資に消極的になることもあります。

こうした実務感覚は、地域金融機関を対象としたRIETIのインタビュー調査とも整合します。同調査では、支店長が最終決裁できる融資案件の規模などは金融機関によってかなり異なり、融資判断では財務情報だけでなく定性情報も利用されていることが報告されています。

したがって、

「この会社なら絶対に○億円まで借りられる」という一つの融資可能額が存在するわけではありません。

実務では、

「この金融機関なら、今回の案件について、どの条件でどこまで検討できるか」

を確認していくことになります。


銀行が決算書や事業内容のどこを見るかは「銀行は決算書のどこを見る?融資審査は数字だけでは決まらない」で詳しく解説しています。

5.銀行が社内で説明できる情報を提供する

私が資金調達を担当していたとき、特に意識していたのが、「銀行担当者が自社を理解し、銀行内部で説明できる状態をつくること」でした。

そのため、月次試算表、借入金一覧、在庫一覧などを定期的に提出し、四半期では計画対比、年次では経営計画を共有していました。必要に応じて事業別損益、販売実績、仕入状況、事業モデル全体を説明する資料、決算数値の変動理由、将来計画なども説明していました。

目的は、単に資料をたくさん提出することではなく、銀行員が稟議を書くときに困らない状態をつくることです。

実際に、金融機関の担当者と将来計画や説明の仕方を一緒に詰めながら、銀行内部で説明しやすい形に整理したこともあります。

関西の中小企業データを用いたUchida・Udell・Yamoriの研究では、融資担当者との接触頻度が高く、担当者の交代が少ないほど、企業に関するソフト情報が蓄積される傾向が確認されています。

これは「銀行担当者と仲良くなれば融資してもらえる」という話ではなく、正確な情報を継続して伝える、約束を守る、そして都合の悪い情報も隠さない、そうした小さな積み重ねが重要ということです。

特に中小・オーナー企業の融資実務では、小さな信用の積み重ねが重要だと感じています。


金融機関へ提出する資料や作り方については「銀行融資ではどんな資料を提出する?銀行員が会社を理解しやすい資料の作り方を解説」で整理しています。

6.希望額に届かなければ「何が制約なのか」を聞く

8,000万円を希望して銀行へ相談したところ、「5,000万円までなら検討できます」と言われたとします。ここで重要なのは、

「では5,000万円しか借りられないのですね」

で終わらせないことです。確認したいのは、

なぜ5,000万円なのか?

です。

原因が返済能力なのか、自己資本・財務内容なのか、資金使途なのか、商品上限なのか、担保・保証なのか、金融機関の融資方針なのか、情報不足なのか、時間なのかによって、次の対応は変わります。

主な制約

次に確認・検討すること

返済能力

借入額、投資額、返済期間、投資時期

自己資本・財務内容

自己資金、財務改善

資金使途

必要額や投資内容の再整理

商品上限

別商品・別スキーム

担保・保証

保全条件の変更可否

金融機関の融資方針

他金融機関を含めた検討

情報不足

試算表、計画、事業説明等の追加

時間

別の調達手段・バックアップの検討

これまでの金融機関とのやり取りでも、

「いくらまで可能ですか?」だけではなく、「希望額が難しい場合、何がネックになっていますか?」

と確認することを重視してきました。

原因が分からなければ、対応策も決まりません。

会社全体の返済能力に問題があるのであれば、銀行を変えるだけでは根本的な解決にならない可能性があります。

一方、その金融機関の商品条件や融資方針が理由なら、他の商品や金融機関を検討しましょう。

7.融資条件は「金額・期間・金利」をセットで考える

融資の比較では金利に目が行きがちですが、金利が一番低い融資が、必ず会社にとって最も良い融資とは限りません。

これまで資金調達を担当してきた経験では、私は融資条件を考える際、「金額 → 期間 → 金利」の順で重視することが多くありました。

これはすべての企業に当てはまる絶対的な順序ではありませんが、会社が8,000万円を必要としているのに、金利が低いという理由だけで5,000万円しか調達できなければ、残り3,000万円を別の方法で確保する必要があります。また、返済期間も重要です。同じ金額を借りても、返済期間が短ければ毎年の元本返済額は大きくなり、現預金が減るスピードも速くなります。

そのため、実務では、必要な融資額を確保するために多少金利条件を調整する、返済期間を長めに確保する、投資直後のキャッシュフローを考慮し一定期間の元本返済据置きを相談する、といった交渉を行うこともありました。

目的は「とにかく長く借りること」でも「一番安く借りること」でもなく、会社に必要な資金を、手元資金を過度に減らさず、無理のない返済条件で確保することです。

8.融資は「金額 × 確度 × 時間」で管理する

融資は、担当者との相談から始まり、金融機関内部の検討・審査・承認、条件確定、契約、実行へ進みます。

具体的な決裁プロセスは金融機関や案件によって異なります。RIETIの調査でも、案件規模等によって支店で決裁できる範囲には金融機関ごとにかなり差があることが確認されています。

決済直前に融資が否決された経験

融資審査の進み方や回答の遅さから「このまま一行だけに任せるのは少し危ない」と感じ、あらかじめ別の金融機関にも相談していたケースです。「他行で先に融資が決まった場合には、依頼を取り下げる可能性があります」と最初から伝えていました。

結果として当初の金融機関が決済直前に融資できなくなりましたが、事前に別の金融機関へ動いていたため、資金調達を切り替えて決済に対応できました。

一方、別の案件では、支店で前向きに進んでいたため他行へ並行相談しておらず、決済直前になって本部審査で融資が難しくなりました。このときは会社の手元資金でいったん決済し、その後、他の金融機関でバックファイナンスについて交渉しました。

最終的には資金を調達できましたが、決済後から金融機関を探して条件を説明し、融資を組み直す必要があり、かなり大変な対応になりました。

自己資金で先に決済すれば後から必ず融資を受けられるという保証はありません。バックファイナンスが可能かどうかは金融機関や資金使途、案件によって異なるため、可能であれば決済前に金融機関へ確認しておくべきです。

この2つの経験から学んだこと

融資は「金額 × 確度 × 時間」で管理する。
銀行融資を金額・確度・時間の3つの視点で管理しバックアップ調達を考える図
  • 審査はどの段階まで進んでいるか

  • 本部審査まで終わっているか

  • いつ最終回答が出るか

  • いつ融資実行できるか

  • 間に合わなかった場合の代替手段はあるか

私の経験では、進捗に不安を感じたときに早めに次の手を打った案件と、そうしなかった案件では、その後の負担が大きく違いました。確度が十分でない段階から「もし出なかったらどうするか」まで考えておくことが重要です。


9.複数行へ相談する場合は、バックアップと信頼の両方を考える

資金調達先を複数持っておくことには意味があります。一方で私は、個別案件について「とにかく多くの銀行へ同時に融資を依頼すればよい」とは考えていません。

銀行側も、融資案件について資料を確認し、会社を分析し、稟議を作成し、社内で説明します。複数行へ毎回同じ案件を依頼し、最終的にほとんど断ることを繰り返せば、長期的な関係にも影響する可能性があります。

ただし、新規取引で確度が読めない、大型案件である、決済期限が厳しい、一行だけでは金額が足りない、といった場合には複数の金融機関へ並行して相談することもあります。その場合に重要なのは、他行にも相談していることを隠さないことです。

平時から複数の金融機関と関係を持つことと、一つの案件をむやみに何行にも同時依頼することは別です。

10.「あといくら借りられるか」は平時から更新しておく

融資可能額は、一度確認したらずっと同じではありません。会社の業績、現預金、自己資本、借入残高、在庫、設備投資、事業計画が変われば、金融機関の見方も変わります。

私自身、資金が必要になったときだけ銀行へ説明するのではなく、月次の業績や借入状況、事業計画、大きな投資予定などを継続して共有することを重視していました。

「あといくら借りられるか」は、年に一度確認する固定値ではなく、経営環境に応じて更新していく財務情報の一つと考えるのがよいでしょう。

まとめ|必要な資金を、必要な時期に、無理のない条件で確保する

まず会社側で、何にいくら必要なのか、自己資金をいくら使うのか、現在の借入はいくらあるのか、新しい借入をどう返済するのか、どの程度の手元資金を残したいのかを整理します。

そのうえで金融機関へ、「この資金計画なら、どの程度の金額・期間で検討できますか」と相談します。希望額に届かなければ「何が制約になっていますか」まで確認しましょう。

銀行融資で本当に重要なのは「最大でいくら貸してもらえるか」だけではなく、会社に必要な資金を、必要な時期に、手元資金を過度に減らさず、無理のない条件で確保できる状態を作ることです。

これが、企業財務における資金調達の重要な役割だと考えています。

自社の資金調達余力を整理したい経営者の方へ

アポロアカウンティングファームでは、決算書・試算表・借入状況・資金繰り・今後の投資計画を確認しながら、資金調達方針や金融機関への説明資料、借入条件の整理を支援しています。

「大型投資を予定しているが、どの程度の融資を見込めるか分からない」「金融機関ごとの調達余力を整理したい」「銀行へどのように説明すればよいか整理したい」といった場合もご相談ください。

税務上の検討が必要となる場合には、アポロ税理士法人とも連携して対応します。


志田宏樹

監修者

志田 宏樹

公認会計士・税理士・宅地建物取引士


監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。


専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継

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