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借入金は多いほど悪い?中小企業の適正借入額と「どう借りるか」を解説

10月16日
読了時間: 15分

更新日:6 日前

経営者と財務の専門家が借入計画や資金繰りを相談するイメージ

「会社の借入金が増えてきた。このまま借り続けても大丈夫なのだろうか」

「借金は少ないほど安全なのではないか」

「銀行から借りられるなら、借りて現金を残しておいた方がいいのか」

経営者からよく受ける相談です。

結論からいうと、借入金は少なければ少ないほど良い、というものではありません。

借入によって、設備投資、仕入、人材採用、新規出店、不動産取得などを行い、自己資金だけでは実現できなかった成長機会をつかめることがあります。

一方で、借入が増えれば利息と元本返済の負担も増えます。日本銀行も、中小・零細企業について、利払い能力だけではなく、レバレッジと手元流動性の状況によってデフォルト率の上昇幅が変わり得ると指摘しています。

借りるか、借りないかではありません。いくら借り、何年で返し、どれだけ現金を残し、どれだけ追加調達できる余地を持つかです。

借入が多すぎないかを見る5つのポイント

見るもの

意味

借入金月商倍率

売上規模に対して借入がどの程度か

債務償還年数

今の収益力なら何年程度で返せるか

D/Eレシオ

自己資本に対して有利子負債をどの程度使っているか

手元流動性

入金が止まった場合に何か月耐えられるか

返済予定・追加調達余力

近い将来の返済と、あといくら借りられそうか


この記事では、中小企業・オーナー企業の経営者向けに、借入金をどのように考え、管理すればよいのかを実務的に整理します。

目次

1.結論|借入は「多い・少ない」だけでは判断できない


例えば、借入金が1億円ある会社と10億円ある会社があったとします。借入残高だけを見れば、10億円の会社の方が危険に見えるかもしれません。

しかし、10億円を借りている会社が毎年5億円のキャッシュを安定的に生み出している一方、1億円の会社が年間1,000万円しか生み出していなければ、話は変わります。

さらに、返済期間、現預金、返済期限の集中、追加調達余力によっても安全性は大きく異なります。

借入額 × 返済力 × 手元現金 × 返済期間 × 調達余力

この5つを組み合わせて見ることが、この記事の基本的な考え方です。

2.まず知っておきたいD/Eレシオ


借入金の多さを考えるときによく使われる指標の一つが、D/Eレシオです。

D/Eレシオ = 有利子負債 ÷ 自己資本

例えば、有利子負債が2億円、自己資本が1億円なら、2億円÷1億円=2.0倍です。自己資本1円に対して、何円の有利子負債を使っているかを見るイメージです。

D/Eレシオが高くなるほど、一般的には財務レバレッジが高い状態になります。

ただし、D/Eレシオが高い=すぐ危険、ではありません。D/Eだけでは、現預金、キャッシュ創出力、返済期間、資金使途が分からないからです。

また、自己資本が極端に小さい会社や債務超過会社ではD/Eが極端な数字となり、単純な倍率比較が適さないことにも注意が必要です。

金融機関が決算書や自己資本比率などをどのように見るかは、関連記事「銀行は決算書のどこを見る?融資審査は数字だけでは決まらない」で詳しく解説しています。

3.高レバレッジほどリスクは高い|借入を軽視してはいけない


「借入額だけでは判断できない」と聞くと、「それなら借りられるだけ借りてもよいのでは」と思うかもしれません。そうではありません。

日本銀行の金融システムレポートでは、借入超の企業について、利払い能力を示すICR(※)が低下した場合のデフォルト率の上昇幅は、レバレッジや手元流動性によって変化し得るとされています。

借入には成長を支えるメリットがある。一方で、過度なレバレッジには明確なリスクがある。

目的は借入を増やすことでも、借入をゼロにすることでもありません。会社が倒れにくい範囲で借入を経営に活用することです。

※インタレスト・カバレッジ・レシオ。営業利益 ÷ 支払利息で表す。利益で利息をどれだけカバーできるかを見る指標

4.結局、借入金はいくらまで?|3つの物差しと簡易ストレステスト


適正借入額について、すべての企業に当てはまる万能な数字はありません。そこで、最初に3つの物差しで点検します。

① 借入金月商倍率

借入金月商倍率は、借入金÷月商で計算します。年商6億円なら月商5,000万円。借入金が1億5,000万円なら3か月です。

なお、2022年版中小企業白書では、借入に「大いに過剰感がある」と回答した企業では借入金月商倍率5倍超が半数以上である一方、「ほとんど過剰感がない」と回答した企業では2倍以下が多いという結果が示されています。

借入金月商倍率

最初の点検としての見方

2か月以下

相対的に借入負担が軽い可能性。ただし安全を意味しない

2か月超~5か月以下

返済能力・手元現金・業種をあわせて確認

5か月超

借入負担を詳しく確認したい水準

この2倍・5倍は、安全と危険を分ける境界線でも銀行の融資基準でもありません。白書における企業の借入過剰感と月商倍率の分布を、経営者が自社を見る最初の参考値として整理したものです。ただし、不動産業や設備産業では、月商倍率だけで判断しにくい場合がありますので留意が必要です。


② 債務償還年数

次に、今の収益力なら借入金を何年程度で返せるかを見ます。簡便的には、(短期借入金+長期借入金)÷(営業利益+減価償却費)という見方があります。

借入金1億5,000万円、営業利益+減価償却費3,000万円なら、簡便的な債務償還年数は5年です。つまり、現在の収益力が続くと仮定した場合、借入金を返済するのに約5年かかるというイメージです。

中小企業庁の「中小会計要領」の手引きでは、営業キャッシュフローを用いた債務償還年数について、一般に10年以内であれば債務返済能力が高いと考えられる旨が示されています。

また、これまで金融機関と取引してきた中では、「債務償還年数が10年を超えると、原則として新規融資が難しくなる」という内部基準を設けていたケースもありました。

もちろん、すべての金融機関が同じ「10年」という基準で融資判断をしているわけではありません。


金融機関によって、

- 債務償還年数の計算方法

- 正常運転資金を控除するか

- 利益に何を使うか

- 業種特性をどう見るか

- 担保や保証をどう評価するか

などは異なります。


したがって、

「10年以内なら必ず融資が通る」

「10年を超えたら必ず融資を断られる」

ということではありません。

ただし、経営者が自社の借入負担を確認するうえでは、債務償還年数が10年を大きく超えていないかは、一つの重要なチェックポイントになります。


③ 手元流動性

そして、私が特に重視するのが手元キャッシュです。単純には現預金÷月商を見る方法がありますが、経営管理では現預金÷毎月発生する固定的な現金支出で考えると実態が見えやすくなります。

例えば毎月3,000万円の支払いがあり、現預金9,000万円なら、売上入金が止まった場合に単純計算で約3か月耐えられるという見方ができます。

重要なのは「現金は月商の何か月分が正解か」ではなく、自社は入金が止まったら何か月耐えられるのかを把握することです。

最後に簡易ストレステストをする

平常時に返せるだけでは十分ではありません。次のような逆風が起きた場合も資金が回るかを確認します。

  • 売上が6か月間20%下がったらどうなるか

  • 大口入金が2か月遅れたらどうなるか

  • 金利が1ポイント上がったらどうなるか

  • 予定していた借換えができなかったらどうなるか

  • 想定外の納税・修繕・設備支出が発生したらどうなるか

20%、2か月、1ポイントは説明用の例であり基準ではありません。自社に現実的なストレス条件を置き、その場合でも現預金が底をつかず返済を続けられるかを確認します。

適正借入額とは、平常時に返せる額ではなく、多少の逆風があっても会社を継続できる借入水準かどうかで考える。

5.同じ1.5億円の借入でも、安全性は全く違う


A社とB社はいずれも年商6億円、借入金1億5,000万円とします。借入金月商倍率は両社とも3か月です。

項目

A社

B社

年商

6億円

6億円

借入金

1.5億円

1.5億円

借入金月商倍率

3.0か月

3.0か月

自己資本

1億円

3,000万円

D/Eレシオ

1.5倍

5.0倍

現預金

1億円

1,000万円

営業利益+減価償却費

4,000万円

1,000万円

簡便的な債務償還年数

3.75年

15年


借入残高も月商倍率も同じですが、A社は自己資本が厚く、現金があり、返済原資も大きい。一方、B社は高レバレッジで、手元現金が薄く、返済原資も小さい状態です。

同じ「借入金1.5億円」でも、A社には追加投資や不測の事態への余力がある一方、B社は業績悪化や入金遅延が発生したときの耐久力が低いと考えられます。

レバレッジと流動性は分けて見る


手元現金が厚い

手元現金が薄い

借入負担が軽い

比較的安定

借入は少なくても資金繰りに注意

借入負担が重い

当面の流動性はあるが中長期の返済力を確認

特に注意が必要


借入が少なくても、現金がなければ必ずしも安全ではありません。

6.Cash is King|黒字でも現金がなければ会社は続かない


財務を考えるうえで、私はCash is Kingという考え方を非常に重視しています。

会計上の利益はもちろん重要です。しかし、給与、税金、仕入代金、設備投資、借入返済など、会社の支払いに必要なのは利益ではなく現金です。

例えば税引後利益が3,000万円出ていても、年間の借入元本返済が5,000万円あれば、他の要因を無視しても利益だけでは資金流出を賄えません。しかも借入元本の返済は損益計算書上の費用ではないため、利益が出ていても預金残高は減ることがあります。

売掛金や在庫が増える場合も同じです。会計上は利益が出ていても、現金化されるまでには時間がかかります。

会社が行き詰まるのは、赤字になった瞬間ではありません。

必要な支払いができる現金を失ったときです。

だから私は、借入残高を減らすこと自体を財務の目的にはしていません。

重要なのは、事業を継続できるだけの手元資金を確保し、不測の事態に耐えながら、必要な投資や仕入れ、採用などの成長機会にも対応できる状態をつくることです。

借入返済ももちろん重要ですが、それは財務管理の目的の一つにすぎません。

手元キャッシュを厚く持つことは、会社を守るだけでなく、経営の選択肢を増やすことでもあります。


7.借入期間は短くしすぎない|手元キャッシュを守る


借入を考えるとき、金額と同じくらい重要なのが返済期間です。

1億円を借りた場合、金利等を無視した単純例では、返済期間によって年間元本返済額は次のように変わります。

返済期間

年間元本返済額

5年

約2,000万円

10年

約1,000万円

15年

約667万円


同じ1億円を借りても、5年返済と15年返済では、毎年会社から出ていく元本返済額が大きく違います。

これは単に「返済が楽になる」という話ではありません。

返済期間を長く確保するほど、手元資金が減る速度を抑えることができます。

例えば、会社が年間3,000万円のキャッシュを生み出しているとします。

5年返済で毎年2,000万円を返済すれば、単純化すると手元に残るのは1,000万円です。

一方、10年返済で年間返済額が1,000万円なら、手元には2,000万円を残すことができます。

この差は1年だけを見ると1,000万円ですが、数年間積み重なれば大きな違いになります。


手元資金が厚くなれば、

- 売上が一時的に落ちたとき

- 大口入金が遅れたとき

- 想定外の修繕や納税が発生したとき

- 新しい設備投資や仕入れの機会が来たとき

にも対応しやすくなります。


つまり、返済期間を長く取ることは、単に返済負担を軽くするためではなく、会社の手元流動性と経営の選択肢を残すためでもあります。


返済期限の集中にも注意する

借入5億円を10年間に分散して返済する会社と、2年後に4億円の満期が来る会社では、同じ5億円でもリスクが違います。今後12か月、24か月、36か月でいくら返済期限が来るのかを一覧で把握しておくことが重要です。

8.多額の借入を活用する大企業も「財務構造」を管理している


多額の有利子負債を活用している大企業を見ても、借入額だけで財務を管理しているわけではありません。

NTT

NTTの2025年度の有利子負債は15兆7,116億円、D/Eレシオは1.01倍です。NTT

一方、NTTは財務健全性の指標として、2030年度に金融事業を除く有利子負債/EBITDA倍率を3.5倍程度まで低下させる方針を示しています。

つまり、多額の負債を持ちながら、それを支える利益・キャッシュ創出力とのバランスを管理しています。

三井不動産

三井不動産の2026年3月期の有利子負債は4兆6,325億円、D/Eレシオは1.41倍です。

同社は長期経営方針の中で、主要格付け機関のA格維持を意識し、D/Eレシオを1.2~1.5倍程度に管理する方針を示しています。


大企業の事例から学ぶべきなのは「借入が多くても大丈夫」ということではなく、借入額・収益力・自己資本・流動性・調達余力を一体で管理していることです。

9.金融機関を分散し、「あといくら借りられるか」を把握する


私は借入管理では、現在いくら借りているかと同じくらい、「必要になったとき、あといくら借りられそうか」が重要だと考えています。

これは決算書から自動的に出てくる数字ではありません。金融機関との日常的な関係の中で把握する必要があります。

A銀行(記載例)

項目

内容

現在借入

1.5億円

未使用枠

5,000万円

社内想定の追加調達余力

5,000万~1億円程度

根拠・条件

決算説明時に前向き。長期運転なら検討可能との感触

最終確認

2026/9

B信用金庫(記載例)

項目

内容

現在借入

8,000万円

未使用枠

―

社内想定の追加調達余力

3,000万円程度

根拠・条件

設備資金であれば検討余地

最終確認

2026/8

C銀行(記載例)

項目

内容

現在借入

0円

未使用枠

―

社内想定の追加調達余力

未確定

根拠・条件

新規取引を打診中

最終確認

2026/10


この「追加調達余力」は銀行の確約額ではなく、自社側で持つ資金調達可能性の管理表です。

日頃から金融機関へ業績や事業計画を説明していれば、「今の当社の決算内容なら、追加融資を検討するとすればどの程度のレンジでしょうか」「長期運転資金ならどの程度ですか」と具体的に聞くことができます。

銀行と仲良くなるとは、飲みに行くことではありません。定期的に数字・事業計画・課題を共有し、本音で融資余力を相談できる関係をつくることです。

半年~1年ごとに各金融機関のスタンスを更新しておけば、急な投資や資金需要が生じたときにも選択肢を持てます。調達余力も会社の財務力の一部です。

銀行担当者に会社を理解してもらうための資料づくりは、関連記事「銀行融資ではどんな資料を提出する?」で詳しく解説しています。

10.不動産会社では「借入」と「資産」をセットで見る


不動産会社は、借入額だけを見ると実態を誤解しやすい業種の一つです。

販売用不動産を5億円仕入れ、その大部分を借入で調達すれば、有利子負債は増えます。しかし同時に、将来売却してキャッシュを回収する商品も増えています。

したがって、借入が増えたという事実だけではなく、何を取得したのか、その資産はいくらで売れるのか、どの程度の期間で売れるのかを見る必要があります。

  • 販売用不動産:取得価額、簿価、想定売価、想定粗利益、保有期間、借入残高、返済期限、売却予定時期

  • 収益不動産:賃料収入、NOI、返済額、LTV、修繕予定

不動産会社では特に、借入金と、その借入によって取得した資産の質をセットで見ることが重要です。

11.経営者が毎月見るなら、この5つでよい


財務指標はたくさんあります。しかし、指標を増やしすぎると結局見なくなります。中小企業の経営者であれば、まず次の5つを定期的に確認するだけでもかなり違います。

指標

見るポイント

① 借入金月商倍率

売上規模に対して借入が増えすぎていないか

② 債務償還年数

現在の収益力なら何年程度で返済できるか

③ D/Eレシオ

自己資本に対して有利子負債をどの程度使っているか

④ 手元流動性

入金が止まっても何か月耐えられるか

⑤ 返済予定・追加調達余力

今後の大口返済と追加調達できる余地


重要なのは、他社と一度比較して終わることではありません。自社の数字が半年、1年、3年でどう動いているかを見ることです。

借入金月商倍率が上がっても、その間に設備投資を行い、利益・キャッシュフローが伸び、債務償還年数が改善するのであれば計画的な成長投資だった可能性があります。

反対に、借入だけが増え、現預金が減り、債務償還年数も長くなっているなら注意したい状態です。

数字は単体ではなく、動きと理由を見ることが大切です。

12.まとめ|強い会社は「借金が少ない会社」とは限らない


借入金は少なければ少ないほど良い、という単純なものではありません。借入を使うことで、自己資金だけではできない成長投資が可能になります。

一方で、高いレバレッジや乏しい手元流動性は会社のデフォルトリスクを高める要因になります。

だから経営者自身が、いくら借りているのか、今の収益力なら何年で返せるのか、手元に何か月分の現金があるのか、返済期間は短すぎないか、次に資金が必要になったときにあといくら調達できるのかを把握しておく必要があります。

必要なときに必要な資金を調達でき、十分な手元流動性を持ち、無理のない期間で返済できる会社が財務的に強い会社です。

Cash is King。ただし、Cashを守るためだからといって、過大なDebtを抱えてよいわけではありません。

借入は「残高」だけではなく、「返済能力・現金・期間・資金使途・調達余力」まで含めて管理する。

自社の借入水準・資金調達余力を整理したい経営者の方へ


アポロ税理士法人では、決算書や試算表をもとに、現在の借入残高だけではなく、返済能力、手元資金、返済期間、金融機関別の調達状況まで整理し、今後の資金調達を一緒に検討します。

  • 今の借入は多すぎないか

  • 次の投資であといくら借りられそうか

  • 返済期間をどう設計すべきか


志田宏樹

監修者

志田 宏樹

公認会計士・税理士・宅地建物取引士


監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。


専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継

[詳しいプロフィールを見る →]


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