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銀行融資ではどんな資料を提出する?銀行員が会社を理解しやすい資料の作り方を解説

10月13日
読了時間: 12分

更新日:10月28日

「銀行から融資を受けるとき、どんな資料を準備すればよいのでしょうか?」

中小企業の経営者からよく受ける質問です。

決算書、試算表、資金繰り表、借入金一覧、事業計画書。銀行から求められる資料はいくつもあります。

しかし、これまで多くの金融機関との資金調達や折衝を経験してきた中で感じるのは、資料は多ければよいわけではないということです。

銀行担当者が会社を深く理解し、経営者本人がその場にいなくても、銀行内部で会社の事業・数字・将来性を説明できる状態をつくる。

実際、金融機関の方から「資料が整理されていて会社を理解しやすい」「稟議を書きやすい」「審査しやすい」という趣旨の評価をいただいたこともあります。

この記事では、中小企業・オーナー企業の経営者を主な対象として、銀行融資ではどのような資料を準備すればよいのか、さらに銀行員が会社を理解しやすい資料にするには何が重要なのかを実務経験を踏まえて解説します。

なお、実際に求められる書類や審査・決裁の流れは、金融機関、融資商品、金額、取引状況などによって異なります。

目次

1.結論|担当者が「銀行内部で説明できる資料」をつくる

銀行から「決算書を提出してください」「最新の試算表をください」と言われたので、その資料を送る。もちろん必要な対応です。

しかし、会社側からもう一歩踏み込んで考えるなら、

この資料を受け取った銀行担当者は、社内で当社をどのように説明するのか。

という視点を持つことが重要です。

銀行内部では、融資を検討するうえで、

  • どのような事業をしているのか

  • どうやって利益を生み出しているのか

  • なぜ売上や利益が増減しているのか

  • なぜ借入金が増えているのか

  • 今回なぜ資金が必要なのか

  • 何を原資に返済するのか

  • 会社にはどのようなリスクがあるのか

  • 経営者はそのリスクをどう認識しているのか

といったことを整理する必要があります。

その材料を会社側から分かりやすく提供できれば、銀行担当者は会社を理解しやすくなります。

良い融資資料とは、銀行担当者が「この会社はこういう会社です」と第三者に説明できる資料です。

2.融資は面談だけで決まるわけではない

銀行との面談で経営者が上手に説明できたとしても、その場ですべてが決まるわけではありません。

一般的には、その後に次のような過程があります。

融資の流れ

具体的な決裁経路は金融機関や案件によって異なります。重要なのは、経営者本人が銀行内部の審査の場にいるわけではないということです。

これまでの金融機関対応でも、資料について「会社の状況を理解しやすい」「社内で説明しやすい」と評価いただいた経験があります。

また、ある金融機関との新規取引では、担当者と時間をかけて事業モデルや収益構造、今後の成長、資金需要について議論し、その内容を銀行内部へ説明してもらった結果、取引拡大につながった経験があります。

ここで重要なのは金融機関名や融資金額ではありません。担当者が会社を深く理解したことです。

銀行が決算書や会社をどのような視点で見るのかは、関連記事「銀行は決算書のどこを見る?融資審査は数字だけでは決まらない」で詳しく解説しています。

3.銀行融資で準備する資料|「求められる書類」と「説明資料」を分ける

銀行へ提出する資料は、大きく2種類に分けて考えると分かりやすくなります。

※スマートフォンでは、表を左右にスクロールして全体をご覧ください。借入金一覧や資金繰り表なども、金融機関から提出を求められる場合があります。

区分

主な資料

目的

金融機関から求められる基本書類

決算書・申告書、登記事項証明書、納税証明書、試算表、見積書など

手続・審査に必要な情報を提出する

会社側から自主的に作る説明資料

3期・5期比較表、今期着地見込み、借入金一覧、資金繰り表、事業概要、KPI一覧など

会社の事業・数字・将来性を理解してもらう


例えば日本政策金融公庫の中小企業事業では、会社案内・製品カタログ等、法人の登記事項証明書、最新3期分の決算書・税務申告書、納税証明書、最近の試算表、設備投資であれば見積書等、担保に関する資料などを主な提出資料として案内しています。

民間金融機関では必要書類が異なることがありますので、実際には各金融機関の指示に従います。

「何を要求されたか」だけではなく、「何があれば会社を理解してもらえるか」を考える。

今回の記事で特に伝えたいのはこちらです。

4.決算は3期程度を基本に、可能なら5期で「趨勢」を見る

決算書は融資審査の重要な資料です。ただし、直近1期だけでは会社がどの方向へ進んでいるのか分からないことがあります。

金融機関から実際に求められる期数は案件によって異なりますが、会社の趨勢を説明するという目的では、3期程度を基本とし、可能であれば5期程度まで比較することをおすすめします。

以下は、不動産売買・管理会社を想定した説明用の架空事例です。アポロの実績ではありません。売上だけでなく、利益・現預金・借入金・純資産の推移を併せて確認します。画像はクリック(タップ)で拡大できます。

架空事例:5年間の数字から成長の質を読む。2021年から2025年に売上高6億円から10億円、営業利益2400万円から5000万円へ。2023年は増収でも利益・現預金が減少し、翌期以降に改善。

5期まで見ることで、売上や利益率の推移、借入増加に対する利益の伸び、現預金・純資産の蓄積など、会社の長期的な傾向が見えやすくなります。

単年度の決算が「点」なら、5期比較は「線」を見るための資料です。

なお、5期比較はすべての金融機関で求められる必須資料ではありません。会社の趨勢を説明するための補足資料として位置づけます。

5.最も重要なのは「数字と経営行動をリンクさせる」こと

5期分の数字を横に並べるだけでは不十分です。重要なのは、その数字が会社のどのような行動によって生まれたのかまで説明することです。

例えば、営業人員を増やした結果、商談件数が増え、受注が増え、売上が増えたという関係です。

不動産会社であれば、仕入を積極化した結果、販売用不動産と借入金が増え、翌期以降の販売原資が増えたということもあります。

そこで5期比較表に「その年度に行った主な経営施策」の欄を追加する方法があります。

前章と同じ架空事例です。各期の数字に、経営判断・活動実績・財務への影響を結び付けています。2023年の増収減益と資金負担、その後の改善まで説明する構成です。画像はクリック(タップ)で拡大できます。

架空事例:経営行動と数字をつなげて説明する。営業採用、仕入拡大と在庫長期化、仕入基準・価格の見直し、管理戸数300戸から420戸への拡大を5年間の業績と関連づけた図。

これによって「借入が増えました」ではなく、「この成長投資を行ったため借入が増え、その結果として翌期以降の売上・利益がこのように変化しました」と説明できます。

反対に、借入だけが増えて売上・利益・キャッシュフローが改善していなければ、それも重要な経営課題です。

何を考え、何を実行し、その結果として数字がどう動いたのか。

この「数字と行動のリンク」が、会社を理解してもらううえで非常に重要だと考えています。

6.最新試算表+今期着地見込みで「現在」を説明する

決算書は過去を示します。例えば3月決算の会社が12月に融資を相談すれば、決算書は9か月前の会社の状態です。

その間に、新規顧客が増えた、売上が急増した、利益率が改善した、大型案件を獲得した、逆に業績が悪化した可能性があります。

そのため、決算から一定期間が経過していれば最新試算表が重要です。

さらに会社側では、最新試算表と今期着地見込みまで作ると、現在地を説明しやすくなります。

2026年9月末時点を想定した架空の着地見込みです。売上実績8億円に、契約済み等3億6000万円と未契約見込み1億4000万円を積み上げ、通期13億円としています。未契約分が翌期にずれる場合の下振れと対応策も示します。画像はクリック(タップ)で拡大できます。

架空事例:着地見込みに根拠と備えを添える。2026年9月末の売上実績8億円に残り5億円を加え通期13億円、営業利益8000万円を予測。未契約分1億4000万円が翌期にずれた場合は売上11億6000万円・営業利益5200万円。

大切なのは、なぜ13億円で着地すると考えているのかまで説明できることです。受注残、契約状況、販売予定、顧客数、単価など、事業に応じた根拠を持たせます。

7.借入金一覧・資金繰り表・資金使途で「なぜ借りるか」を説明する

融資相談では「1億円借りたい」だけでは十分ではありません。

なぜ1億円なのか。いつ必要なのか。何に使うのか。どのように返済するのか。

これらを具体的に説明する必要があります。

借入金一覧では、金融機関、当初借入額、現在残高、借入日、返済期限、金利、月々の返済額、資金使途、担保・保証の状況などを整理しておくと分かりやすくなります。

資金繰り表では、売上入金、仕入支払、人件費、税金、設備投資、借入返済、新規借入、月末現預金などを月別に整理し、いつ資金が不足し、なぜ不足し、いくら必要になるのかを見えるようにします。

設備資金であれば見積書、物件取得なら売買契約書等、仕入資金ならその内容が分かる資料など、資金使途の根拠も重要です。

「いくら欲しいか」ではなく、「なぜその金額が必要なのか」を説明する。

8.事業概要をA4・A3一枚にまとめる

金融機関から指定される資料とは別に、会社の全体像を短時間で理解してもらうため、A4またはA3一枚程度の事業概要資料を作る方法もあります。

何十ページもの会社案内を作る必要はありません。

※スマートフォンでは、表を左右にスクロールして「過去・現在・未来」の全体をご覧ください。

過去

現在

未来

3期・5期の業績推移/主な経営施策

事業内容/顧客/収益構造/強み/KPI/足元業績

3年後・5年後の目標/今後の施策/今回の資金需要


「これまで何をしてきた会社なのか」「今どのような状態なのか」「これからどこへ向かうのか」を一枚で伝える。

銀行員が上席へ会社の説明をするときにも、この全体像があると理解しやすくなります。

ただし、A4・A3一枚という形式自体が重要なのではありません。短時間で事業の全体像を理解できることが目的です。

9.業種によって追加資料は変わる|不動産会社の場合

必要な説明資料は業種によって変わります。

例えば不動産売買会社なら、決算書だけでは販売用不動産の状態が分かりにくいため、

  • 物件名・所在地

  • 取得日・取得価額・現在簿価

  • 借入金融機関・借入残高・金利・返済期限

  • 想定売却時期・想定売価・想定粗利益

  • 保有期間

などを一覧化すると理解しやすくなります。

これによって、どの物件がいつ売却予定なのか、長期在庫はどれか、売却するとどの程度の利益とキャッシュが生まれるのかまで把握できます。

賃貸保有物件なら、賃料、稼働率、NOI等の収益状況、借入残高、返済額、修繕予定など、見るべき情報が変わります。

業種別資料を作る目的は、情報量を増やすことではなく、そのビジネスを理解するために重要な情報を整理することです。

10.資料は量より「正確性・整合性・体裁」が重要

銀行向け資料は、多ければ多いほど良いわけではありません。

PDFが大量に届く、Excelが何種類もある、補足説明がメール本文に散らばる、修正版が何度も送られる、最新版がどれか分からない、資料によって数字が違う。こうなると担当者の確認作業が増えます。

資料を提出する前に、少なくとも次の点は確認したいところです。

  • 基準日を明記する

  • ファイル名を統一する

  • 最新版が分かるようにする

  • 金額単位を統一する

  • 決算書・試算表・計画書の数字を一致させる

  • 一覧表と明細の合計を一致させる

  • 主要な増減には説明を付ける

  • 修正版を出す場合は旧版と混在させない

例えば、

01_会社・事業概要

02_5期比較

03_最新試算表

04_今期着地見込み

05_資金繰り表

06_借入金一覧

07_資金使途

08_業種別補足資料


という形で整理しておくだけでも分かりやすくなります。

良い資料とは、少なく、正確で、一貫性があり、会社の全体像を理解できる資料です。

11.財務には「営業的な姿勢」も必要|営業と財務は成長の両輪

財務には当然、資金繰り管理、財務リスク管理、借入金管理、資本構成の検討といった「守り」の役割があります。

しかし、それだけではありません。私は財務には営業的な姿勢も必要だと考えています。

  • 新しい金融機関を開拓する

  • 自社の事業を金融機関へ説明する

  • 将来の成長計画を説明する

  • 必要な資金を提案する

  • 融資枠を確保する

  • 資金調達先を分散する

  • 長期的な銀行関係を構築する

銀行から資料を求められるのを待つだけではなく、自社を理解してもらうためにこちらから情報を発信する。この姿勢には営業と共通する部分があります。

営業が事業機会をつくり、財務がその事業機会を実行できる資金調達力をつくる。

この2つは会社成長の両輪だと考えています。財務は会社を守るだけではなく、会社が成長するための選択肢を増やす仕事でもあります。

12.銀行へ資料を出す前の10項目|担当者が会社を説明できるか

最後に、銀行へ資料を提出する前に、次の10項目を確認してみてください。

  1. 金融機関から求められた基本書類はすべて揃っているか

  2. 過去3期程度の業績推移を説明できるか

  3. 可能であれば5期程度の趨勢まで把握しているか

  4. 数字の増減と、その期間に行った経営施策を説明できるか

  5. 最新試算表と今期着地見込みを説明できるか

  6. 今回の資金使途と必要金額の根拠を説明できるか

  7. 何を原資として返済するのか説明できるか

  8. 現在の借入状況を一覧で把握しているか

  9. 各資料の数字・基準日・最新版が統一されているか

  10. この資料だけを見て、銀行担当者が自社について上席へ説明できるか

特に重要なのは最後です。経営者本人が銀行内部の審査の場へ行って説明できるわけではありません。

銀行担当者が自社を理解し、社内で説明できる状態をつくる。

もちろん、資料が分かりやすければ融資が必ず通るわけではありません。最終的には収益力、財務状態、事業性、資金使途、返済可能性などが重要です。

しかし、良い会社であることと、その会社の内容を金融機関へ正しく伝えられることは別の能力です。両方を高める必要があります。

銀行へ提出する資料を整えることは、単なる融資対策ではありません。過去の数字を振り返り、現在地を把握し、将来の資金需要を考える。その過程自体が、経営管理・財務管理の質を高めることにもつながります。

アポロ税理士法人の考え方

アポロ税理士法人では、銀行から求められた資料をその都度作るだけではなく、経営者自身が自社の数字と事業を理解し、それを金融機関へ説明できる状態をつくることが重要だと考えています。

決算書、月次試算表、事業計画、資金繰り、借入金管理を別々に管理するのではなく、経営目標 → 経営行動 → 数字 → 資金需要 → 資金調達としてつなげて考える。

それが、金融機関との長期的な関係構築や、将来の資金調達力につながります。


志田宏樹

監修者

志田 宏樹

公認会計士・税理士・宅地建物取引士


監査法人で上場企業等の監査業務に従事した後、投資用不動産会社で財務責任者として勤務。金融機関対応、資金調達、会計実務、税務調査対応等を経験。現在はアポロ税理士法人の代表社員として、不動産オーナーや企業経営者に対し、税務・財務・融資・不動産に関する支援を行っている。


専門分野:不動産税務/不動産法人化/融資・資金調達/財務/相続・資産承継

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