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不動産賃貸業と消費税 

  • ttsukigata
  • 4月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月25日

不動産賃貸業を営む中で、しばしば軽視されがちなのが「消費税の影響」です。特に居住用物件の賃貸を主に行っていると、「消費税は関係ない」と思われがちですが、それは半分正しく、半分は危険な勘違いです。



居住用賃貸=非課税、しかし…



確かに、居住用の賃貸収入は消費税の非課税取引に該当します。したがって、通常の家賃収入に消費税が課されることはありません。


以下は不動産所得についての主な取引の消費税の課税・非課税の一覧です。


主な不動産所得の消費税区分
主な不動産所得の消費税区分

 しかし、それで安心してはいけません。建物を売却したタイミングで「課税事業者」となる可能性があるのです。

 建物の売却は課税対象取引にあたるため、建物の売却金額が1,000万円を超えると売却した期間の翌々期間が消費税の課税事業者となります。令和2年の税制改正により居住用賃貸物件の購入時に支払った消費税は仕入税額控除に原則含めることができなくなりました。このため課税事業者期間中に別の物件の売却などをすると多額の消費税納付義務が発生することもあり、資金繰りに影響を与えるリスクがあります。


課税事業者になるイメージ
課税事業者になるイメージ

 この図では2023年に売却したことで2025年は課税事業者となっています。このため2025年は消費税の申告が必要になります。居住用賃料しか収入がなければ消費税の納付はありませんが、駐車場賃貸収入や賃貸不動産の売電収入、原状回復工事を住人代わって実施するためにお金を受け取ったりなどあると納付する消費税が発生することがあります。

 しかし、多くの場合は2025年のみが課税事業者でよく2026年からはまた免税事業者にもどることになろうかと思います。



建物購入でさらに2年延長? ― 高額資産の購入



 課税事業者となった状態で建物などの高額資産を購入すると、原則としてその後2年間は課税事業者であり続ける義務が生じます(購入した年を含めて3年間)。消費税法12の4により定められているものです。これにより、予期せぬ消費税負担が続くこともあります

 つまり、課税事業者になるとその期間中に売却をすれば多額の消費税を納付する可能性が高くなり、新たな物件を購入すると課税事業者の期間が延長されるということになります。


消費税法12の4による課税事業者になるイメージ
消費税法12の4による課税事業者になるイメージ


簡易課税制度の活用


 簡易課税というのは消費税の対象となる売上から一定の率により経費で支払った消費税を概算し受け取った消費税と支払った消費税の差額として納付する消費税を計算する方法です。ここで使用する率は業種ごとに定められており不動産賃貸業の場合は40%とされています。


 1つの方法としてこの簡易課税の活用が考えられます。簡易課税を活用することとして次のようなメリットが考えられます。


① 高額資産購入による課税事業者の期間延長の対象外となる

 

 消費税法14条の2の一部を簡単にいうと、事業者が簡易課税を受けない期間中に1,000万円以上の高額資産を購入すると課税事業者の期間が延びる、とされています。このため簡易課税を選択しておけば期間延長を避けることができます。


② 消費税の納付額が低くなる可能性

 

 例えば課税期間中に建物を税込2,200万円で売却したとすると、原則課税では200万円の納付となり簡易課税では120万円の納付となります。これは令和2年の改正により原則課税では支払った側の消費税が認められないため、売却時に受け取った消費税をノーガードで納付する必要があるためです。簡易課税は一律で支払った側の消費税を認めてくれるので納税額を抑えることができます。

 

 ただし、簡易課税は一度選択するとその後2年間は取りやめができない、届出を決められた期日までに提出しないといけない、他の事業もあると必ずしも簡易課税が有利とは限らないなど注意点があります。



長期的な計画と「予想外」を減らす仕組みを


 不動産は一時的な収益を狙うものではなく、中長期的な投資です。税務上の有利・不利は、「今」だけでなく「数年後」に効いてくることが多いため、スケジュール表や資金計画表を活用し、税理士などの専門家の助言を得ることが非常に重要です。特に減価償却の終了時期に課税事業者になっていると消費税だけではなく投資計画に大きな影響がでることもあります。

 投資そのものに集中したい方ほど、税の「落とし穴」を避ける仕組みづくりに目を向けるべき時代になっています。


不動産投資についてのご相談はお気軽にお問い合わせください。



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