概算経費の特例について
- ttsukigata
- 1 日前
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概算経費の特例とは
概算経費の特例とは正式には「租税特別措置法 第26条 社会保険診療報酬の所得計算の特例」というもので医師や歯科医師が社会保険診療報酬に関して、実際に支出した経費(実額経費)ではなく、一定の割合で算定された「概算経費」を経費として認めることができるものです。この特例の背景には、小規模な診療所の事務処理の軽減や経営の安定化を目的とした政策的な配慮があります。実際の経費で計算するよりも多く経費を含めることができることも多いため上手に利用したい特例です。
経費が多くなるということは税金計算のもとになる所得が少なくなるので税額が安くなるということです。
利用するための条件
以下の条件をすべて満たす必要があります。
① 医業または歯科医業を営む個人事業主や医療法人であること ※1
② 社会保険診療報酬が5,000万円以下であること
③ 総収入金額が7,000万円以下であること ※2
※1 柔道整復師、助産師、あんま・はり・きゅう師、介護福祉士などは対象外
※2 総収入金額には、ワクチン接種収入や健康診断収入などの自費収入も含まれます。
ただし、補助金、配当金、物品販売収入など一部は除外されます。
このため決算書上の収入が7,000万円超でも対象収入が7,000万円以下であれば適用することが可能です。
所得の計算

自由診療にかかる概算経費(共通経費の按分)
上の表の②についてです。自由診療と社会保険診療に共通する経費(=自由診療、社会保険診療に明確に区分できない経費)は自由診療割合という比率により自由診療の概算経費として実際経費に加えることができます。
以下の手順で計算します。

共通経費・・・経費総額から自由診療ための経費と社会保険診療のための経費を差し引いたもの
では自由診療割合はどうやって計算するのかというと

収入による割合の調整率は診療科ごとに定められています。

社会保険診療の概算経費について
いよいよ社会保険診療の概算経費の計算です。社会保険診療報酬をもとに速算表を使って概算経費の計算をします。

概算経費の注意点とまとめ
概算経費の方が一般的には経費が大きくなるので所得税、住民税など節税のメリットがある場合が多いです。しかし利用するには注意点もあるのでしっかり確認しましょう。
①概算経費と実際経費は比較が必要
概算経費を利用するかは申告の際に選択することができます。概算経費の方が有利な場合が多いとはいえ実際経費の方が有利な場合もありますので比較できるようにしましょう。そのためにはどうせ概算経費だからということではなく実際経費についても管理をしておくことが必要になります。
②更正の請求は原則としてできない
更正の請求というのは申告内容に誤りがあり税金を納めすぎた際に税額を減らす手続です。概算経費を使ったけど後から実際経費の方が有利だとわかったから、あるいはその逆は認められません。このため①の比較がとても重要になります。
③青色申告特別控除の金額
青色申告特別控除は最大で65万円の所得控除をすることができる制度です。社会保険診療について概算経費を用いている場合には原則として青色申告特別控除は適用されません。これは青色申告特別控除の要件を概算経費では満たさないためと考えられます。ただし、自由診療と社会保険診療が混在している場合には自由診療部分の所得を上限に控除を認めうるというのが実務上の対応になります。もちろん前提として青色申告特別控除の要件を満たしている場合になります。
注意点はあるものの社会インフラともいえる医師等への特例です。正しく利用すればメリットがとても大きいものになります。
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